大型放射光施設 SPring-8

コンテンツへジャンプする
» ENGLISH
パーソナルツール
 

手法:蛍光X線分析-原理・装置と実際・実例-

高輝度光科学研究センター 伊藤真義

 蛍光X線分析法は、文化財の化学分析においてもっとも広く用いられている手法のひとつである。非破壊、非接触で、簡便に資料の元素構成を知ることができる手法であり、近年では可搬ハンディー型の装置も市販され、研究室内にとどまらすフィールドワークにおいても広く用いられている。

 ここでは“放射光”蛍光X線分析法について紹介する。励起用のX線源として”放射光”を利用した蛍光X線分析法であり、基本的な測定原理や、X線検出器等は通常の蛍光X線分析法と同じである。では“放射光”を利用する利点は何であろうか? 放射光の大きな特徴は、超高輝度であることであり、また、大型放射光施設SPring-8においては、高エネルギーX線を利用することができることなどがある。
 高輝度X線の恩恵として、数十ナノメートルでのX線ビームが利用可能であることがあげられる。これにより、微小領域の測定や、極微量試料の測定の測定が可能となっている。資料自体の微細構造の観察はもちろん、資料本体の移動や観察が不可能な場合でも、その剥離片がわずかに―例えば目でやっと見える程度の大きさもあれば、十分な精度での測定が可能である。
 高エネルギーX線は、全重元素についてK線を利用した測定を可能とする。例えばSPring-8では116keVの単色X線を使用できるが、これはウランのK吸収端より高いエネルギーであり、ウランを含む全重元素について、K線を用いた測定が可能である。特に希土類元素の測定について有力な手法であり、K線で同定することにより全希土類を完全に分離でき、また、ppmオーダーでの測定が可能である。

 講演では、SPring-8での測定の実際の様子や、他施設を含めた放射光蛍光X線分析法を使用した文化財の測定例をいくつか紹介する。