SPring-8放射光で半導体ウエハの微量元素を世界最高感度で検出
問い合わせ番号
SOL-0000001627
ビームライン
BL40XU(SAXS ID)
学術利用キーワード
A. 試料 | 無機材料, 有機材料, 計測法、装置に関する研究 |
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B. 試料詳細 | 環境関連物質 |
C. 手法 | 蛍光X線 |
D. 手法の詳細 | 微量元素分析 |
E. 付加的測定条件 | |
F. エネルギー領域 | X線(4~40 keV) |
G. 目的・欲しい情報 | 元素分析(微量) |
産業利用キーワード
階層1 | 半導体, その他 |
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階層2 | シリコン系半導体 |
階層3 | ゲート絶縁膜, 層間絶縁膜, 容量膜, 配線, SOI,基板, TFT |
階層4 | 化学状態, 元素分布 |
階層5 |
分類
A80.90 その他
利用事例本文
開発した分析法では、SPring-8ビームライン40XUのきわめて高輝度の放射光(光子1500兆個/秒)に最適な、高エネルギー分解能・低バックグラウンドの波長分散全反射蛍光X線分析装置を産業用専用ビームライン建設利用共同体のもとで製作しました。さらに検出感度向上のため、ウエハ表面をフッ酸で溶かし、広い面積の微量金属元素をX線の照射範囲に集める濃縮法を開発しました。 以上の技術を適用し、各種金属元素を微量添加した標準ウエハにより検出感度を評価した結果、
- 従来より約100倍高感度の、ウエハ表面100μm2あたり銅4個、ニッケル4個という、世界最高の検出感度を達成しました。
- 無濃縮サンプルでも、銅400個、鉄500個、ニッケル600個という高検出感度を得ました。
開発した技術を実際の製造プロセスのウエハ表面の元素分析に適用することで、従来、不可能であった極微量元素の検出が可能になり、素子性能の向上や歩留まり向上が可能になります。そして、2004年ころに予定されているゲート幅50nmの次世代半導体デバイスの量産技術にも対応できるめどがつきました。
本実験で使用した装置を用いたLLDの結果を下表にまとめます。
画像ファイルの出典
BL評価プレゼン資料
測定手法
測定装置を写真で示します。近年の半導体プロセスでは、多種類の金属材料が使われており、プロセスに無関係な極微量の残留元素が原因で製造欠陥を生む場合があります。たとえば、シリコンウエハに微量の鉄元素が付着するとゲート酸化膜に絶縁不良が生じます。また、銅元素が残留すると、熱処理後にウエハ表面に微小欠陥が生じ、動作不良を起こします。半導体素子の微細化とともに、これらの残留元素をできるだけ少なくすることは、歩留まり向上や素子性能向上のために重要な技術と なっています。ゲート幅50nmの次世代MOSデバイス製造において、ウエハ表面の金属元素を管理するためには、ウエハ表面10ミクロン角(100μm2)に 付着する金属原子1000個以下でも検出できる感度が必要です。また、電気特性と微量元素の詳細な関係を調べるためには、100個以下の感度が必要とされています。このウエハ表面の極微量の元素を分析する方法として、化学分析法と物理分析法があります。化学分析法では、ウエハ表面をフッ酸で溶かし、回収した溶液を分析することで、最高で銅原子500個程度の感度を得ることができます。しかし、前処理に時間がかかるため、分析に8時間ほどかかるといった欠点がありました。一方、物理分析法である全反射蛍光X線分析法の 検出感度は3000個程度であり、今後の開発に必要な検出感度が得られませんでした。そのため、蛍光X線の強さが試料照射X線の強度に比例することを利用し、放射光の強いX線を使って、検出感度を向上させるという方法が考えられますが、やはり市販の検出器の性能が不十分なため、十分な感度は期待できませんでした。
画像ファイルの出典
BL評価プレゼン資料
測定準備に必要なおおよその時間
24 時間
測定装置
参考文献
関連する手法
アンケート
SPring-8だからできた測定。他の施設では不可能もしくは難しい
ユーザー持ち込み装置を使った
測定の難易度
熟練が必要
データ解析の難易度
中程度
図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数
10シフト以上