平成29年度第2回残留ひずみ・応力解析研究会
微細構造解析プラットフォーム第4回放射光利用研究セミナー


プログラム

10:00-10:05:開会挨拶
研究会主査 秋庭義明(横浜国大)
<施設の概況>
10:05-10:30 J-PARC MLFの現状と産業利用
富田俊郎(茨城県)

J-PARC MLFでは供用開始後9年を経て産業界からの採択課題件数の比率が依然として約 30%を維持している。MLFにおける全体の課題採択状況に加えて、産業利用の採択状況と産業利用による主要な成果などを紹介する。
<チュートリアル>
10:30-11:15:Direct fitting 法を応用した集合組織材の回折ヤング率の同定方法
高木節雄(九州大学)

X線回折を利用したWilliamson-Hall(WH)法では、回折ピークの半価幅から材料内部のミクロひずみを見積もることが可能とされているが、実際には、結晶面毎に弾性異方性があるためにそれを求めることは困難である。近年,著者は、WH プロットの弾性異方性を回折ヤング率を用いた補正係数で正確に補正できることを見出し、さらに、この手法を発展させたDirect fitting(DF)法を開発した。DF法では、WH プロットの補正を最適化することで回折ヤング率の値を決定できる。しかも、得られた回折ヤング率の値と加工集合組織の間には良好な相関性があることを見出した。本講演ではその結果を報告する。
11:15-12:00:集合組織材と配向性薄膜のX 線応力測定
英 崇夫(徳島大学)

X線応力測定の基本になるsin2Ψ 法は、平面応力や巨視的等方性、応力の一様性、微細結晶の集合体の仮定の下に成立し、任意のΨ方向の格子ひずみがsin2Ψに対して線形に分布することを利用して応力解析がなされる。しかし、圧延集合組織材や結晶配向を有する蒸着薄膜のX線応力測定の場合、それぞれsin2Ψ線図が非線形になり、また、任意方向に回折線が存在しないので、sin2Ψの適用ができない。これらの場合の挙動について、その原因と応力測定の考え方をいくつかの応用事例と共に述べる。
12:00-13:00:昼食
<集合組織>
13:00-13:45:結晶性材料における集合組織解析
井上博史(大阪府立大学)

金属材料の集合組織は、加工・熱処理時に生じる塑性変形や再結晶、相変態にともなって形成される。集合組織の形成は、材料に異方性を与えるため、集合組織を厳密に解析することは材料の工業的使用において非常に重要である。本講演では金属材料の集合組織に加えて、結晶性プラスチックの集合組織解析結果についても概説するとともに、アルミニウム合金圧延板における蓄積エネルギーの結晶方位依存性、および、Schulzの反射法による極点図測定と側傾法による残留応力測定の類似性について説明する。
13:45-14:15:集合組織と相分率の迅速測定技術の開発
小貫祐介(茨城大学)

金属材料分野における中性子回折の応用は、歴史的に応力測定分野への取組みが盛んで、製品の信頼性評価や、残留応力下での各種現象の挙動追跡が主であった。その一方で、金属材料の機能制御において最も重要な因子である微細組織の定量的な評価についてはこれまで目立った取組みがなく、変形や熱処理による微細組織設計への寄与は限定的であった、講演者らはこの課題に対し、集合組織の定量評価、ならびに、これを考慮した相分率の定量決定手法を開発した。本講演では、これらの開発経緯とその応用例、特に、熱処理中の相分率変化を追跡する実験について紹介する。
<中性子・放射光による集合組織・残留応力測>
14:15-14:45:集合組織を有するAl合金製嵌合継手の中性子回折による残留応力測定
小林眞琴(CROSS)

集合組織を有するAl合金の冷し嵌め材の残留応力分布を中性子回折法により測定した。圧延加工されたAl合金は、集合組織が強いために同じ回折面で3軸方向のひずみを測定することができなかった。そこで、3軸方向で別々の回折面の格子ひずみを測定し、そのひずみを弾性定数の回折面依存性に基づき、1つの回折面に補正した結果、理想的な残留応力分布を得ることができた。
14:45-15:15:一次加工により集合組織が発達した金属材料の残留応力測定
西野創一郎(茨城大学)

金属材料は同様の化学組成であっても一次加工による素形材(バルク材、棒材、板材など)によって集合組織の形成状態が異なる。本報告では、一次加工によって集合組織が発達した炭素鋼と棒材について、引抜きおよび矯正加工による残留応力の変化を中性子およびX線回折によって測定した結果を紹介する。
15:15-15:30:休憩
15:30-16:00:高エネルギーX線回折を用いたTi–6Al–4V 合金の引張変形中の転位組織解析
山中謙太(東北大学)

航空機等に幅広く使用されているTi–6Al–4V 合金はHCP構造のα相とBCC 構造のβ相からなるα+β型チタン合金である。その塑性変形挙動を理解するためには、複相組織において各構成相の変形挙動を正確に把握する必要がある。本研究では、SPring-8 BL22XU にて引張変形中のその場X線回折測定を行い、ラインプロファイル解析により引張変形におけるα相およびβ相の転位組織変化を評価した。供試材として熱間鍛造および金属3Dプリンターを用いて作製したTi–6Al–4V 合金を用いた。高エネルギーX線を用いることで微細かつ体積分率の低いβ相についても解析を行うことに成功し、β相はα相に比べて初期転位密度が高く、引張変形に伴う転位増殖挙動も構成相間で大きく異なることを見出した。
<三号炉の再稼動を見据え>
16:00-16:30:中性子応力測定装置RESA–1の現状と今後の展開
鈴木裕士(JAEA)

中性子応力測定装置RESA–1は、日本原子力研究開発機構の研究炉JRR-3に設置された角度分散型の応力測定専用中性子回折装置である。JRR–3は2011年の東日本大震災より約7年間の停止を余儀なくされているが、来たる再稼働に向けて、RESA–1の維持管理と高度化を継続的に進めている。本講演では、RESA–1の装置概要と現状について紹介するとともに、J–PARC MLFに設置された飛行時間型の工学材料回折装置TAKUMIとの連携を含めた今後の展開について述べる。
16:30-17:00:総合討論
秋田貢一(JAEA)
17:00-17:05:お知らせと閉会の挨拶
峯村哲郎(茨城県)
17:20-19:20:交流会 :ワインホール130 (参加費:2,000円)

*参加申込み、問い合わせ*
中性子産業利用推進協議会 事務局 大内 薫
E-mail:info(at)j-neutron.com 宛に
1.名前 2.所属 3.連絡先(電話番号 / E-mail address)
4.交流会への参加の有無 (領収書を発行します) をご記入の上、メールにてお申込みください。