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材料内部の応力分布を結晶レベルで実測する 世界初の技術を確立(プレスリリース)

公開日
2019年12月20日
  • BL33XU(豊田)

2019年12月20日
株式会社豊田中央研究所

 トヨタグループの株式会社豊田中央研究所(本社:愛知県長久手市、代表取締役所長:菊池昇、以下「豊田中研」)は、材料を構成する結晶粒の“内部”に発生する応力の3次元分布を非破壊で実測することに世界で初めて成功しました。
 各種部品の小型・軽量、高機能化に伴い、部品の信頼性確保がますます重要になっています。部品の信頼性を向上させるには、部品材料中の結晶粒内の応力分布をミクロレベルで知る必要があります。これまで、そのような局所的な応力を非破壊で計測する技術はありませんでした。
 豊田中研は、結晶粒内の局所的な応力を計測するため、透過性の高い放射光X線* ビームと、一粒の結晶粒の内部情報を抽出する技術とを組合せた、走査型3次元X線回折顕微鏡法** を開発しました(図1 )。鉄鋼材料を引張り変形させながら、1ミクロンサイズのX線ビームを用いて、結晶粒の内部に発生する応力の3次元分布を非破壊で計測することに成功しました(図2)。本計測法によって、従来手法で得られていた平均的な応力を大幅に上回る“局所的な応力”が結晶粒の内部に発生することを世界で初めて実証しました。この局所的な応力の実測は、部品内部の弱点の抽出や、劣化・変形機構の解明を可能とし、自動車、家電、情報通信関連において高い信頼性を持つ部品や、その製造プロセスの開発に大きく貢献すると期待されます。また、この技術は、ミクロからマクロまでの応力の非破壊計測を実現し、変形のみならず破壊まで表現できるマルチスケールの材料モデリングや、寿命予測のシミュレーション技術の発展にもつながると期待されます。
 本成果は、2019年12月20日(米国東部標準時)付で、米国の科学雑誌「Science」に掲載されます。

発表雑誌:
雑誌名: Science
論文タイトル:Intragranular three-dimensional stress tensor fields in plastically deformed polycrystals
著者:Yujiro Hayashi, Daigo Setoyama, Yoshiharu Hirose, Tomoyuki Yoshida and Hidehiko Kimura
DOI番号:10.1126/science.aax9167

 

【用語説明】

*放射光X線:
一般的なX線の約1億倍の輝度と高い透過性をもつX線。

**走査型3次元X線回折顕微鏡法:
新大型放射光施設SPring-8の豊田ビームラインに構築。



問い合わせ先:
株式会社豊田中央研究所 総合企画部 広報室
https://www.tytlabs.co.jp/contact/toiawase.html