大型放射光施設 SPring-8

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2010年夏の学校 講義概要

基礎講座

基礎講座1.放射光発生の基礎 北村 英男(理研)
放射光とは、高エネルギー電子が磁場あるいは電場中で偏向を受ける時に発生する電磁放射で、指向性に優れているため輝度が高く、赤外から可視光、紫外、真空紫外、軟X線、X線を経てガンマ線に至る広大な波長域をカバーする。放射光源をその発生原理で大別すると、偏向部放射光、アンジュレータ放射光、および自由電子レーザーとなるが、いずれも高エネルギーの電子加速器が必要となる。本講義では放射光概論とこの発生に不可欠な加速器原理の初歩に触れる予定である。

基礎講座2.X線光学の基礎 後藤 俊治(JASRI)
X線は波長がナノメータ以下と非常に短いこと, 振動数が極めて高いことから, X線領域における光学的なふるまいは可視光領域とは異なるいくつかの特徴がある. 結晶がX線の波長程度の三次元的周期構造を有することによって生じるBragg反射や, 屈折率が1よりわずかに小さいことにより媒質表面にすれすれにX線が入射する際におきる全反射の現象などである. 放射光を利用する際には, それぞれを結晶分光器や全反射ミラーとして分光や集光などの放射光の加工に積極的に用いている. 本講義ではこれらを中心にX線光学の基礎的なことについて説明する.

基礎講座3.X線の強度を測る 八木 直人(JASRI)
ほとんどすべての放射光実験は、X線の強度を測定する実験です。それではX線の強度を測るにはどんな方法があるでしょうか?X線検出器はどのような原理に基づいてX線強度を測定しているのでしょうか?そもそもX線の強度とは何でしょうか?X線強度を正確に測定するには、何に気をつけたらよいでしょうか?測定したX線強度は、どのような過程を経てデータ処理されるのでしょうか?等々の疑問にお答えします。

応用講座

応用講座1.回折散乱の基礎 高橋 功(関西学院大学理工学部)
観察という行為の主なものは「観察の対象に可視光領域の電磁波を照射し、回折・散乱されてくる電磁波を目という器官を用いて検出・結像すること」であると言えます。電磁波の一種であるX線を用いて原子や電子を観察する場合でも、回折・散乱が重要なキーワードになるということがお分かりいただけるものと思います。本講義では高校レベルの電磁気学や波動の復習から話を始めて、X線の回折・散乱現象の基本となる考え方とその数学的な表現法についての解説を行う予定です。

応用講座2.XAFS 西畑保雄(JAEA/関学)
XAFSとは、物質中にある注目する元素の内殼電子がX線により励起され、周囲の原子と相互作用するために現れる吸収スペクトルの微細構造である。それを解析することにより、X線吸収原子の電子状態や、その周囲の局所構造を知ることができる。講義では、XAFSの基本原理と実験及び解析方法を述べ、応用例を紹介する。

応用講座3.軟X線分光 原田 慈久(東京大学)
一般にはあまり知られていない「軟X線」が、実は生体に深く関わる軽元素や、固体物理の主役を担う遷移金属の分析に大きな威力を発揮しています。高輝度放射光の果たした役割は大きく、ごく僅かにしか含まれない元素の化学結合状態を調べたり、光を絞ってナノメートル領域の電子状態を観察する手法も開発されています。本講演では軟X線分光の歴史を眺めて、電子状態を知る手法、構造を知る手法とその応用例を簡単に紹介します。

応用講座4.X線自由電子レーザー 田中 均(JASRI)
現在SPring-8にX線自由電子レーザー施設(XFEL/SPring-8、X線FEL)が建設中です。このX線レーザーを使えば、これまで結晶化が困難なためX線構造解析が不可能とあきらめられていた膜タンパク質など生理学上重要な物質の3次元構造の解析が可能となります。この講座では、X線FELの歴史的な位置付けと国際的な状況、その動作原理、加速器構成、技術開発の状況、そして得られる光の特徴と応用分野について、初心者にもわかりやすく説明します。

応用講座5.放射光光電子分光(仮題) 横谷 尚睦(岡山大学)
実習アブストラクト:光電子分光は、単色光を試料に入射したときに、光電効果により試料外部に放出される光電子の運動エネルギー分布を測定する手法です。得られたスペクトルの解析から、試料中に含まれる元素の種類や化学結合状態、ならびに電子状態を調べることができます。 SPring-8から発せられる高分解能軟X線、硬X線を利用した光電子分光は、その高い精度により物質科学研究に欠かせない実験手法となっています。本講義では、光電子分光の原理からはじめ、その特徴、さらにはSPring-8における最先端の光電子分光研究について解説します。

応用講座6.構造生物学 熊坂 崇(JASRI/関学)
生きた細胞中では多様な物質が秩序ある振る舞いを見せています。構造生物学は、生命現象を支える巨大な高分子―タンパク質・核酸―について、その高度な機能を実現する巧緻な分子構造を原子・分子レベルで解析し研究する分野ですが、その分子の巨大さと柔軟性のために精密解析はしばしば困難になります。本講座では、この分野で使われる構造解析法の中でも強力な手法である放射光を用いた単結晶X線回折法などを取り上げ、散乱回折の基本原理から構造決定までを具体例を交えながら解説します。

応用講座7.X線イメージング 篭島 靖(兵庫県立大学)
X線の高い透過性はレントゲン写真のように物体内部の構造観察を可能にする。さらに、放射光X線の高輝度性は様々な新しい画像法(イメージング)を可能 にした。屈折コントラスト法による高コントラスト動的観察、X線顕微鏡トモグラフィによる三次元内部構造の顕微観察、走査型X線顕微鏡による微量元素の二 次元分布測定、マイクロビームX線による微小領域の構造・歪み解析等を例に挙げ、SPring-8における最先端の応用例を紹介する。

応用講座8.放射光粉末構造解析  坂田 誠(JASRI)
粉末構造解析講座では、1.回折の基礎理論を簡単に説明した後、2.一般的な粉末構造解析の方法について述べる。その際、粉末法の中での異なった実験方法について比較検討し、それぞれの方法の特徴を明らかにする。次に、3.放射光粉末法の特徴について論じる。そして、最後に4.先端的放射光粉末法では、何が出来るのかに着目し、具体例をいくつか紹介することとする。