大型放射光施設 SPring-8

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各種挿入光源の紹介

各挿入光源ビームラインと光源の種類の一覧

SPring-8に設置されている挿入光源の種類を下表にまとめる。

ビームライン 挿入光源種類 周期長 (cm) 周期数 最小Gap (mm) 最大K値
BL03XU 真空封止 3.2 140 8.1 2.58
BL05XU 真空封止 3.2 93 8.24 2.54
BL07LSU 8の字 10.0 26×4+20×4 28, 20 --
BL08W 楕円ウィグラ 12.0 37 25.5 0.5(Kx)
11.24(Ky)
BL09XU 真空封止 3.2 140 8.58 2.33
BL10XU 真空封止 2.8 128 8 2.27
BL11XU 真空封止 3.2 140 9.2 2.32
BL12XU 真空封止 3.2 140 8.1 2.51
BL13XU 真空封止 3.2 140 9.6 2.2
BL15XU リボルバ(直線偏光) 4.4 102 21.3 2.24
リボルバ(円偏光) 9.2 48 20 3.42
BL16XU 真空封止 4.0 112 12.9 2.38
BL17SU 偏光可変型挿入光源 13.0 34 -- --
BL19LXU 真空封止 3.2 780 11.8 1.79
BL20XU 真空封止 2.6 173 7 2.12
BL22XU 真空封止 3.8 118 9.98 2.95
BL23SU ヘリカル 7.5 17x2 8 4.5
BL24XU 真空封止8の字 2.6 172 8 1.32(Kx)
1.66(Ky)
BL25SU ヘリカル 12.0 12x2 20 6.47
BL27SU 8の字 10.0 44 37 4.28(Kx)
6.90(Ky)
BL28XU 真空封止 3.2 140 8.1 2.59
BL29XU 真空封止 3.2 140 8.86 2.53
BL32XU 真空封止 2.6 173 7.4 2.01
BL33XU 真空封止 3.2 140 8 2.6
BL35XU 真空封止 2.0 225 6.64 1.49
BL36XU 真空封止 3.2 140 8 2.59
BL37XU 真空封止 3.2 140 8.5 2.46
BL39XU 真空封止 3.2 140 8.6 2.33
BL40XU 真空封止ヘリカル 3.6 125 8.3 1.04
BL41XU 真空封止 3.2 140 9.6 1.99
BL43XU 真空封止 1.9 780 6.2 1.46
BL44XU 真空封止 3.2 140 9 2.31
BL45XU 真空封止 3.2 93 10.9 1.97
BL46XU 真空封止 3.2 140 9.6 2.2
BL47XU 真空封止 3.2 140 9.6 2.11

 

真空封止アンジュレータ(標準型・ハイブリッド・垂直)

VerticalUndulatorVertical Undulator

通常、挿入光源の磁石は真空チャンバの外に設置される。この場合真空チャンバの垂直アパーチャは、電子ビーム入射時に要求される垂直アパーチャよりも大きくなければならず、したがって磁石の最小ギャップはそれよりもさらに真空チャンバの壁の厚み(~4mm)の分だけ大きくなり、設置誤差等を考慮に入れた場合の最小ギャップは20mm程度となる。アンジュレータ放射光が、チューニングによって十分広いエネルギー範囲をカバーするためには、K値として最低2以上は必要であり、このため、最小ギャップ20mmの場合達成できる最短周期長は5cm程度となる。
SPring-8では、磁石を真空チャンバの内部に設置(真空封止)することにより、最小ギャップを8mmまで下げることが可能になったため、周期長3.2cmの真空封止アンジュレータを標準型の挿入光源として採用した。このアンジュレータの1~5次光を使うことにより、5~80keVの広範囲のエネルギーをカバーすることが可能である。
真空封止ハイブリッドアンジュレータは、磁極を用いることにより強い磁場を得ることができ、このため標準型よりも更に周期長を短くすることができる。

