大型放射光施設 SPring-8

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SPring-8 Seminar (第286回)

主題/内容 グラファイト表面上の固層 4He -異常な高易動度とガラス転移について-(簑口友紀) /固体4He膜のすべり運動をプローブとした3He-4He膜の研究(鈴木勝)
開催期間 2019年05月27日 (月) 14時00分から15時30分まで
開催場所 普及棟中講堂
主催 (公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)
形式 レクチャー(講演)
概要

【Seminar 1】

Speaker : 簑口 友紀

Language : 日本語

Affiliation : 東京大学大学院総合文化研究科

Title : グラファイト表面上の固層 4He -異常な高易動度とガラス転移について-

Abstract : 講演時間 14:00-14:45
固体表面に物理吸着した 4He 薄膜は、特に最初の数原子層については基板に硬く固着し、力学的に不活性な層と見なされて来た。最近、電通大のグループ[1]は、水晶振動子法(QCM)によってこの系に強い摂動を与え、基板がグラファイトのように充分滑らかな場合には不活性層(固層)が滑り出すこと、そして一旦滑り出したそれは、104 s に及ぶ長い寿命をもって、あたかも基板から浮き上がったかのような高易動度状態に遷移することを見出した。本セミナーでは、この興味深い現象について、グラファイト上第一層目の不均質化(ガラス化?)による可能性を考える[2].不活性層が液層で被覆される場合には、その超流動状態によって、この「ガラス状態」が効率的にアニールされるなど、従来のガラスには見られない特徴を持っていることを強調したい。

[1] N. Hosomi, A. Tanabe, M. Suzuki and M. Hieda, Phys. Rev. B, 75, 064513 (2007).
[2] T. Minoguchi, J. Low Temp. Phys. 187, 354 (2017).



【Seminar 2】

Speaker : 鈴木 勝

Language : 日本語

Affiliation : 電気通信大学大学院情報理工学研究科

Title : 固体4He膜のすべり運動をプローブとした3He-4He膜の研究

Abstract : 講演時間 14:45-15:30
固体吸着膜のすべり運動はナノトライボロジーの重要な研究テーマであり,私たちはグラファイト基板上の固体4He 膜のすべり運動を水晶マイクロバランスを利用して測定を行ってきた.これまでの研究により,大振幅・低温域では第2 原子層が第1 原子層に対してすべり運動を起こす[1].このすべり運動は第1・2 原子層間の転位の運動により説明される.また,4He 膜上部が超流動に転移すると超流動カウンター流が転位の運動を抑制し,すべり運動が停止する[2].最近,固体4He 膜のすべり運動をプローブとして3He-4He 膜の3He 原子の振舞いを明らかにした.実験の結果,4He 膜に少量の3He原子を導入すると,小振幅では低温でかすかな共振振動数の低下が観測され,大振幅ではその温度で抑制されたすべり運動が再び出現する.この振舞いは簔口モデルの自然な拡張として,3He原子が第1・2 原子層間の転位に吸着することで説明される.固体4He 膜のすべり運動は,固体4He 膜の特徴ある構造と上部の液体との相互作用から多彩な振舞いを示すことが明らかになりつつある.

[1] N. Hosomi, and M. Suzuki, Phys. Rev. B, 77, 024501 (2008).
[2] N. Hosomi, J. Taniguchi, M. Suzuki and T. Minoguchi, Phys. Rev. B, 79, 172503 (2009).



担当者:JASRI 放射光利用研究基盤センター 櫻井吉晴
    e-mail:sakuraiatspring8.or.jp/PHS:3803

問い合わせ先 JASRI研究支援部 研究調整課SPring-8セミナー事務局 三好忍/糀畑美奈子
0791-58-0833
0791-58-0830
minako@spring8.or.jp
最終変更日 2019-05-20 10:06