トップページYSAEnglish


「12th SPRUC Young Scientist Award」の受賞者の決定について

SPring-8ユーザー協同体
会長 西堀 英治
12th SPRUC Young Scientist Award 選考委員会
委員長 尾嶋 正治

YSAは、SPring-8/SACLA利用法や解析手法の開発に顕著な成果を創出した若手研究者、あるいは測定手法や解析手法は確立された方法であったとしても、SPring-8/SACLAの特徴を活用し測定対象の分野にとって顕著な成果を創出した若手研究者に与えられる賞です。

このような観点からYSA選考委員会において厳正な審査を行った結果、下記の2名の受賞者を決定しました。

受賞者 鬼頭 俊介(KITOU Shunsuke)/ 東京大学大学院 新領域創成科学研究科
研究テーマ 高エネルギーX線回折を用いた価電子軌道の直接観測
受賞理由 鬼頭 俊介氏は、コア差フーリエ合成法による電子密度解析手法を独自に開発し、SPring-8から発生する40 keV付近の短波長高輝度X線放射光を用いた回折実験データ解析に適用することで、サブオングストロームの空間分解能で価電子密度分布の可視化に成功した。これまでもX線回折を用いた価電子密度解析は多く試みられてきたが、鬼頭氏の開発した手法は、モデルを仮定することなく価電子密度を抽出できる点において、他の手法とは一線を画す。鬼頭氏は、自身が開発した手法を用いて、分子性結晶における結合性/反結合性軌道や、遷移金属・希土類酸化物におけるd・f電子軌道の可視化に成功するなどの重要な研究成果を挙げている。このように、鬼頭氏の開発した手法は、原子位置やその周期を特定する結晶構造決定手法として広く認識され利用されてきたX線回折法を、物性を支配する電子軌道を実空間で可視化する手法に発展させた点で意義は大きく、さまざまな分野での波及効果が期待できる。これら研究業績は、SPring-8の特徴である高輝度性と高エネルギー性を最大限活用したものであり、物性物理学研究において重要なツールとして今後益々発展することが期待できるものであり、鬼頭 俊介氏は12th SPRUC Young Scientist Awardに相応しいと判断する。
受賞者 大竹 研一(OTAKE Ken-ichi)/ 京都大学 高等研究院 物質―細胞統合システム拠点
研究テーマ 柔軟な多孔性配位高分子の動的挙動のその場観察による解明
受賞理由 PCP(多孔性配位高分子)は、金属イオンと有機架橋配位子の配位結合によって生成する多孔材料であり、活性炭やゼオライト等の旧来型多孔材料と異なり、選択吸着、触媒作用などの新しい機能を付加できる結晶性機能材料である。さらに、柔軟な骨格を持ち、外部刺激により構造が変化するFlexible PCPには、ガスにより細孔窓が開閉するという特異な性質を有するものがある。このためFlexible PCPはインテリジェント吸着分離材として産業応用も期待されている。しかし、そのメカニズムはわからず、メカニズム解明が求められていた。大竹氏は、SPring-8の単結晶、多結晶X線回折ビームラインを利用し、in situ ダイナミック構造解析を行うことで、この細孔窓の開閉メカニズムが骨格と官能基間との相互作用に基づく安定化構造の変化にあることを明らかにした。さらにこの原理を使い、1) 高純度アセチレン貯蔵材料の開発、2) PCPを利用したH2O/D2O分離材料の開発、3) 高選択性を有する PCP薄膜のケミレジスタセンサーの開発及びそれらの機構解明といった成果を次々と挙げている。これら研究業績は、放射光を用いた新たなPCP科学を切り拓くものであり、大竹研一氏は12th SPRUC Young Scientist Awardに相応しいと判断する。