真空封止垂直アンジュレータは、水平方向に磁場を発生し、電子を垂直面内に運動させることにより垂直偏光を取り出すための挿入光源である。このためには通常上下2列にある磁石列をさらに左右2つに分割し、合計4列にする必要があるが、SPring-8ではさらに磁石表面に工夫をこらし、水平方向の磁場の一様性などを高めている。

真空封止アンジュレータの実現には、磁石をチャンバ内に設置した状態で超高真空(3x10-8Pa)を達成する必要があるため、磁石表面を TiN(窒化チタン)でコーティングしたり、精密な温度コントロール下でのベーキング(加熱排気)などを行っている。

ヘリカルアンジュレータ

Helical UndulatorHelical Undulator

ヘリカルアンジュレータは電子を螺旋状の軌道に沿って運動させることにより、円偏光の放射光を得るためのものである。このアンジュレータの最大の特色として、軸上では基本波しか観測されないということがあげられる。このため、実験者は余計な高調波の熱に悩まされることなく光を使うことができ、理想的な光源といえる。ヘリカルアンジュレータを実現するためには、螺旋状の磁場を作り出す必要があるが、SPring-8では上下に各3列の磁石列を設置し、中央磁石列で垂直磁場、両側の磁石列で水平磁場を作り出すことにより螺旋磁場を形成している。また、中央部磁石をスライドさせることにより、左右の円偏光を作り出すことが可能である。これをphasingという。

SPring-8の軟X線ビームラインのひとつBL25SUでは、2台のヘリカルアンジュレータとキッカーマグネットを使用した円偏光スイッチングを行っている。スイッチング時は、2台のヘリカルアンジュレータを各々左右円偏光にセットし、図のような2つの三角形バンプ軌道を直線部内で交互に励起することによって、BL光軸上の円偏光方向を周期的(1~10Hz)に変化させる。

Kicker Magnet SystemKicker Magnet System

8の字アンジュレータ

Figure-8 UndulatorFigure-8 Undulator

SPring-8では電子エネルギーが高いため、アンジュレータで軟X線を得るためにはK値を大きくせざるを得ない。ところが、通常の平面アンジュレータの場合、K値が増加するにつれ高調波強度が増大し、無用な熱負荷が発生するという問題が生じる。円偏光の放射光が必要か、あるいは偏光を問わない場合はヘリカルアンジュレータを採用することでこの問題を解決できる。8の字アンジュレータはヘリカルアンジュレータの低熱負荷という特性を保ちつつ、直線偏光を得るために考案された挿入光源であり、電子を8の字状の軌道に沿って運動させることにより、低熱負荷の直線偏光放射光を発生する。これを電子軌道の形状から名をとり、8の字アンジュレータと呼ぶ。8の字軌道を作り出すためには、ヘリカルアンジュレータの磁石配列をわずかに修正するだけでよい。具体的には、両側磁石の(z軸方向の)長さを2倍にするだけである。このため8の字アンジュレータの周期長は、正確には水平磁場の周期長であるが、SPring-8では便宜上、垂直磁場の周期長を8の字アンジュレータの周期長とし、水平磁場により発生する基本波を0.5次光、垂直磁場により発生する基本波を1次光と呼んでいる。また、このことからも容易に推察されるように、0.5、1.5、2.5、.....次光は垂直偏光、1、2、3、....次光は水平偏光である。



楕円ウィグラ

偏向磁石からの放射光を軸外で観測すると、観測角に応じた円偏光度を持つ放射光が観測される。これは軸外で観測した場合、軸上からは見えない電子の円運動が観測されるためであるが、同じように、ウィグラーからの放射光を軸外で観測しても円偏光成分は得られない。これは各磁極において電子が曲げられる方向が、隣り合う磁極どうしで互いに反対であるため、円偏光成分が完全に消滅してしまうためである。楕円ウィグラは、各磁極において垂直方向にわずかに電子を偏光させ、軸上において円偏光成分が得られるようにしたものである。楕円ウィグラの磁石形状は、ヘリカルアンジュレータとほとんど同じであるが、水平磁場が弱くて良いため、両側の磁石列はヘリカルアンジュレータのそれと比べて小さくなっている。