大型放射光施設 SPring-8

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2013年夏の学校 実習概要

18件の実習課題を予定しています。受講者の皆さんにはこの中から2テーマを選択していただきます。ただし、特定のテーマに希望者が集中した場合、ご希望に添えるとは限りませんのでご了承下さい。なお、装置故障等の不測の事態により予定が変更される場合があります。

BL01B1:"その場" XAFS計測 --- 宇留賀 朋哉・新田 清文・加藤 和男・伊奈 稔哲(JASRI)

XAFS法は、結晶構造を形成していない物質や、濃度が希薄な試料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、広い研究分野で利用されている。本実習では、まずXAFS計測を行うための試料調整と、放射光光学素子の位置調整について実習を行う。その後、触媒粒子の形成反応に対して、"その場"XAFS測定を行い、触媒粒子内でどのような構造変化や電子状態変化が起こるかを解析する。

BL02B1:単結晶構造解析の入門 --- 野上 由夫(岡山大学)杉本 邦久(JASRI)

構造解析は、結晶にX線を照射し、固体中の原子位置やその振動や微小移動をミクロに観察可能な、物性研究に不可欠な手法です。X線回折の原理、構造因子と結晶中の電荷密度の関係を示した後、BL02B1 に整備された4軸回折計と高感度イメージングプレート振動写真装置両方を見学しながら逆格子空間の実感的な紹介をおこないます。後半では低分子固体の単結晶とイメージングプレートを用いて高精度構造解析をおこないます。試料をセットし、放射光を用いて、結晶からのブラッグ反射を短時間で、 きわめて高いS/Nで多数収集し、コンピュータを用いて、固体中の原子配置決定までを体験してもらいます。

BL02B2:粉末X線回折法を用いたダイアモンドと黒鉛の構造観察 --- 金 廷恩・宋 哲昊(JASRI) 藤原 明比古(JASRI/北陸先端科学技術大学院大学)

物質の性質は、結晶構造、すなわち、構成原子の種類と配列によって決まります。例えば、ダイアモンドと黒鉛(グラファイト)は炭素の同素体ですが、ダイアモンドは透明で非常に硬いのに対して、黒鉛は黒色で劈開します(鉛筆で字が書けるのは劈開するためです)。実習では、ダイアモンドと黒鉛(鉛筆の芯)のX線回折プロファイルを測定し、測定したデータから結晶構造を求めます。その結果から、異なる特性の原因となる結晶構造の違いについて考察します。

BL07LSU:合金の合成と光電子分光分析 --- 原田 慈久・松田 巌(東京大学)

物質は光との相互作用によって様々な色を呈します。しかし色(うわべ)を見ても、その物質が何からできているか(本質)はわかりません。例えば、金と真鍮は同じ金色ですが、真鍮は2つの金属の混合物です。本実習では、物質の化学組成や、物性を支配する電子状態を直接調べることができる光電子分光法や軟X線吸収分光法を用いて、物質の色を決める要因について一緒に考察します。

BL13XU:高分解能マイクロX線回折による局所領域歪み測定 --- 木村滋(JASRI/岡山大学)

SPring-8のような第三世代放射光施設のアンジュレーター光を利用すると、サブミクロンサイズのX線集光ビームを入射ビームとして、高分解能X線回折を実施することが可能となります。本実習では、ゾーンプレートと呼ばれる集光素子を用いてサブミクロンサイズのX線集光ビームを形成し、そのビームを利用する高分解能マイクロX線回折について学びます。

BL14B1:X線吸収スペクトル入門 --- 松村 大樹(JAEA)

X線吸収スペクトル(XAFS)法は、X線の吸収率を測るといった単純な手法であるが、"元素選択性"や"局所構造敏感"といった、他の多くの手法には無い特徴があり、幅広い研究者が利用している。本実習では、原理を1つずつ確かめながら測定作業を行い、鉄酸化物といった単純物質のスペクトルを得て、頭で描く物質の構造や電子状態が、どのようにスペクトルに反映されるかを実感してもらう。

BL14B2:その場XAFS計測 --- 本間 徹生・平山 明香(JASRI)

XAFS法は、結晶構造を形成していない物質や、濃度が希薄な試料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、広い研究分野で利用されている。本実習では、まずXAFS計測を行うための試料調整と、放射光光学素子の位置調整について実習を行う。その後、触媒粒子の形成反応に対して、"その場"XAFS測定を行い、触媒粒子内でどのような構造変化や電子状態変化が起こるかを解析する予定である。

BL19B2:粉末X線回折 --- 大坂恵一(JASRI)廣沢一郎(JASRI/岡山大学)

粉末X線回折は、構造解析技術として物質科学研究での重要な技術であるばかりでなく、複数の化合物から成る材料の組成分析技術として産業界(企業)でも広く用いられています。高輝度な放射光を用いた粉末X線回折では、通常は検出が困難な微量成分も短時間で測定できるため、機能性セラミックスの開発などに盛んに用いられています。今回は、BL19B2の大型デバイシェラーカメラで良質なデータを取得するための装置調整と測定の実習を予定しています。

BL19LXU:放射光時間分解X線回折法 --- 田中 義人・大隅 寛幸(理研/関西学院大学)

