水の量子効果
問い合わせ番号
SOL-0000001287
ビームライン
BL04B2(高エネルギーX線回折)
学術利用キーワード
A. 試料 | 無機材料 |
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B. 試料詳細 | 液体・融体 |
C. 手法 | X線回折 |
D. 手法の詳細 | 広角散乱 |
E. 付加的測定条件 | 室温 |
F. エネルギー領域 | X線(>40 keV) |
G. 目的・欲しい情報 | 構造解析 |
産業利用キーワード
階層1 | 工業材料, その他 |
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階層2 | |
階層3 | |
階層4 | 液体・非晶質構造, 局所構造 |
階層5 | 回折 |
分類
M20.20 中角散乱
利用事例本文
高エネルギーX線回折法は液体のブロードな回折パターンを調べることのできる強力な手法です。この手法を用いることで、液体構造の小さな差を測定することができます。この方法では、SPring-8の強力なX線により水の微弱な回折データを正確に測定できます。図に示すのは、水の同位体置換が構造に及ぼす効果を調べたもので、H2OとD2O, H218OとH216Oの構造の差を示したものです。こういった実験はSPring-8のような施設が出来るまでは不可能であり、これまでコンピューターシミュレーションを用いて行われてきました。この結果から、H2OとD2Oの構造の差はコンピューターシミュレーションは正しく予測できているが、
H218OとH216Oの構造の差についてはコンピューターシミュレーションは過大に予測していることがわかりました。また、これらの構造の差が出るのは、図に示したように、水の並進運動(translation)、および束縛回転振動(libration)が同位体置換の影響で変化することによることが予測されます。
図 水の同位体置換による構造の差と分子の並進運動、束縛回転振動の変化
[ R. Hart, C. Benmore, J. Neuefeind, S. Kohara, B. Tomberli and P. Egelstaff, Physical Review Letters 94, 047801 (2005), Fig. 1,
©2005 American Physical Society ]
画像ファイルの出典
原著論文/解説記事
誌名
Phys. Rev. Lett., 94, 047801, (2005).
図番号
1
測定手法
高エネルギーX線回折法は非晶質物質のブロードな回折パターンを調べることのできる強力な手法です。得られたデータを解析することにより、非晶質物質中の原子間距離、原子の配位数を求めることができます。またEXAFSと異なり遠距離の相関まで測定できることから、非晶質物質に存在する秩序を調べることができます。近年では、中性子回折、実験データに基づいたコンピュータシミュレーションを併用することに、あいまいな非晶質物質の構造が明らかになりつつあります。
測定は、非晶質物質用二軸回折計を用い透過法で行いました。試料により回折されたX線はエネルギー分解能の良いGe半導体検出器を用いてステップスキャン法で行いました(図)。
図 非晶質物質用二軸回折計
(a) イオンチャンバー、(b) 入射スリット、(c) 試料ステージ、(d) 真空チャンバー
(e) ビームストップ、(f) 受光スリット、(g) 2θ軸、(h) Ge半導体検出器
[ S. Kohara, Y. Ohishi, M. Takata, Y. Yoneda and K. Suzuya, 日本結晶学会誌 47, 123-129 (2005), Fig. 1,
©2005 日本結晶学会 ]
画像ファイルの出典
原著論文/解説記事
誌名
日本結晶学会誌、47、123-129(2005)
図番号
測定準備に必要なおおよその時間
4 時間
測定装置
装置名 | 目的 | 性能 |
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二軸回折計 | 回折データの取得 | 62keV |
参考文献
文献名 |
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X線構造解析—原子の配列を決める 材料学シリーズ 早稲田 嘉夫, 松原 英一郎 |
関連する手法
アンケート
SPring-8だからできた測定。他の施設では不可能もしくは難しい
本ビームラインの主力装置を使っている
測定の難易度
熟練が必要
データ解析の難易度
熟練が必要
図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数
4~9シフト