偏光変調法によるX線磁気円二色性測定
問い合わせ番号
SOL-0000001606
ビームライン
BL39XU(X線吸収・発光分光)
学術利用キーワード
A. 試料 | 計測法、装置に関する研究 |
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B. 試料詳細 | 磁性体 |
C. 手法 | 吸収、及びその二次過程 |
D. 手法の詳細 | MCD, LD |
E. 付加的測定条件 | 偏光(円、楕円), 磁場(< 2 T), 磁場(> 2 T) |
F. エネルギー領域 | X線(4~40 keV) |
G. 目的・欲しい情報 | スピン・磁性構造 |
産業利用キーワード
階層1 | 記憶装置 |
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階層2 | HD、MO |
階層3 | 磁性層, 磁気ヘッド, スピンバルブ膜 |
階層4 | 磁化, 磁気異方性, 界面磁気構造 |
階層5 | XMCD |
分類
A80.14 磁性材料, M40.30 磁気吸収
利用事例本文
偏光変調分光法は、X線磁気円二色性 (X-ray magnetic circular dichroism = XMCD) スペクトルをきわめて高いS/N比で測定することのできる高感度な測定手法です。この方法は、3d遷移金属元素、希土類元素、5d貴金属元素を含む磁性体試料のXMCD測定に適用でき、磁性に関する電子状態の情報を得ることができます。
図に示すのは、標準試料である純鉄のフォイル (厚さ5ミクロン)について測定したFe K 吸収端でのXMCDスペクトルです。偏光変調法を用いることにより、従来の静的な方法と比べてS/N比が10倍以上改善されています。偏光変調法では1点につき数秒の積算時間で10-5台の統計精度のXMCD信号が得られています。
図. 純鉄フォイルのX線磁気円二色性 (XMCD) スペクトル。偏光変調法 (赤) を使った測定では、
静的な方法である偏光反転法 (青) と比べてS/N比が大きく改善されています。
画像ファイルの出典
BL評価レポート
ページ
p. 31
測定手法
この手法は、可視や赤外の領域で広く使われている変調分光法をX線の領域に拡張したものです。測定の方法は、ダイヤモンド移相子で高速に (30 Hz) 円偏光の極性を切り替え、その周波数に同期した試料の吸収係数の変化をロックインアンプで位相敏感検出するというものです。その結果、非常に高精度な XMCDスペクトルを短い測定時間で得ることができます。試料の吸収係数に対して10-4程度の微弱なXMCD信号が、わずか10 秒の積算時間でしかも高いS/N比で得られます。さらに、この手法では試料には任意の磁場を加えることができます。そのため、外部磁場による磁化過程でのXMCD測定 (=元素別磁化測定) や、超伝導マグネットを用いた強磁場下でのXMCD測定を行うことができます。
図. 偏光変調法によるXMCD測定装置のダイヤグラム
画像ファイルの出典
BL評価レポート
ページ
p. 29
測定準備に必要なおおよその時間
3 時間
測定装置
装置名 | 目的 | 性能 |
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ダイヤモンドX線移相子 | 円偏光X線の生成、左右円偏光の高速切り替え | X線エネルギー 6-16 keV, 最高切り替え周波数 100 Hz |
XMCD測定用電磁石およびクライオスタット | 磁気円二色性スペクトルの測定 | 磁場 ±2 T、試料温度20~300 K |
10 T 超伝導マグネット | 強磁場下でのX線磁気円二色性スペクトルの測定 | 磁場 ±10 T、試料温度1.7~300 K |
偏光変調XMCD測定 | 高精度・高感度なX線磁気円二色性スペクトルの測定 | 0.1%以下のX線磁気円二色性シグナルの検出が可能 |
参考文献
文献名 |
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M. Suzuki, N. Kawamura, M. Mizumaki, A. Urata, H. Maruyama, S. Goto, and T. Ishikawa, Jpn. J. Appl. Phys. 37, L1488 (1998). |
鈴木基寛: 放射光 13, 12 (2000). |
関連する手法
変調分光法, XMCD, X線磁気円二色性, VSM磁化測定, SQUID磁化測定, 磁気Kerr測定
アンケート
SPring-8だからできた測定。他の施設では不可能もしくは難しい
本ビームラインの主力装置を使っている
同種実験は本ビームラインの課題の30%以上を占めている
測定の難易度
初心者でもOK
データ解析の難易度
初心者でもOK
図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数
1シフト以下