スカンジウムの圧力誘起結晶構造相転移
問い合わせ番号
SOL-0000001323
ビームライン
BL10XU(高圧構造物性)
学術利用キーワード
A. 試料 | 無機材料 |
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B. 試料詳細 | 金属・合金 |
C. 手法 | X線回折 |
D. 手法の詳細 | 粉末結晶構造解析 |
E. 付加的測定条件 | マイクロビーム(>10μm), 高圧(DAC) |
F. エネルギー領域 | X線(4~40 keV) |
G. 目的・欲しい情報 | 結晶構造, 相転移 |
産業利用キーワード
階層1 | 工業材料, その他 |
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階層2 | |
階層3 | |
階層4 | 密度, 結晶構造, 電子状態, 結晶弾性率 |
階層5 | 回折 |
分類
A80.20 金属・構造材料, M10.20 粉末結晶回折
利用事例本文
本事例では希土類金属のスカンジウム(Sc)について、300GPa(1GPaは約1万気圧)に及ぶ超高圧下でのX線回折実験を行い、その結晶構造の圧力変化を観測しました。DACを用いた場合、200GPa越す高圧発生領域は15ミクロン程度ですが、BL10XUの集光された高輝度X線を使用すると明瞭なX線回折像を得ることができます。この実験の結果、240GPa付近での新しい圧力誘起結晶構造相転移が発見されました。この相はSc-V相と呼ばれ、図に示すような6回螺旋軸を持つ結晶構造であることが明らかになりました(Y. Akahama et al., PRL, 94(2005)195503)。
図 Sc-Vの結晶構造と原子辺りの体積変化
[ Y. Akahama, H. Fujihisa and H. Kawamura, Physical Review Letters 94, 195503 (2005), Fig. 3, 4,
©2005 American Physical Society ]
画像ファイルの出典
原著論文/解説記事
誌名
PRL, 94(2005)195503
図番号
3,4
測定手法
ダイヤモンドアンヴィルセル(DAC)は、10-3mm以下の試料を金属ガスケットと共にダイヤモンドで挟み込んで強く押し込むことによって高圧発生させる装置です。ダイヤモンドがX線(15keV以上)に対してほぼ透明なため、試料に対して超高圧下でのX線回折測定が可能です。しかし、発生圧力を高くすればするほど試料体積が微小になるため、高輝度のX線源の使用が不可欠となります。BL10XUでは高輝度の放射光X線をさらに集光した結果、超高圧条件や軽元素、さらに温度環境を変化させてのX線回折実験が可能になりました。また、高精度の強度解析が可能となり、高圧下に置かれた試料の精密な結晶構造解析が行われるようになりました。
図 ダイヤモンドアンヴィルセル(DAC)の構造と各種DACの写真
画像ファイルの出典
BL評価プレゼン資料
測定準備に必要なおおよその時間
4 時間
測定装置
装置名 | 目的 | 性能 |
---|---|---|
DAC-X線回折装置 | 超高圧下でのX線回折測定 | <300GPaでのX線回折測定 |
参考文献
関連する手法
粉末X線回折、単結晶X線回折、中性子回折
アンケート
SPring-8だからできた測定。他の施設では不可能もしくは難しい
本ビームラインの主力装置を使っている
測定の難易度
熟練が必要
データ解析の難易度
中程度
図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数
10シフト以上