挿入光源とは
挿入光源とは、偏向磁石放射よりさらに質の高い光を得るために考案された装置であって、蓄積リングにおいては隣り合った偏向磁石の間に「挿入される」ためにこのような名前がつけられている。挿入光源の概略を下図に示す。
N極、S極の磁石を交互に並べて周期的な磁場を作り出し、電子を蛇行運動させることによって各周期から光が放出され、強度が増大する。また、磁場強度を変化させる(一般的にはギャップと呼ばれる上下磁石列の間隙を変化させる)ことにより、放射光のエネルギー(波長)を変化させることができる。
挿入光源には大別してアンジュレータおよびウィグラと呼ばれる2つの種類がある。これらのうち、特にアンジュレータは光源サイズ・角度発散が小さい準単色光が得られるという利点があり、SPring-8をはじめとする第三世代と呼ばれる放射光施設は、アンジュレータに最適化された蓄積リングを有している。
挿入光源の磁場を発生するためには主に永久磁石が用いられるが、ある種の目的のために電磁石を用いたものや、より高い磁場を得るために飽和磁束密度の高い磁性体を磁極材として用いたものなども開発されている。また、放射光の偏光特性の制御や光学素子の熱負荷軽減などを目的として特殊な電子軌道を実現するための磁気回路も開発されている。