大型放射光施設 SPring-8

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パーソナルツール
 

水溶液表面の全反射偏光XAFS分光

  • Spring8ならでは

問い合わせ番号

SOL-0000001609

ビームライン

BL39XU(X線吸収・発光分光)

学術利用キーワード

A. 試料 原子・分子・ラジカル
B. 試料詳細 低分子有機材料, 溶液, 膜, イオン, ラジカル, 蛋白質, 医薬品, 環境関連物質
C. 手法 吸収、及びその二次過程, 蛍光X線
D. 手法の詳細 反射、屈折, XAFS, EXAFS, XANES
E. 付加的測定条件 偏光(直線), 表面, 室温
F. エネルギー領域 X線(4~40 keV)
G. 目的・欲しい情報 化学状態, 結合状態, 分子構造, 局所構造, 電子状態、バンド構造

産業利用キーワード

階層1 環境, 化学製品, 工業材料
階層2 触媒, 環境物質, 日用品(シャンプー,化粧品,歯磨き粉など)
階層3 配向膜, タンパク質
階層4 原子間距離, 局所構造, 電子状態, 配向, 価数, 化学状態
階層5 XAFS

分類

A40.40 表面・界面化学, A60.20 環境物質, A80.34 触媒化学, A80.40 環境材料, M40.10 XAFS

利用事例本文

全反射偏光XAFS測定法は水溶液表面にある分子中の特定の元素の化学状態や局所構造を調べることのできるユニークな手法です。この手法を用いることで、空気と水溶液との界面における特定の原子(イオン)の結合状態や配位構造を決定することができます。SPring-8 BL39XU では、硬X線領域(5-16V)の水平面内または垂直面内に偏光した直線X線を利用できるため、CrからRb(K-吸収端)、CsからPb(L-吸収端)を含む化合物について調べることができます。

図に示すのは、5,10,15,20-tetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrinato zinc(II) (ZnTPPC) 単分子膜について測定した異なる偏光状態におけるZn K-吸収端での吸収(XANES)スペクトルです。この結果から、この単分子膜中のZnまわりの局所構造が決定され、ZnTPPC分子はporphyrinリングの4つのZn-N結合が四角形の面内構造をとり、その面は空気と水溶液界面に平行な配置をとることがわかりました。

 

図.ZnTPPCにおけるZn K-吸収端での(a)水平偏光および(b)垂直偏光を用いた場合の全反射XAFSスペクトル。

[ H. Tanida, H. Nagatani and I. Watanabe, The Journal of Chemical Physics 118, 10369-10371 (2003), Fig. 3,
©2003 American Institute of Physics ]

 

画像ファイルの出典

原著論文/解説記事

誌名

H. Tanida et al., J. Chem. Phys. 118, 10369 (2003).

図番号

Fig. 3

測定手法

偏光XAFSスペクトルは、水平面内または垂直面内に直線偏光したX線による吸収量をエネルギーの関数として測定することによって得られます。放射光は特殊な場合を除いて、その入射光は水平面内に偏光した直線偏光です。固体などの試料に対する偏光XAFSスペクトルは、試料の向きを変更させることによって得ることはできますが、水溶液などの液体に対しては垂直方向に立てることはできません。したがって、入射X線の偏光状態を変える必要があります。SPring-8 BL39XUでは、ダイヤモンド移相子によって偏光XAFS測定を容易に行うことができます。

この例では、水溶液表面の単分子膜に対して、配置を変更することなく異なる二種類の偏光X線によるXAFSスペクトルが得られます。

 

図.全反射偏光XAFSスペクトル測定の実験配置図。

[ H. Tanida, H. Nagatani and I. Watanabe, The Journal of Chemical Physics 118, 10369-10371 (2003), Fig. 2,
©2003 American Institute of Physics ]

 

画像ファイルの出典

原著論文/解説記事

誌名

H. Tanida et al., J. Chem. Phys. 118, 10369 (2003).

図番号

Fig. 2

測定準備に必要なおおよその時間

12 時間

測定装置

装置名 目的 性能
全反射XAFS測定装置 液体等に対する全反射XAFS測定 全反射用振り下げミラー、液面モニター、19素子Ge-SSDなど

参考文献

文献名
H. Tanida, H. Nagatani, and I. Watanabe, J. Chem. Phys. 118, 10369 (2003).

関連する手法

EXAFS/XAFS分光, X線回折

アンケート

SPring-8だからできた測定。他の施設では不可能もしくは難しい
ユーザー持ち込み装置を使った

測定の難易度

中程度

データ解析の難易度

中程度

図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数

4~9シフト

最終変更日 2024-07-02 16:05