大型放射光施設 SPring-8

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パーソナルツール
 

ラット由来ヘムオキシゲナーゼ-1のセレノメチオニンによるMAD測定

問い合わせ番号

SOL-0000001633

ビームライン

BL41XU(生体高分子結晶解析 I)

学術利用キーワード

A. 試料 生物・医学
B. 試料詳細 生体高分子、結晶, 蛋白質, 医薬品
C. 手法 X線回折
D. 手法の詳細 単結晶構造解析, MAD
E. 付加的測定条件 低温(〜液体窒素)
F. エネルギー領域 X線(4~40 keV)
G. 目的・欲しい情報 化学状態, 結合状態, 構造解析, 機能構造相関

産業利用キーワード

階層1 製薬
階層2 ドラッグデザイン, 製剤
階層3 タンパク質, 薬物
階層4 結晶構造, 局所構造
階層5 回折, X線散乱

分類

M10.10 単結晶回折

利用事例本文

多波長異常分散(MAD)法は、結晶を構成する分子が重原子を有している場合、1つの試料結晶から位相情報を得ることの出来るとても強力な手法です。

通常、タンパク質分子は炭素・窒素や酸素などの軽原子ばかりで構成されているので、MAD法を適用するにあたっては、重原子をタンパク質分子に後から添加する必要があります。しかし、目的タンパク質を「セレノメチオニン化」タンパク質として得ることが出来れば、タンパク質分子中にセレンを先天的に含むため重原子の添加作業がいらず、大幅な解析効率の向上に繋がります。

本事例では、セレノメチオニン化したラット由来ヘムオキシゲナーゼ-1の立体構造を、セレンを用いたMAD測定によって決定しました。この酵素はタンパク質1分子中に8残基のメチオニンを含むのですが、その全てをセレノメチオニン化したものは結晶化条件の安定性などに問題があったため、4残基は別アミノ酸に置換して、残り4残基のメチオニンをセレノメチオニン化してあります。

この結果から、ヒト由来の同酵素との基質反応性の違いなどを立体構造に基づいて議論することが可能となりました(図1)。

 
 

図1. ヘムオキシゲナーゼ-1(ラット由来:緑、ヒト由来の閉状態:青、赤:ヒト由来の開状態)のステレオ図

[ M. Sugishima, Y. Omata, Y. Kakuta, H. Sakamoto, M. Noguchi and K. Fukuyama, FEBS Letters 471, 61-66 (2000), Fig. 4,
©2000 Federation of European Biochemical Societies ]

 

画像ファイルの出典

原著論文/解説記事

誌名

M. Sugishima, et al., FEBS Lett. 471(1), 61-66, Apr. 7 (2000)

図番号

4

測定手法

多波長異常分散(MAD)法は、結晶を構成する分子に結合した重原子のX線吸収端近傍の複数の波長でX線回折像を測定することです。これらの回折像の比較・解析から結晶の位相情報を求めて、分子の立体構造を得ることが出来ます。

しかし、タンパク質分子は炭素・窒素や酸素などの軽原子ばかりで構成されていることがほとんどで、MAD法に必要な重原子は試料タンパク質を結晶化した後に人為的に付加する必要があります。タンパク質分子にうまく結合する重原子種の探索や、付加条件の検討などに多くの時間と労力が費やされます。

タンパク質を構成するアミノ酸の1つに「メチオニン」というものがあります。また、その硫黄原子をセレンに置換した「セレノメチオニン」というものを化学合成することが出来ます。目的のタンパク質を発現させる宿主にメチオニンを生合成できない大腸菌を選び、その生育培地からメチオニンを除去した上で代わりにセレノメチオニンを加えておくと、目的のタンパク質を含む、この大腸菌の発現する全てのタンパク質中のメチオニンがセレノメチオニンに置換されます。この「セレノメチオニン化」タンパク質は先天的にセレンという重原子を含んでいるので、MAD法を適用する際に重原子種の探索や付加条件の検討といったステップは不必要になります。

画像ファイルの出典

図なし

測定準備に必要なおおよその時間

0 時間

測定装置

装置名 目的 性能
タンパク質結晶用回折装置 X線回折像の記録
ペルチェ冷却型Si-PINフォトダイオード X線吸収スペクトルの測定

参考文献

文献名
M. Sugishima, et al., FEBS Lett. 471(1), 61-66, Apr. 7 (2000)

関連する手法

アンケート

本ビームラインの主力装置を使っている
同種実験は本ビームラインの課題の30%以上を占めている

測定の難易度

中程度

データ解析の難易度

中程度

図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数

2~3シフト

最終変更日 2022-05-06 15:34