SPring-8学術成果集の刊行にあたって
大型放射光施設SPring-8は、1997年10月の供用開始から十数年を経過し、各種機器・装置の整備と高度化により世界最高レベルの先端研究基盤として成熟して、さまざまな分野において学術と産業の発展に貢献してきました。現在、稼働しているBL数は、共用BL26本、専用BL19本、理研BL9本、加速器診断BL2本の総計56本であり、さらに1本のBLが調整中です。これらのBLを利用して15年間に8,043編の研究論文が発表されました。最近は年間800編近い論文が発表されており、この数値は我が国から一年間に発表される総論文数(75,000編)の1%強になります。また、これまでに発表された論文の被引用数の平均値は、1編あたり16回と高い値を示しております。このように、SPring-8の利用者の方々の学術研究のアウトプットは量と質ともに高く、多くの優れた論文が発表されています。
この冊子は、SPring-8で行われた学術利用の研究課題の中から、ライフサイエンス、ソフトマター、構造物性、電子物性、高圧地球科学、環境・エネルギー、核物理の7分野それぞれにおける主な成果を選び、それらをまとめたものです。この冊子を作成するにあたり「学術」の香りを損なうことなく、専門分野以外の人にとっても「わかりやすく」成果を伝えることができるように、さまざまな努力が払われました。
SPring-8のような大型研究施設は、その建設や運営管理に多額の国費が必要とされることから、それぞれの研究の意義や有効性について国民の理解を得ることが不可欠です。そのためには、国民の視点からしてもSPring-8の成果が十分に理解されるように、適切な説明をする必要があります。学術分野におけるSPring-8の多大な貢献を広く国民のみなさまにご理解いただくために、この冊子が少しでもお役に立つことを願っています。また、本誌とともに刊行されている「SPring-8産業利用成果」の冊子と合わせてご覧くださり、SPring-8の意義や有用性をより深くご理解いただけるなら幸甚に存じます。
なお、本冊子をまとめるにあたりご尽力いただきました編集委員会委員やSPring-8を利用されている研究者の方々をはじめ、本誌の制作に協力された多くの皆様にはあらためて深く感謝を申し上げます。
公益財団法人 高輝度光科学研究センター
理事長 土肥 義治

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SPring-8とは