放射光施設SPring-8では時間幅数十ピコ秒、SACLAでは十フェムト秒の大強度パルスX線を利用できる。これらのパルスX線を ストロボのように使う超高速時間分解X線回折法により、原子スケールでの物質の高速構造変化、すなわち原子の動きを観測することができる。この高速 時間分解X線回折 法の原理、フェムト秒パルスレーザーと放射光パルスX線の同期方法、観測方法など最新の技術について、SPring-8で実習の機会をもち、放射光を用いた超高速計測法について学ぶ。

BL23SU:放射光光電子分光法による物質の電子状態分析 --- 藤森 伸一(JAEA)

物質の性質は物質内の電子構造によって決定されています。光電子分光法は、光電効果を利用して物質の組成と電子状態を直接的に調べることができる実験手法です。高輝度放射光の利用によって角度分解光電子分光を行うことも可能となり、物質のバンド構造やフェルミ面を決定することもできます。実習では、光電子分光法による物質の組成分析、および角度分解光電子分光法による物質のバンド構造の測定について体験していただく予定です。

BL24XU:放射光X線計算機トモグラフィ(CT)法の基礎 --- 高野 秀和(兵庫県立大学)

医療用としても一般的に馴染みの深いX線CT法は、物体内部を非破壊で可視化できるために様々な分野で広く利用されています。大強度で可干渉性を持つ放射光X線を利用することで、試料の大きさは限られますが、通常の吸収コントラスト法では見えにくい構造を高分解能で迅速に取得できます。
本実習では、放射光を利用したCT法について、その原理、装置について学ぶと共に、試料準備から測定までを実際に行い、その特性について理解していく予定です。また、画像再構成や簡単なボリュームレンダリングについても実際に行い、3次元データの扱いについても学ぶ予定です。

BL25SU:高分解能軟X線光電子分光 --- 横谷 尚睦・村岡 祐治(岡山大学)

光電子分光は、光電効果を利用して物質の電子状態を観測する手法です。価電子帯の測定から物性発現の起源や機構を理解する事ができるとともに、内殻準位測定からは構成元素の種類やその化学結合状態を知る事が出来ます。SPring-8から発生される高強度・高分解能軟X線は、実験室光源では難しかった微量元素の検出やその化学結合状態の観測を可能にしました。本実習では、不純物をドープしたダイヤモンド等を測定試料として用い、その中に含まれる微量不純物元素の同定や化学結合状態を調べる予定です。

BL26B1:単結晶回折(タンパク質) --- 引間 孝明(理研)

BL26B2:単結晶回折(タンパク質) --- 熊坂 崇(JASRI/理研/関西学院大学)

単結晶X線回折は、分子の立体構造を原子レベルで詳細に明らかに出来る強力な手法で、幅広い分野で利用されています。生命科学分野においてもタンパク質の構造から機能を明らかにする構造生物学研究の主要な手法として用いられていますが、分子量が大きいことや回折分解能が限られているために、さまざまな手法が開発され独自の発展を遂げています。本実習ではこの解析の一連の流れを習得するために、CCD検出器による結晶回折データ測定と位相決定、計算機を用いた分子構造の構築と精密化を体験していただきます。
BL26B1BL26B2は同一内容となっております。)

BL37XU:フレネルゾーンプレートを使った結像顕微鏡 --- 寺田靖子(JASRI/関西学院大学)

Fresnel zone plate is a widely-used optical element in the x-ray region. The zone plate is not only a beam-focusing tool, but also image-forming device, and many types of beam-shaping and beam-handling is realized by using zone plate optics. In the beamline practice, hard x-ray imaging microscopy experiments will be done for a typical example of Fresnel zone plate application.

BL40B2:X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析 --- 八木 直人・関口 博史(JASRI)

X線小角散乱法(SAXS)は、数nmから数µmの大きさを持つ物質について、ダイレクトビーム近傍に観測される散乱X線の強度分布から、その構造を解析する手法です。これは高分子から粘土まであらゆる種類の物質に応用できる手法ですが、タンパク質溶液に適用することにより、"生きた状態"に近いタンパク質分子の構造を知ることができます。本実習ではタンパク質溶液からの散乱データ収集および分子構造予測に至る一連の解析を行い、タンパク質分子の構造-機能相関について考察します。SAXSの基礎と測定手法に関する知識は、タンパク質以外の試料にも役立つと思います。

BL46XU:X線反射率 --- 小金澤 智之(JASRI)

可視光と同じようにX線も屈折率が変化する界面においてX線の反射・全反射・屈折が起こります。これらの現象を利用した分析手法がX線反射率です。X線反射率では膜厚が数nmの薄膜の密度や膜厚を評価することができます。実習ではシリコン基板やガラス基板に成膜された薄膜の膜厚評価を通して、X線の反射・全反射現象を体験していただきます。

ニュースバル: 放射光を用いたX線微細加工プロセス --- 山口 明啓(兵庫県立大学)

近年、「高度情報通信」、「環境・エネルギー」、「医療・バイオ」等の研究分野において、集積化した微細機能デバイスの応用が急速に進んでおり、より微細で高アスペクト比(加工幅に対する高さの比)の構造体の作製が求められている。実習では、シンクロトロン放射光装置から発生する直進性の良いX線を用いて、数〜数百µmレベルの立体超精密加工を行い、光学素子、二次電池電極、ミリ波回路部品等の創製技術を体験して頂くことを目的としている。