大型放射光施設 SPring-8

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2022年夏の学校 実習概要

21件の実習課題を予定しています。受講者の皆さんにはこの中から2テーマを選択していただきます。ただし、特定のテーマに希望者が集中した場合、ご希望に添えるとは限りませんのでご了承下さい。また、装置故障等の不測の事態により予定が変更される場合がありますので、ご理解をお願い致します。

BL01B1:"その場" XAFS計測 --- 加藤 和男・伊奈 稔哲・片山 真祥(JASRI)
BL14B2:XAFS分析の基礎 --- 大渕 博宣・本間 徹生(JASRI)・佐藤 眞直(JASRI/岡山大学)

・本実習は2つのビームラインで行われます。実習内容は若干異なりますが、学習する手法は同じであるため、一緒にして希望を募ります。ビームラインを個別に選択して希望することはできませんが、もしいずれかのビームラインでの実習を強く希望する場合には、事務局へのコメント欄に理由を記述してください。

(BL01B1)
XAFS法は、結晶構造を形成していない物質や、濃度が希薄な試料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、広い研究分野で利用されている。本実習では、まずXAFS計測を行うための放射光光学素子の位置調整と、試料調製について実習を行う。その後、触媒粒子の形成反応に対して、"その場"XAFS測定を行い、触媒粒子内でどのような構造変化や電子状態変化が起こるかを解析する。

(BL14B2)
XAFS法は、結晶化していない物質や、濃度が希薄な材料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、触媒、電池、発光材料など様々な研究分野で利用されています。本実習では、XAFS計測を行うための試料調整と、その原理に忠実な透過法による測定およびフリーの解析ソフトを用いたスペクトル解析を行い、XAFS分析の基礎について学んで頂く予定です。

BL04B1:大容量高圧プレスと白色X線を用いたX線回折実験 --- 肥後 祐司(JASRI/茨城大学)・柿澤 翔・辻野 典秀(JASRI)

BL04B1は川井型大型プレスと放射光硬X線を利用して、高圧下での結晶構造変化や各種物性を測定するビームラインです。本実習では塩化カリウムの高圧相転移を約2万気圧の高圧下でその場観察します。高圧実験の手順のほか、白色X線を光源としたエネルギー分散型X線回折法の実習をします。

BL04B2:高エネルギーX線を用いたガラス・液体の構造解析 --- 尾原 幸治・山田 大貴・廣井 慧(JASRI)

最先端の機能性材料には、ガラスや液体が数多く存在します。ガラスや液体のような乱れた原子配列を解析するために、二体分布関数(Pair Distribution function, PDF)解析という手法が用いられます。本実習では、SPring-8の高エネルギーX線を用いたPDF解析によって、一見無秩序に思えるガラスの原子配列の解析を行います。

BL07LSU:タイコグラフィによる軟X線顕微イメージング --- 木村 隆志・松田 巌・原田 慈久(東京大学)

タイコグラフィは位相回復計算を利用した新しいタイプの顕微イメージング技術です。本実習では、BL07LSUのタイコグラフィ装置を用いて、可視光とは桁違いのX線顕微イメージングの威力を体験してもらいます。また、pythonを用いた簡単な位相回復計算のプログラミングにも挑戦する計画です。

BL08W:コンプトン散乱イメージング --- 辻 成希(JASRI)

コンプトン散乱イメージングは、コンプトン散乱を利用するため、軽元素にも感度を有しており、試料回転や再構成をすることなく簡単に断面図を得ることができるイメージング手法である。本実習では、コンプトン散乱の原理から解説し、実際の材料のイメージング測定を行い、三次元画像の解析を行います。

BL10XU:ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧X線回折実験 --- 河口 沙織・門林 宏和(JASRI)

圧力は温度とならび、物質の性質を変化させる最も基本的な物理パラメータの一つです。高圧力を印可された物質は構造を変化させ、時に常圧下では想像もつかないような新奇物性を示すこともあります。ダイヤモンドアンビルセル(DAC)は高圧発生装置のなかでも実験室で1万気圧を超える超高圧を容易に発生することが可能であり、非常に小型で汎用性が高くSPring-8でも様々な測定手法の下用いられています。本実習では、DACによる高圧その場X線回折実験を主軸としているBL10XUにおいて、DACを用いた高圧実験を通して、圧力をかけることでの物質の構造の変化を目とX線を使って実感していただきます。

