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「SPRUC 2016 Young Scientist Award」の受賞者の決定について

SPring-8ユーザー協同体
会長 中川 敦史
SPRUC 2016 Young Scientist Award 選考委員会
委員長 水木 純一郎

2016年度に募集しておりました「SPRUC 2016 Young Scientist Award (YSA)」には、締切までに13件の応募がありました。

YSAは、SPring-8の利用法や解析手法の開発に顕著な成果を創出した若手研究者、あるいは測定手法や解析手法は確立された方法であったとしても、SPring-8の特徴を活用し測定対象の分野にとって顕著な成果を創出した若手研究者に与えられる賞です。

このような観点から、SPRUC 2016 Young Scientist Award選考委員会において厳正な審査を行った結果、下記の2名の受賞者が決定しました。

受賞者 加藤 英明(KATO Hideaki)/ 米国スタンフォード大学 医学部分子細胞生理学科
研究テーマ オプトジェネティクスツールである光駆動性イオン輸送体の構造機能解析
受賞理由 加藤英明氏は、光駆動性陽イオンチャネル「チャネルロドプシン」の構造解析と光駆動性イオン輸送体における吸収波長シフト変異体の普遍的設計方法の確立、新規光駆動性イオン輸送体「光駆動性カリウムイオンポンプ」の創製と構造解析など、神経科学研究の革新的な手法として注目されているオプトジェネティクス技術に対して、構造生物学の面から大きく貢献した。さらに、その過程において、その豊富な経験を活かし「実験者の立場から」微小結晶へのX線照射方法や放射線損傷を低減した測定条件提案方法の開発・高機能化に貢献し、現在も続々と増えつつある LCP 結晶を用いた膜タンパク質結晶構造解析の汎用化の道を拓くことに貢献した。以上の理由により、 SPring-8の若手ユーザーによる優れた業績として讃えるに相応しい業績としてSPRUC 2016 Young Scientist Awardを授与することに決定した。
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受賞者 林 雄二郎(HAYASHI Yujiro)/ (株)豊田中央研究所 分析部 量子ビーム解析研究室
研究テーマ 走査型3DXRD顕微鏡法の開発
受賞理由 林 雄二郎氏は、実用金属材料の三次元結晶構成を非破壊で観察する技術として、走査型三次元X線回折法(3DXRD)を独自に開発した。従来から海外で開発されてきた同様の手法では、大きな試料では結晶粒からの回折斑点の重なりが多く、実用材料への適用が困難であるという問題があった。林氏の新手法では入射ビームを結晶粒径よりも小さくすることにより回折斑点の重なりを抑えたため、大きな試料の解析が可能となった。林氏は、すでに20ミクロンのX線ビームで実用金属材料への応用を立証しており、現在はさらに一桁小さいビームを用いた開発研究を進めている。本手法はSPring-8の高エネルギーX線と低エミッタンスを活用したもので、林氏が企業の立場でこのようは先端的な測定技術の提唱から検証、実用化までを行ったことは特筆すべきであり、SPRUC 2016 Young Scientist Awardに相応しいと判断される。
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