大型放射光施設 SPring-8

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2019年秋の学校 講義・講習概要

基礎講義 グループ講習

基礎講義(必須)

基礎講義1.放射光発生の基礎 --- 金城 良太(理化学研究所)
放射光、特にシンクロトロン放射光は、高エネルギー電子が磁場により偏向を受けた時に発生する電磁放射で、指向性に優れ、輝度が高く、マイクロ波から赤外、可視光、紫外、真空紫外、軟X線、硬X線、ガンマ線までの幅広い波長領域をカバーする。本講義では、代表的なシンクロトロン放射である偏向電磁石放射、アンジュレータ放射、コヒーレントシンクロトロン放射、自由電子レーザーなどについて、その性質を述べるとともに発生原理の直感的な説明を試みる。

基礎講義2.ビームライン ~光源と実験ステーションを繋ぐもの~ --- 仙波 泰徳(高輝度光科学研究センター)
放射光実験では光源からの放射光をそのまま利用することはほとんどない。放射光は実験ステーションに至るまでに様々な加工がなされ、単色性や指向性の優れた使い勝手のよいX線成分だけがユーザーに提供される。講義では、X線光学の定性的な説明を行い、それらを利用した放射光加工の機器類についての紹介した後、熱対策を中心とした技術的な問題について触れる。

基礎講義3.X線検出器の基礎 --- 雨宮 慶幸(高輝度光科学研究センター)
X線は物質によって回折または散乱されるときは波(電磁波)として振る舞いますが、検出されるときは粒子(光子)として振る舞います。試料から回折・散乱されたX線の強度を測ることは、X線光子の数を数えることであり、その数を場所と時刻の関数として測定する装置がX線検出器です。最初に、光の波と粒子の二重性、及び、光子統計について解説します。次に、1)X線検出器でX線が検出される原理、2)放射光用X線検出器に求められる性能、3)各種のX線検出器の構造と性能、について平易に解説します。

基礎講義4.X線自由電子レーザー入門 --- 大坂 泰斗(理化学研究所)
X線の発見から約120年後の2009年に、米国のSLAC国立加速器研究所が人類最初のX線レーザーを実現させました。それから2年後の2011年には日本の理化学研究所が世界で2番目のX線レーザーを実現させ、SACLAと名付けました。現在ではX線レーザーの建設が世界各地で行われており、今まさにX線レーザーの時代が始まろうとしています。これらのX線レーザーは「自由電子レーザー」と呼ばれるタイプの光源で、私達が普段イメージするレーザーとは異なる方法で光を作り出しています。この講義では、X線レーザーの仕組みとX線レーザーによって可能になったサイエンスをSACLAの取り組みを交えながら紹介します。

基礎講義5.回折・散乱の基礎と構造解析への応用 --- 藤原 明比古(関西学院大学)
物質の性質を理解するうえで、原子配列は、最も基本的、かつ、重要な情報の一つであり、放射光を用いた回折・散乱実験はそれを明らかにする有力な手段です。本講義では、回折・散乱現象の基礎から出発し、原子によるX線の回折・散乱、回折・散乱実験による原子配列の理解について概観します。X線回折実験による結晶構造解析はわかりやすい例ですが、薄膜結晶や周期性を持たない非晶質材料、集合体の構造を理解するための放射光実験の例についても解説します。

基礎講義6.XAFSの基礎 --- 新田 清文(高輝度光科学研究センター)
X線吸収微細構造(XAFS)法は、着目する任意のX線吸収原子の局所的な電子状態(価数、対称性)と動径構造を得ることができる優れた手法である。本講義では、①X線吸収の基本、②XAFS測定の概略、③XAFS解析の概略及び④関連手法 について概説し、XAFSに親しんで頂きたい。

基礎講義7.X線イメージング --- 篭島 靖(兵庫県立大学)
X線の高い透過性はレントゲン写真のように物体内部の構造観察を可能にする。さらに、放射光X線の高輝度性は様々な新しい画像法(イメージング)を可能にした。屈折コントラスト法による高コントラスト動的観察、X線顕微鏡トモグラフィーによる三次元内部構造の顕微観察、走査型X線顕微鏡による微量元素の二次元分布測定、マイクロビームX線による微小領域の構造・歪み解析等を例に挙げ、SPring-8における最先端の応用例を紹介する。

グループ講習

※以下の11テーマより3テーマを受講:グループ講習のいくつかは個人でPCを持参いただくものもあります、ご不明な点がございましたら、事務局までご連絡ください。
※実際の放射光を用いた実習はございません。

グループ講習1.単結晶構造解析 --- 橋爪 大輔(理化学研究所CEMS)/星野 学(理化学研究所CEMS)/杉本 邦久(高輝度光科学研究センター)
 物質を対象とする研究において、必要な情報は目的によって多岐に渡ります。しかし、物質の構造が研究に不要であることはほとんどありません。物質の構造を得る目的で多く用いられている手法が単結晶構造解析です。本講習ではSPring-8 における無機・有機結晶をターゲットとした単結晶回折装置(BL02B1)を見学し、単結晶構造解析のための回折データ測定、解析法の基礎を概説する。実習として、デモデータを用いた有機結晶の構造解析実習、解析結果についてdiscussionを行う。なお、受講される方は各自PCをご用意下さい。