BL11XU:自作の高速X線検出器でSPring-8のバンチ構造を観測しよう --- 三井 隆也・藤原 孝将(QST)

SPring-8は高輝度なX線を生成できる以外に、様々なタイミングパターンのX線パルスを生成できることも他の放射光施設にはない優れた特徴の一つです。本実習では、アバランシェフォトダイオード(APD)検出器という高速な検出器を作成していただき、放射光パルスを測定することでSPring-8の蓄積リング内にある電子の塊(バンチ)の構造を観測をします。

BL17SU:光電子顕微鏡 〜ナノ分解能で見る元素分布と磁気構造〜 --- 濵本 諭(理研)・大河内 拓雄(JASRI)

光電子顕微鏡(PEEM)は、ナノ〜ミクロンのスケールで、物質表面の電子状態や磁気状態について2次元的に調べることが出来る装置です。エネルギー・偏光可変の軟X線放射光と組み合わせることで元素毎に磁気構造を調べることが可能で、先端物質科学の研究分野に広く活用されています。本実習では、標準試料を用いて PEEM測定の基礎を習得するとともに、応用例として単結晶試料を用いた磁区観察を体験して頂きます。

BL19B2:粉末X線回折 --- 大坂 恵一(JASRI)・佐藤 眞直(JASRI/岡山大学)

粉末X線回折は、構造解析技術として物質科学研究での重要な技術であるばかりでなく、複数の化合物から成る材料の組成分析技術として産業界(企業)でも広く用いられています。高輝度な放射光を用いた粉末X線回折では、通常は検出が困難な微量成分も短時間で測定できるため、機能性セラミックスの開発などに盛んに用いられています。今回は、BL19B2のハイスループット粉末回折計で良質なデータを取得するための装置調整と測定の実習を予定しています。

BL23SU:放射光光電子分光法による物質の電子状態分析 --- 芝田 悟朗・角田 一樹・藤森 伸一(JAEA)

物質の性質は物質内の電子構造によって決定されています。光電子分光法は、光電効果を利用して物質の組成と電子状態を直接的に調べることができる実験手法です。高輝度放射光の利用によって角度分解光電子分光を行うことも可能となり、 物質のバンド構造やフェルミ面を決定することもできます。実習では、光電子分光法による物質の組成分析について体験していただく予定です。

BL25SU:軟X線光電子分光と光電子ホログラフィー --- 松下 智裕・橋本 由介(JASRI/奈良先端科学技術大学院大学)・小谷 佳範(JASRI)

光電子分光は、光電効果を利用して物質の電子状態を観測する手法です。内殻準位から励起される光電子をエネルギー分析して得られる一次元スペクトルから、構成元素の種類やその化学結合状態を知る事が出来ます。近年、光電子の二次元角度分布(光電子ホログラム)から励起原子周囲の三次元原子配列を再生する光電子ホログラフィー解析技術が発展してきました。本実習では阻止電場型エネルギー分析器(RFA)を用いて光電子ホログラムを測定し、実空間データに再生する一連の流れを体験していただきます。

BL31LEP:GeV光ビームの生成と粒子・反粒子対の測定 --- 與曽井 優(大阪大学)・村松 憲仁・時安 敦史(東北大学)

GeV光ビームは、X線に比べて10万倍程度高いエネルギーを持ち、素粒子・原子核の研究に利用されています。本実習では、レーザー光をSPring-8蓄積電子と逆コンプトン散乱させてエネルギー増幅し、GeV光ビームの生成を確認します。また、GeV光ビームと物質の相互作用を理解するため、スイープ・マグネット等を使って荷電粒子を偏向させ、粒子・反粒子対(電子と陽電子)の生成を測定します。実習を通して、簡単な電磁気学および量子力学、初歩の相対論にも触れながら、極微の世界を体験します。

BL39XU:高エネルギー分解能蛍光X線検出X線吸収分光法による電子状態解析 --- 河村 直己・東 晃太朗(JASRI)

X線吸収分光(XAS)法は、元素・軌道選択的な電子状態を調べることができる有用な手法の1つですが、吸収過程で生じる内殻正孔の寿命の影響でそのエネルギー分解能には限界があることが知られています。一方、X線の吸収過程において生じる蛍光X線を高エネルギー分解能で分析するX線発光分光(XES)を利用すると、従来のXASで制限を受けていた内殻正孔の寿命幅の効果を抑制でき、XASの微細構造の明瞭化による微小変化の観測が可能となります。実習では、XESおよびHERFD-XASの原理とその測定方法について学びます。

