SPring-8での研究成果例~環境科学~
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環境科学 | 蛍光X線分析 |
精子中に取り込まれたごく微量の“環境ホルモン”を見つける
近年、船底塗料や魚網防汚剤に添加された有機スズ化合物(トリブチルス ズやトリフェニルスズなど)による海洋汚染やその環境ホルモン(内分泌撹 乱化学物質)作用が社会問題となっています。哺乳動物において有機スズ化 合物のばく露により生殖毒性を呈することが示されているものの、詳細な 作用機序は解明されていませんでした。その理由の一つとして、スズが汎 用の分析手法では生体組織内の分布など感度の高い分析が困難な元素であ るため、生殖器における微細なスズの挙動に関する研究が殆どなされてい ないことが挙げられます。組織中に数百ppbから数ppm程度含まれるスズ を感度よく検出するためには、生体多量元素であるカリウムやカルシウム の影響に埋没しない高い励起エネルギーを用いたスズのKα線の蛍光X線 分析が望まれてきました。 今回、SPring-8の分光分析ビームラインBL37XUにおいて、全く新しい 高エネルギー領域でのナノビーム蛍光X線分析に取り組み、非破壊状態で、 トリブチルスズを投与したラットの特定領域における精細管の精子(図1) に含まれる微量のスズの検出に世界で初めて成功しました(図2)。また、 トリブチルスズのラットへの投与後4日という早期にスズが精子に移行す ることが明らかとなりました。 この成果は、有機スズによる生殖毒性解明や予防策開発の糸口となること が期待されます。さらに、本手法を応用した生殖細胞内の微量元素の計測 法は、核分裂生成物の線量評価を可能とするのみならず、有毒重金属(ヒ素 など)や環境ホルモンの継世代影響の研究に貢献するものと期待されます。
(独)放射線医学総合研究所 武田志乃
図1.ラット精巣切片、矢印の黒い輪が精子
図2.上図の精子(矢印)にビームを照射した時の蛍光X線スペクトル