グループ講習2.粉末X線回折によるその場観測の実際 --- 石橋 広記(大阪府立大学)/河口 彰吾(高輝度光科学研究センター)
 放射光粉末X線回折は物質の反応を追跡するなど、その場観測に適している。SPring-8の高輝度放射光を利用した微量粉末試料のX線回折について実習を行う。BL02B2ビームラインにおいて試料のハンドリングや測定システムの操作などの模擬実験を行う。その後、銅の酸化反応を追跡した回折データを用いて解析を行い、その結果について考察する。

グループ講習3.タンパク質結晶構造解析 --- 水島 恒裕・西尾和也(兵庫県立大学)
 生体内で様々な役割を持つタンパク質の構造情報は、生命機能を理解したり、そのタンパク質を標的とした薬剤をデザインするために重要である。本講習ではタンパク質のX線結晶構造解析を行う上で必要となるタンパク質結晶の作製法、タンパク質結晶を用いた回折実験、およびデータ解析などに関して学ぶ。

グループ講習4.小角X線散乱 --- 増永 啓康(高輝度光科学研究センター)
  小角X線散乱は物質中のナノ構造を観察する計測法で、高分子、液晶、金属、生体物質等、広い分野で応用されている。本講義では、1)X線散乱法でナノ構造を見ることの基礎、2)小角X線散乱法で用いられるX線光学系・検出器系の構造と原理、3)小角X線散乱法の応用例、に関して平易に解説する。

グループ講習5.応力・ひずみ解析 --- 秋庭 義明(横浜国立大学)/冨永 亜希(日本原子力研究開発機構)/城 鮎美(量子科学技術研究開発機構)
 安全・安心な要素設計には、部材要素に作用する応力・ひずみを把握することが不可欠です。特に部材中に隠れている残留応力は、強度に大きな影響を及ぼすため、高精度に評価する必要があります。本講習では、応力・ひずみ測定の基礎的な原理・手順を理解することを目指します。そのため、ひずみ測定の最も基礎的な手法であるひずみゲージ法、さらには、X線回折を利用した応力・ひずみ解析法について、実体験を通して理解することを目的とします。

グループ講習6.X線回折・散乱を用いた薄膜構造評価 --- 小金澤 智之(高輝度光科学研究センター)
 私たちの生活に欠かせない存在である半導体デバイスは、様々な機能性薄膜で構成されています。膜厚が数nmから数百nm程度の機能性薄膜の構造評価には、高輝度X線源である放射光が強力な評価ツールとなります。本講習では薄膜構造評価法であるX線回折測定やX線反射率測定の原理と応用例を紹介し、BL46XUに設置されている多軸X線回折計において測定手順を見学していただきます。

グループ講習7.X線吸収分光法 --- 山添 誠司(首都大学東京)/新田 清文(高輝度光科学研究センター)
 X 線吸収分光法(XAS)は、特定原子(元素)の内殻電子の励起に伴う吸収スペクトルからその原子の電子状態や局所構造を知ることができる手法で、様々な分野で応用されている.本講習では、実際に利用されている測定機器に触れながら、XAS の原理、特長、測定法及びXAS スペクトルの解析の基礎について説明します。

グループ講習8.軟X線分光 --- 原田 慈久・松田 巌(東京大学)
 軟X線領域の光電子分光、吸収分光、発光分光を利用したオペランド(機能材料のその場観察)分光の最前線を紹介し、オフラインでは光電子分光による元素分析の実際と水の分光を体験します。

グループ講習9.赤外分光分析 --- 池本 夕佳・森脇 太郎(高輝度光科学研究センター)
  波長の長い赤外線を利用した分光測定について講習を行います。赤外分光では、物質の組成・結合に関する情報や、物質中の電子状態に関する情報が得られます。講習では、オフライン装置を利用して身近な素材の測定を行うほか、放射光の特徴と利用例なども紹介します。

グループ講習10.光電子分光(HAXPES) --- 保井 晃(高輝度光科学研究センター)
 光電子分光は物性をつかさどる電子を直接取り出し調べる手法であり、電子状態を詳細に解析できることから、基礎物性研究のみならず、製品開発研究まで幅広く利活用されています。本講習では特に、SPring-8で開発された硬X線入射光による光電子分光法を中心に解説を行います。また、光電子分光の基礎的な解析方法に関して実習を行うとともに、先端研究事例を紹介します。

グループ講習11.X線CT入門 --- 上杉 健太朗・八木 直人(高輝度光科学研究センター)
 X線CTは、生体から金属まであらゆる試料の構造研究に利用できる非常に汎用的な計測手法です。CTの原理・撮影装置・画像再構成法に関する講習と、ビームライン見学を行います。