大型放射光施設 SPring-8

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2012年夏の学校 実習概要

下記16件の実習課題を予定しています。受講者の皆さんにはこの中から2テーマを選択していただきます。ただし、特定のテーマに希望者が集中した場合、ご希望に添えるとは限りませんのでご了承下さい。なお、装置故障等の不測の事態により予定が変更される場合があります。

BL01B1:"その場" XAFS計測 --- 宇留賀 朋哉、新田 清文、加藤 和男(JASRI)

XAFS法は、結晶構造を形成していない物質や、濃度が希薄な試料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、広い研究分野で利用されている。本実習では、まずXAFS計測を行うための試料調整と、放射光光学素子の位置調整について実習を行う。その後、触媒粒子の形成反応に対して、"その場"XAFS測定を行い、触媒粒子内でどのような構造変化や電子状態変化が起こるかを解析する。

BL02B1:結晶構造解析の入門 --- 池田 直(岡山大)

結晶構造解析は、単結晶が持つ逆格子空間を探り、そのなかに存在するブラッグ点の精密な座標位置と回折線強度を集計して計算・解析される。この実習ではBL02B1 に整備された4軸回折計と振動写真装置両方を用いて、逆格子空間をどのように考えたら良いのかと言う基本と、データの収集、その処理計算について実習する。

BL07LSU:合金の合成と光電子分光分析 --- 原田慈久・堀場弘司(東大)

物質は光との相互作用によって様々な色を呈します。しかし色(うわべ)を見ても、その物質が何からできているか(本質)はわかりません。例えば、金と真鍮は同じ金色ですが、真鍮は2つの金属の混合物です。本実習では、物質の化学組成や、物性を支配する電子状態を直接調べることができる光電子分光法を用いて、見た目が似た物質についてその本質を見極め、物質の色を決める要因について考察してもらう予定です。

BL11XU:放射光X 線回折顕微法による高性能核共鳴分光素子の探索 --- 三井 隆也(JAEA)

本実習では、放射光のX線を10の9乗分の1まで超単色化できる高品質な核共鳴分光素子をX線回折法や写真法を利用して実際に探し出してもらいます。高品質な結晶光学素子を見つけるための原理や探査結果をレポートにまとめてもらうことでSPring-8の素晴らしいX線の性質やその利用法を体感していただきます。

BL13XU:マイクロX線回折 --- 木村滋(JASRI/岡山大)

SPring-8のような第三世代放射光施設のアンジュレーター光を利用すると、サブミクロンサイズのX線集光ビームを入射ビームとして、高分解能X線回折を実施することが可能となります。本実習では、ゾーンプレートと呼ばれる集光素子を用いてサブミクロンサイズのX線集光ビームを形成し、そのビームを利用する高分解能マイクロX線回折について学びます。

BL14B2:その場XAFS計測 --- 本間 徹生、平山 明香(JASRI)

XAFS法は、結晶構造を形成していない物質や、濃度が希薄な試料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、広い研究分野で利用されている。本実習では、まずXAFS計測を行うための試料調整と、放射光光学素子の位置調整について実習を行う。その後、触媒粒子の形成反応に対して、"その場"XAFS測定を行い、触媒粒子内でどのような構造変化や電子状態変化が起こるかを解析する予定である。

BL19B2:粉末X線回折 --- 大坂恵一(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大)

粉末X線回折は、構造解析技術として物質科学研究での重要な技術であるばかりでなく、複数の化合物から成る材料の組成分析技術として産業界(企業)でも広く用いられています。高輝度な放射光を用いた粉末X線回折では、通常は検出が困難な微量成分も短時間で測定できるため、機能性セラミックスの開発などに盛んに用いられています。今回は、BL19B2の大型デバイシェラーカメラで良質なデータを取得するための装置調整と測定の実習を予定しています。

BL19LXU:放射光時間分解X線回折法 --- 田中 義人・大隅 寛幸(理研/関学)、伊藤 基巳紀(理研)

放射光施設SPring-8では時間幅数十ピコ秒、SACLAでは数十フェムト秒の大強度パルスX線を利用できる。これらのパルスX線をストロボのように使う超高速時間分解X線回折法により、原子スケールでの物質の高速構造変化、すなわち原子の動きを観測することができる。この高速時間分解X線回折法の原理、フェムト秒パルスレーザーと放射光パルスX線の同期方法、観測方法など最新の技術について、SPring-8で実習の機会をもち、放射光を用いた超高速計測法について学ぶ。

