大型放射光施設 SPring-8

コンテンツへジャンプする
» ENGLISH
パーソナルツール
 

SPring-8 Seminar (第299回)

主題/内容 テラヘルツ・中赤外パルスによる固体物性研究の新展開
開催期間 2022年04月28日 (木) 13時30分から14時30分まで
開催場所 上坪記念講堂+Zoomによるオンライン開催
主催 (公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)
形式 レクチャー(講演)
概要

Speaker: 貴田徳明

Language: 日本語

Affiliation: 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 物質系専攻

Title: テラヘルツ・中赤外パルスによる固体物性研究の新展開

Abstract:
 近年のフェムト秒レーザー技術の進歩によって、テラヘルツパルスと呼ばれる新しい電磁波の発生や検出が比較的容易に行えるようになった。ここで言うテラヘルツパルスとは、中心周波数が約1 THz、光子エネルギーが約4 meV、時間幅が約1 psであるほぼモノサイクルの電磁場パルスを指す。このテラヘルツパルスを用いた分光測定では、電磁場の振幅と位相の変化を同時に検出できるため、固体の光学定数の実部と虚部の両者を近似なく決定することが可能であるという利点がある。このようなテラヘルツパルスの特長は、強誘電体(強磁性体)の分極(磁気)ドメインのイメージングにも活用できることが実証されている。一方、テラヘルツパルスの電場振幅は1 MV/cm以上に増強することが可能であり、このパルスを固体の光学応答を調べるプローブ光としてだけでなく、電子構造や結晶構造を制御する励起光として用いようとする試みも盛んになりつつある。ごく最近には、より周波数の高い中赤外領域において、テラヘルツパルスと同様に位相が安定であり、かつ、振幅が10 MV/cmを超える高強度の中赤外パルスの発生も実現しており、固体の物性制御の研究が始められている。
 本セミナーでは、まず、上記の観点から我々がこれまでに行ってきたテラヘルツパルスや中赤外パルスを用いた固体物性研究について、以下の3つのトピックスを中心に紹介する。
(1) 低温磁場下テラヘルツ分光によるマルチフェロイックス系のエレクトロマグノン(光電場で励起される磁気励起)の検出 [1,2]
(2) テラヘルツ放射を用いた強誘電体・強磁性体のドメインイメージング [3-5]
(3) 高強度テラヘルツ・中赤外パルスを用いた電子誘電体系の分極・構造のコヒーレント制御 [6-9]
 後半では、上記の研究を踏まえた固体物性研究の今後の展開として、XFELとテラヘルツパルスや中赤外パルスを組み合わせたポンプ・プローブ分光研究の可能性や展望について議論したい。

[1] N. Kida et al., Phys. Rev. B 80, 220406(R) (2009).
[2] N. Kida et al., Phys. Rev. B 83, 064422 (2011).
[3] M. Sotome et al., Appl. Phys. Lett. 105, 041101 (2014).
[4] Y. Kinoshita et al., ACS Photonics 3, 1170 (2016).
[5] Y. Kinoshita et al., Phys. Rev. Lett. 124, 057402 (2020).
[6] T. Morimoto et al., Phys. Rev. Lett. 118, 107602 (2017).
[7] T. Miyamoto et al., Sci. Rep. 8, 15014 (2018).
[8] H. Yamakawa et al., Nat. Commun. 12, 953 (2021).
[9]T. Morimoto et al. Phys. Rev. Research 3, L042028 (2021).

担当者:JASRI XFEL利用研究推進室 矢橋牧名
e-mail:yabashiatspring8.or.jp/PHS: 3811

問い合わせ先 JASRI研究支援部 研究調整課SPring-8セミナー事務局  関澤富美子/糀畑美奈子
0791-58-0833
0791-58-0830
kuwano@spring8.or.jp
最終変更日 2022-04-25 15:06