SPring-8利用推進協議会
「先端磁性材料研究会」設立趣意書
平成20年10月22日再改定
SPring-8利用推進協議会
代表:角田 匡清(東北大学 准教授)

1.目的
 磁性材料開発は、近代日本を支える電気、自動車等メーカーの材料戦略において常に重要な地位を占めてきた。記録媒体とヘッド材料などの磁気記録関連材料、さらに、モーター等の動力用磁性材料やトランス用磁性材料など、種々の磁性材料が社会を支え、また、私たちの生活を豊かにしている。近年、磁気記録関連の薄膜磁性材料ではナノテクノロジーに基づく高密度記録化が進み、その製造開発過程ではナノスケールで制御された磁気構造の実現が特性導出上不可欠となっている。また、環境への配慮からハイブリッド自動車の需要が急速に増すなかで、高い効率の自動車用電気モーターの開発が急務となっており、自動車業界においても高性能・高耐久永久磁石開発が注目されている。その一方で、グローバル化という今日的な問題から特定国に偏在したレアアース資源の使用量を減らすことも磁性材料開発において十分に考慮すべき課題である。また更に、超磁歪材料、磁性半導体、スピンクロスオーバー錯体物質、マルチフェロイック材料など最近の研究で新しく見出された機能性磁性体も数多くある。これらはまだ実用には至っていないものの、その豊富な可能性に強い期待が寄せられている。
このような状況下にあって、原子レベルで磁気特性を明らかにするために放射光を利用した解析はますます重要になっている。XAFSによる構造解析では磁性元素の周りの局所構造を明らかにすることで磁気異方性を誘導する原子配列について議論が可能になり、また、共鳴X線磁気散乱によれば結晶中の特定原子サイトの磁気構造について知ることができる。さらに、XMCD(X-ray Magnetic Circular Dichroism)によれば、元素選択磁化測定によって磁性体の性質を元素分解して調べることが可能であり、このXMCDにPEEM (Photoemission Electron Microscope)を組み合わせることによって磁区構造を元素毎に色分けして得ることまで出来るようになっている。以上の放射光実験は、非常に強力な磁気材料解析ツールとして最近の磁性研究に有用かつ不可欠な役割を担っており、工業先進国である我が国が世界最高性能の放射光施設SPring-8を利用しつつ世界を先導して最先端の磁性材料研究を行うことで、現在および未来の社会に対して然るべき貢献が約束されるものである。

2. 活動計画
 年2回程度の研究会を開催し、磁性材料開発を取り巻く最新の情報を交換するとともに、放射光実験を中心とした実験手法・解析手法に関する周知、習得を目指す。

第1回 次世代HDDヘッド、および、MRAM材料の進展と評価技術(SPring-8利用者懇談会との合同開催)
第2回 永久磁石材料開発の最先端と分析技術
第3回 パターンドメディア磁気媒体の先端開発とナノ磁気イメージングからのアプローチ
第4回 磁性半導体の発展とその強磁性発現メカニズム解明の現状