BL22XU:高圧下における物質の状態変化 --- 綿貫 徹(JAEA)

日常では気体状態の物質も、1万気圧以上の高圧下では固体状態へと変化する。実習では、実際に1万気圧以上への加圧を体験し、放射光X線回折実験により希ガスが固体状態へと変化する様子を観察する。また、固化前の高密度流体状態のX線回折像と固化後の結晶状態の回折像の違いについて学び、固化前後において原子間距離がどのように変化していくかを決定する。

BL24XU:微小領域高精度X線回折 --- 津坂 佳幸(兵県大)

近年の半導体デバイスの構造は、高機能化、高集積化の要求にともなって、極めて微細かつ複雑になりつつある。一方で、それらのデバイス特性は、その結晶性に敏感であり、その評価には高精度X線回折が有用である。本実習では、高輝度光源を用いることで初めて可能となる、微小領域の結晶性を高精度で評価する手法の取得を目指す。具体的には、微小領域高精度回折実験のための光学系の形成と、その応用例としてシリコン基板の結晶性評価を行う。

BL25SU:高分解能軟X線光電子分光 --- 横谷 尚睦(岡山大)、村岡 祐治(岡山大)

光電子分光は、光電効果を利用して物質の電子状態を観測する手法です。価電子帯の測定から物性発現の起源や機構を理解する事ができるとともに、内殻準位測定からは構成元素の種類やその化学結合状態を知る事が出来ます。SPring-8から発生される高強度・高分解能軟X線は、実験室光源では難しかった微量元素の検出やその化学結合状態の観測を可能にしました。本実習では、不純物をドープしたダイヤモンド等を測定試料として用い、その中に含まれる微量不純物元素の同定や化学結合状態を調べる予定です。

BL26B1:単結晶回折(タンパク質) --- 上野 剛(理研)

BL26B2:単結晶回折(タンパク質) --- 熊坂 崇(JASRI/関学)

単結晶X線回折は、分子の立体構造を原子レベルで詳細に明らかに出来る強力な手法で、幅広い分野で利用されています。生命科学分野においてもタンパク質の構造から機能を明らかにする構造生物学研究の主要な手法として用いられていますが、分子量が大きいことや回折分解能が限られているために、さまざまな手法が開発され独自の発展を遂げています。本実習ではこの解析の一連の流れを習得するために、CCD検出器による結晶回折データ測定と位相決定、計算機を用いた分子構造の構築と精密化を体験していただきます。
BL26B1BL26B2は同一内容となっております。)

BL37XU:Optical system for x-ray image formation using Fresnel zone plate --- 寺田靖子(JASRI/関学),鈴木芳生(JASRI)

Fresnel zone plate is a widely-used optical element in the x-ray region. The zone plate is not only a beam-focusing tool, but also image-forming device, and many types of beam-shaping and beam-handling is realized by using zone plate optics. In the beamline practice, hard x-ray imaging microscopy experiments will be done for a typical example of Fresnel zone plate application.
(実習内容が変更になりました。2012年4月27日更新)

BL40B2:X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析 --- 八木直人(JASRI)

X線小角散乱法(SAXS)は、数nmから数μmの大きさを持つ物質(特に粒子)について、ダイレクトビーム近傍に観測される散乱X線の強度分布から、その構造を解析する手法です。これは高分子から粘土まであらゆる種類の物質に応用できる手法ですが、タンパク質溶液に適用することにより、“生きた状態”に近いタンパク質分子の構造を知ることができます。本実習ではタンパク質溶液からの散乱データ収集および分子構造予測に至る一連の解析を行い、タンパク質分子の構造-機能相関について考察します。測定手法はタンパク質以外の試料にも役立つと思います。

ニュースバル: 放射光を用いた半導体用EUVレジスト評価 --- 渡邊 健夫(兵県大)

極端紫外線(EUV)リソグラフィは、回路の線幅が22 nm以下を有する電子デバイス(メモリやMPU等)用半導体量産技術に使用されることになっている。実習では、ニュースバル放射光施設のBL09ビームラインに設置しているEUV干渉露光装置を用いてEUVレジストのパタン形成を進め、電子顕微鏡を用いて実際に形成したパタンを観察する等、最先端の半導体リソグラフィ技術を体験して頂くことを目的としている。