大型放射光施設 SPring-8

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シンクロトロン光でサガンスギの強さの要因を解明しました(プレスリリース)

公開日
2023年08月08日
  • BL19B2(X線回折・散乱 II)

2023年8月8日
公益財団法人佐賀県産業振興機構
九州シンクロトロン光研究センター

【実験結果の概要】
○令和4年度:小角X線散乱測定
・サガンスギは、従来品種のスギよりも放射壁のミクロフィブリル傾斜角が小さい。⇒ 木材強度が高いことが裏付けられた。
○令和5年度:DNAによる親子解析と小角X線散乱測定
・親子間のミクロフィブリル傾斜角の類似性を比較した結果、親から子へ遺伝する形質であることが判明。⇒ 木材強度が遺伝することがミクロフィブリル傾斜角(細胞壁の構造)の観点から裏付けられた。

 佐賀県林業試験場と公益財団法人佐賀県産業振興機構九州シンクロトロン光研究センターでは、令和4年度から共同研究を行い、サガンスギの木材強度が高い要因の解明に取り組んできました。
 サガンスギは、製材品を用いた破壊試験により木材強度が高いことはわかっていますが、年輪幅が広いのに木材強度が高い(一般的に年輪幅が広いと木材強度が低い。)要因を解明するため、シンクロトロン光を用いて、木材強度と密接な関係があると言われているミクロフィブリル(細胞壁を作り上げているセルロース繊維)の構造を明らかにする実験※1を行いました。
 実験の結果、従来のスギと比較してサガンスギのミクロフィブリルの細胞軸に対する傾斜角が小さい(=木材強度が高い※2)ということが判明しました。この結果は、県林業試験場が行った物理的な試験で得た木材強度の違いを木材の細胞壁の構造というミクロな視点から裏付けたことになります。
 また、県林業試験場において、DNA解析によりスギ品種の親子関係を明確にしたうえで類似性を比較した結果、親の持つミクロフィブリル傾斜角は、子へ遺伝する形質であることも判明しました。
 現在、県林業試験場では「花粉を付けないサガンスギ」の開発についても進めており、この成果を踏まえ、九州シンクロトロン光研究センターのビームラインを活用して、木材強度が高い品種の選抜を行っていくこととしています。

〇小角X線散乱実験の様子

図1

図1 SPring-8のビームラインBL19B2の実験ハッチ内の様子

〇サガンスギと従来スギとの比較結果

図2

図2 サガンスギと従来スギのミクロフィブリル配向角の比較


※1
今回のシンクロトロン光(放射光)実験は、九州シンクロトロン光研究センター研究員により、兵庫県にある世界最高性能の放射光施設であるSPring-8のビームライン BL19B2を利用しました。このBL19B2は、当センターのビームラインよりも測定範囲が広く、効率的に測定可能な機器が整備されているため、実験に活用しました。

※2
既存の研究から、木材の細胞壁を構成するミクロフィブリル(セルロース繊維)の傾斜角度が小さいほど、曲げヤング係数(木材の強さを示す指標の一つ)が大きい(木材強度が高い)ことが知られています。



 

問合せ先
・佐賀県林業試験場
 担当:山浦、江島
 TEL 0952-62-0054
 E-mail ringyoushikenatpref.saga.lg.jp

・公益財団法人佐賀県産業振興機構九州シンクロトロン光研究センター
 担当:山津、廣沢
 TEL 0942-83-5017
 E-mail soumuatsaga-ls.jp

(SPring-8 / SACLAに関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課 
 TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
 E-mail:kouhou@spring8.or.jp

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