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実験用低温容器破損の技術的原因調査結果について(利用者の皆さまへ)

2005年7月15日
財団法人高輝度光科学研究センター

 7月2日に発生しました実験用低温容器破損に関し、理事長の下、技術的原因調査委員会を設置して原因調査を進めてまいりましたが、このたび委員会より中間報告書が提出されましたので、以下にその内容をお知らせします。既に類似の実験用低温容器の使用者に対し、装置の緊急点検を行うよう指示しているところですが、事故の再発防止の観点から、広く利用者の皆さまに周知徹底するために、技術的な視点から原因調査の結果をまとめ、ホームページにて公開することとしたものであります。
当センターとしては、今回の報告の内容を踏まえて、さらに安全確保のための対策を講じるため引き続き検討を進めており、後日改めて利用者の皆さまに報告することとしております。

(報告の内容)
 今回の報告は、技術的な内容であるため、これまで一般向けのお知らせに使用した用語と異なる用語が一部に用いられていることをお断りします。

1) 事故の経過と状況
 台湾ビームラインBL12XUでは、実験ハッチ3内で超高圧超低温下での氷についての電子構造研究実験が行われていた。この実験は、水の試料を、クライオスタット中に置かれたダイヤモンド・アンビル・セル(DAC:超高圧容器)に収納し(図1(a)(b))、超高圧下(2.6 GPa: 約26,000 気圧)、超低温下(4K:-269℃近傍)における“氷”(直径0.4 mm、厚さ0.15 mm)を非弾性X線散乱により研究するものである。
 7月2日午前10時に非弾性X線散乱実験を終了、午後2時にエネルギー較正作業を終了し、クライオスタットの温度を常温に上げる過程で、午後2時25分に事故が発生した。

2)事故の原因
 事故後(7月4日)、破損したクライオスタット(図1(a)(b) )を調査した結果、クライオスタットの下部外筒のベリリウム円筒窓、およびクライオスタット内部のベリリウム製試料容器は共に、上部フランジ部および底面部を除いて、殆どが破損・飛散していた。(図2
 この事実から、最内部のベリリウム製試料容器が何らかの理由で破裂し(第1次的原因)、この破裂によってクライオスタット外筒のベリリウム窓等が2次的に破損したと推論できる。
試料容器は密閉容器で、試料(DACを含む)を4K(-269℃)に冷却するために、熱交換用のヘリウムガスが充填されており、このガス導入・放出のためのバルブが、クライオスタット上部に設置されている。
 また、容器内のガス内圧が何らかの原因で異常に上昇したとき、ガスを逃がすためにリリーフバルブが設置されている。リリーフバルブは、構造的にはいわゆる逆止弁で、通常の状態(内部が低温で真空または低圧)では、閉栓状態で働き真空または低圧を維持するが、内圧が上がった時には弁が開き、内部のガスを逃がすような構造を持っている。(図3
 今回のクライオスタットに設置されていたリリーフバルブは、事故後のテストでは、「閉栓」状態でも、かなりの量の空気がリークしており、弁を取り外し、数回のリリーフバルブの開閉テストをした後でも、逆止弁として真空または低圧に耐える状態ではなかった。この原因としては、吹き出し圧(Cracking Pressure)の設定が適切ではなかったためと思われる。
 このため、事故原因の可能性として、以下の状況が考えられる。
 低温状態では、試料容器側は減圧(低圧)状態であり、リリーフバルブを通じて空気が漏洩する。長時間、低温状態(空気の液化温度以下)が保たれると、容器内に漏れた空気が凝縮し、液体または固体空気となる。実験終了後、容器の温度を上昇させると、空気は急激に気化する。この時、リリーフバルブが正常に作動し、接続しているステンレス鋼細管も導通していれば空気は放出されていたはずである。しかし、空気中にはかなりの水分が含まれており、長時間の内に、これがステンレス鋼細管の内壁に凝縮し氷となり、同細管を閉鎖する可能性がある。試料容器の温度上昇で試料容器内の固体/液体空気は気化するが、細管内部の氷はクライオスタット全体が0 ℃近傍になるまで融解しない。このため、温度上昇で気化した試料容器内の空気および一部残留していたヘリウムが外部に逃げられなくなり、圧力が高まって容器を破損したものと見られる。
 以上のことから、今回の破裂事故は、このリリーフバルブが正常に働かなかったためであると推定した。

 


 

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問い合せ先:(財)高輝度光科学研究センター
広報室
TEL:0791-58-2785
FAX:0791-58-2786

最終変更日