SPring-8利用者懇談会研究会

研究会の名称

顕微ナノ材料科学 / Microscopic-Nano Material Science

(旧研究会:ナノ材料科学)

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代表者、副代表者

代表者
氏名 大門 寛 / DAIMON Hiroshi
所属 奈良先端科学技術大学院大学
連絡先 daimon( at )ms.naist.jp

副代表者
氏名 朝倉清高 / ASAKURA Kiyotaka
所属 北海道大学
連絡先 askr( at )cat.hokudai.ac.jp

研究会の活動目標・目的

 放射光を使った顕微イメージング技術の発展は目覚しく、大きな発展を遂げている。それは高輝度・偏光・高速パルス光という放射光の特性と表面電子顕微鏡の技術の最近の発展に起因している。我が国ではこの分野の取り組みが遅れた経緯がある。その理由は放射光施設利用者が顕微イメージング技術の重要性を認識することが遅れたことと、放射光施設側もそれに呼応して対応を行ってこなかったためである。しかし、SPring-8ではスペクトロスコピック機能をもつ光電子顕微鏡(SPELEEM)が設置されて稼動しており。多数の利用者の要求に応えて着々と成果を出している。このSPELEEMはスペクトロスコピック特性を持つために、数10nmより良い分解能をもつ化学結合状態のイメージングが可能な光電子分光法(XPS顕微鏡)として、従来では困難と考えられていた高分解能化学結合マッピングを可能にしている。また、放射光の円偏光と直線偏光特性を利用して磁性イメージを高分解能で得ることが出来るようになっている。現在は本手法を用いて、ナノ材料のキャラクタリゼ−ションを中心に、産業応用への展開、絶縁物のような新規材料、あるいは隕石など地球惑星科学まで多彩な研究が展開されている。このように大きな技術的発展を遂げてきている「顕微ナノ材料科学」をさらに発展させ、世界に冠たる成果を出そうと思うと、互いのノウハウの交換等を行なうために国内研究者の交流は欠かせない。

 また現在の問題点として、SPELEEMは専用ビームラインを持っていない。拡大する顕微分析へのニーズに対して、現在の割り当てビームタイムのシフト数や、装置の台数とそれに携わるスタッフの人数は必ずしも十分ではない。一方世界的に状況を見てみると、この分野で先駆的な研究を始めたイタリア・トリエステのELLETRAでは10年以上前から専用ビームラインにSPELEEMを設置し、長時間かけて調整を行って、着々と成果を出している。その後、ドイツのBESSYII、アメリカバークレイのALS、スイスのSLS、イギリスのDLS、フランスのSoleil等いずれも専用ビームラインでSPELEEMを設置して実験を開始している。このような状況にあって1人日本だけがその潮流から遅れてしまって設置施設の事情のために世界の先端の研究から遅れることがあってはならないと考えられる。

 また、この分野では放射光のパルス特性を利用して、超高速現象の顕微観察を行う手法が新しい潮流として注目を集めている。特に新しい高速特性を持った材料開発にとってはなくてはならない評価技術になってくる。そこで我が国でもこの分野を立ち上げた。また、原子配列を光電子で立体的に見ることのできる独自の光電子顕微鏡の開発も始まっている。また、大型放射光施設の強みを活かした、硬X線とPEEMを組み合わせた新しい顕微XAFS技術への期待が、学術と産業界の両方から高まってきている。

 これらの新しい研究の芽を発展させていくためには、このような研究会をベースにした連携が欠かせない。種々の問題に対応するために、研究会を開催するとともに、利用者の要求をまとめて施設へ要望し、研究ツールの高度化をめざしていくことが重要である。以上が本研究会が果たしていく役割であると認識している。


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