SPring-8での研究成果例~物質科学~
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物質科学 | 粉末結晶構造解析 |
爆発性ガス“アセチレン”の超高密度濃縮と選択的吸着
特定の気体を吸着、濃縮する材料および技術開発は昨今のエネルギー問題や環境問題を解決するために、重要視されるものであります。最近になり、多孔性金属錯体と呼ばれる新しい多孔性物質が開発され、さまざまな新しい現象が見つかって参りました。今回この多孔性金属錯体により、非常に爆発性のアセチレンを選択的かつ超高密度に濃縮して吸着することができました。アセチレンと二酸化炭素は非常に似かよった形と性質を有しており、通常の吸着剤では吸着現象に顕著な差を見る事ができません。しかしながら、この物質では二酸化炭素に比べ最大で26倍ものアセチレンを吸着できる事がわかりました。また吸着量が最大のところでのアセチレンの密度は驚くべきことに400気圧(約40MPa)以上にも濃縮されており、これはアセチレンが爆発する危険のある2気圧の200倍に相当するものでありました(図1)。この特異的吸着現象を構造的に明らかにするため、アセチレン雰囲気下で冷却し、多孔性金属錯体へアセチレンを吸着させ、同時に粉末X線回折測定を行いました。得られた回折パターンをMEM/Rietveld法で解析し、アセチレンがどのように細孔中へ取り込まれているかを明らかにしました。その結果、アセチレンは細孔表面の酸素原子(活性サイト)によってアセチレン分子が、強く捉えられていることがわかりました(図2)。多孔性金属錯体は細孔中の活性サイトの種類や配置を様々に変化させられることから、従来物質では実現できなかった新しい吸着現象が今後さらに見出される事が予想され、吸着の科学の進展と産業への応用が期待されます。
京都大学 松田亮太郎北川進
図2:アセチレンと二酸化炭素の吸着等温線
図3:MEM法による解析した細孔中でのアセチレンの吸着構造
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物質科学 | X線磁気円二色性 |
金ナノ微粒子における磁気偏極現象の検証
ナノメートルサイズの微粒子は、そのサイズや構成原子数に占める表面 原子数の大きな割合に起因して、通常のバルクとは大きく異なる物性を発 現することが期待されています。その中でも、化学的に合成することで得 られる、有機分子で保護された金属ナノ微粒子は、均一な粒子径をもち、 よく分散しているため(図1)近年、様々な応用分野で興味を集めている 材料です。このような有機分子で保護分散された金ナノ微粒子の磁気的性 質を調べると、直径3nm以下の金ナノ微粒子は、非常に低い温度で、超常 磁性的に振る舞うことが分かりました。これは、バルクでは反磁性の金が、 ナノ微粒子になることで、強磁性の性質を帯びるようになったということ を示している現象です。ところが、SQUID磁束計のような従来の磁気測定 手法では、試料中の不純物や、金ナノ微粒子を保護している有機分子の磁 気的な性質も一緒に測定してしまうため、本当に金ナノ微粒子自身がこの 性質を示しているのか、明確に証明することが困難でした。そこで、我々 は試料中の金原子だけを選択的に磁気測定できるX線磁気円二色性(XMCD) の実験をSPring-8の放射光で行いました。この結果、PAAHC高分子で保 護した金ナノ微粒子に対して図2のように金のL3吸収端とL2吸収端で明瞭 なXMCDピークが観測され、金がナノメートルサイズの微粒子になること で磁気的に偏極することが初めて直接的に明らかになりました。ナノサイ ズ化による磁性変化の知見は、新たな磁気記録材料の設計指針につながる ものと考えられます。
北陸先端科学技術大学院大学 山本良之
図1.PAAHC 保護金ナノ微粒子の電子顕微鏡写真と模式図
図2.PAAHC 保護金ナノ微粒子の金L3,L2吸収端XMCDスペクトル
