大型放射光施設 SPring-8

コンテンツへジャンプする
» ENGLISH
パーソナルツール
 

東京大学大学院 工学系研究科応用化学専攻 藤田 誠教授が恩賜賞・日本学士院賞を受賞(トピック)

公開日
2019年03月14日
  • 受賞

2019年3月12日、日本学士院は、SPring-8の放射光を用いた「結晶化を必要としないX線構造解析手法」への功績に対し、東京大学大学院工学系研究科教授、
分子科学研究所特別研究部門卓越教授の藤田誠氏に対し恩賜賞・日本学士院賞を授与すると発表しました。
恩賜賞は日本学士院による賞の中でも最も権威あるもので、日本学士院賞の中から特に優れた功績に授賞されるものです。

受賞者氏名(現職):
 藤田 誠(東京大学大学院工学系研究科教授、分子科学研究所特別研究部門卓越教授)

 Professor_fujita

研究題目:
 結晶スポンジ法—X線構造解析の革新と分子科学技術への展開—

受賞理由:
 藤田誠氏は、結晶スポンジ法(Crystalline Sponge method: 以下、CS法)と呼ぶ「結晶化を必要としないX線構造解析手法」を創出しました。CS法は、結晶スポンジ、すなわち細孔性の金属錯体単結晶に、対象試料を溶液状態から吸蔵させ、錯体の細孔を鋳型として吸蔵試料化合物の周期配列を作り出し、そのX線結晶構造を観察する技術です。X線構造解析において、これまで多大な時間と労力を必要としてきた「試料の結晶化」の工程を省くことができる画期的な技術です。この手法は汎用性が高く、分子が関与する様々な研究の現場で活用されています。とりわけ、測定に必要な試料の量をマイクログラムの大きさに下げることができるため、微少量成分の構造決定を行う天然物化学や、微量活性成分や不純物の構造決定を必要とする製薬企業の創薬研究において大きな威力を発揮しています。この技術の誕生の背景には、藤田氏が過去四半世紀かけて積み上げた「配位結合駆動の自己組織化物質創製」の基礎的な研究基盤があります。


【用語解説】
X線構造解析
物質の結晶にX線(極めて波長に短い光の一種)を通過させると、X線の散乱(回折と呼ばれる)が起こり、散乱像(回折像)が得られる。この散乱像をコンピュータで解析し、結晶を構成していた分子の3次元構造を精密に求める構造解析技術。分子構造を決定する最も有力な方法。

結晶スポンジ
金属イオンと有機分子からつくられる分子サイズの細孔を有する物質。有機化合物を溶液状態からスポンジのように吸い上げる性質を有する。

単結晶
原子や分子の規則正しく周期的な配列で構成された固体を結晶と呼ぶが、1個の結晶内のどの部分においても原子配列の向きがまったく同一であるものを単結晶という。

吸蔵
固体が気体や液体を吸収して内部に保有する現象。

X線結晶構造
X線構造解析により得られる分子や物質の3次元構造。

配位結合
ここでは狭義で、遷移金属元素と有機元素(窒素原子や酸素原子)の間でつくられる化学結合をさす。

自己組織化
物質が、自発的に構造的な秩序を形成する仕組み。


藤田先生のSPring-8における研究成果はSPring-8 News No.80にて詳しく紹介されています。



ひとつ前
物質中の電気分極を制御することに成功 ー強弾性や負熱膨張も実現ー(プレスリリース)
現在の記事
SACLAの明るさを6倍にすることに成功 -波長のそろったX線を種としたレーザー発振を実現-(プレスリリース)