BL40B2:小角X線散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析 --- 八木 直人・関口 博史(JASRI)

小角X線散乱法(SAXS)は、数nmから数µmの大きさや周期を持つ物質について、ダイレクトビーム近傍に観測される散乱X線の強度分布から、その構造を解析する手法です。これは高分子から粘土まであらゆる種類の物質に応用できる手法ですが、タンパク質溶液に適用することにより、“生きた状態”に近いタンパク質分子の構造を知ることができます。本実習ではタンパク質溶液からの散乱データ収集および分子構造予測に至る一連の解析を行い、タンパク質分子の構造-機能相関について考察します。SAXSの基礎と測定手法に関する知識は、タンパク質以外の試料にも役立つと思います。

BL41XU:単結晶回折(タンパク質) --- 熊坂 崇(JASRI/関西学院大学)・長谷川 和也・坂井 直樹・河村 高志・水野 伸宏(JASRI)・山口 峻英(茨城大学)
BL44XU:単結晶回折(タンパク質) --- 中川 敦史・山下 栄樹・櫻井 啓介(大阪大学)・山口 峻英(茨城大学)

・本実習は2つのビームラインで行われます。実習内容は同じです。ビームラインを個別に選択して希望することはできませんが、もしいずれかのビームラインでの実習を強く希望する場合には、事務局へのコメント欄に理由を記述してください。

単結晶X線回折は、分子の立体構造を原子レベルで詳細に明らかに出来る強力な手法で、幅広い分野で利用されています。生命科学分野においてもタンパク質の構造から機能を明らかにする構造生物学研究の主要な手法として用いられていますが、分子量が大きいことや回折分解能が限られているために、さまざまな手法が開発され独自の発展を遂げています。本実習ではこの解析の一連の流れを習得するために、二次元検出器による結晶回折データ測定とSAD法による位相決定、計算機を用いた分子構造の構築と精密化を体験していただきます。

BL43IR:赤外顕微分光による組成分布と電子状態の解析 --- 森脇 太郎・池本 夕佳(JASRI)

SPring-8はX線から赤外線まで広い帯域の光を利用することができますが、このうち、波長が最も長い赤外線を利用した分光実験を行います。赤外分光では、物質の組成や結合状態・電子状態に関する情報が得られます。赤外線領域の放射光は高輝度であることが特徴で、湿度・温度など様々な外部環境を制御した状態での顕微赤外分光が行われています。本実習では、実験室装置を利用して、毛髪などの身近な素材のスペクトルを測定します。また、測定原理の説明と、加湿条件下の利用例を紹介します。

BL43LXU:X線非弾性散乱による原子振動測定 --- 石川 大介・福井 宏之(JASRI)

エネルギースケールがmeVである原子振動を、エネルギーがkeVのX線を用いて測定する手法がX線非弾性散乱です。このシグナルは他のX線散乱に比べて非常に弱いため、我が国においてはSPring-8でのみ測定可能となっています。実習では標準的な試料に対する測定を通じて、原子振動から何が分かるかや、原子振動からの微弱信号を測定するために長さ10メートルという巨大な装置が必要な理由について学びます。

BL44B2:全散乱法による材料構造解析 --- 加藤 健一(理研)

実材料の結晶性や形態は多種多様である。そのような材料の構造解析に適した実験手法の一つとして、ブラッグ反射や散漫散乱、小角散乱を含む全ての干渉性散乱を"on an equal basis"計測する全散乱法がある。実習では、その原理と応用について実際に装置に触れながら理解を深める。

BL46XU:硬X線光電子分光 --- 安野 聡・Seo Okkyun(JASRI)・佐藤 眞直(JASRI/岡山大学)

硬X線光電子分光は従来の光電子分光に比べて数倍以上大きい分析深さを有し、試料深部や界面における化学結合状態・電子状態を非破壊で調べることができる分析手法です。近年は電池材料や半導体を中心として、幅広い分野で利用が進んでいます。実習では様々な薄膜試料について、測定→元素の同定→化学結合状態の推定→試料構造の考察までの一連の分析の流れを体験して頂く予定です。