大型放射光施設 SPring-8

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フロントエンドチーム

ミッション

光源と光学系とのインターフェース的役割を果たすフロントエンドには、メインビームシャッター、スリット、ベリリウム窓等、ユーザの安全、安定 した実験の遂行に不可欠な機器が数多く設置されています。しかし、これらの機器のほとんどは、普段立ち入れず、また過酷な放射線環境下にあるマシン収納部 内にあります。このため、ユーザ実験に支障を来さない安定な運転を継続するために、機器の使用限界や寿命に関する検討も含めた保守・改良を行うことが重要 な使命となっています。
一方、SPring-8の挿入光源は、標準型のものでもトータルパワー13.7kW、最大パワー密度550kW/mrad2(長直線部のBL43LXUでは各々約50 kWと3 MW/mrad2)に達する強烈なパワーを放射し、さらにビーム発散角は極めて小さくなっています。従って、フロントエンドに課せられた技術的課題は、主として、高出力放射パワーの処理技術と、高精度な放射光位置の連続モニタリング技術の確立にあります。
 

活動内容

高出力放射パワーの処理については、一般的に、受光部を光軸に対して傾けて、パワーを面内に分散させる「斜入射技術」が基本となっています。フロントエンドチームでは、これに加えて、いち早く、冷却面での伝熱特性向上のためのワイヤコイル挿入技術のR&Dに取り組みました。その結果、適 切な圧力損失のもとで、熱伝達係数を素管に比べて4倍以上高めることに成功しました。これらの技術を組み合わせて、概算で光軸方向1mあたり約10kWの パワーを処理できます。さらに、光源の更なる高出力化に対応するため、「体積発熱型技術」(low-Z材料を採用することにより、パワーを面内だけでなく 深さ方向にも分散させる)の開発や、一つの機器に複数の機能を持たせた「一体型マスク・アブソーバ」の実用化も行っています。これらの技術開発には、いず れも3次元有限要素法「ANSYS」を用いた、熱および熱応力解析を駆使しています。最近では、実験と弾塑性解析を組み合わせてアルミナ分散強化銅(GlidCop)製高熱負荷機器の疲労寿命を因子2の精度で予測する手法が確立されました。この手法に則り、他の高熱負荷機器の熱的限界調査を行うと同時に、新しい高熱負荷技術の開発にも取り組んでいます。
一方、光位置のモニタリング技術については、各フロントエンドに光電子放出型の光位置モニターが設置されており、電子回路及び光ケーブルによる アナログ信号の伝送等の信号処理系などを含んだ光ビーム診断システムが稼動しています。このタイプの光位置モニターは、原理的にGap値の影響を受けるタイプで すが、検出部の構造をSPring-8の光源に最適化させることにより、位置分解能(0.5~1μm以下)、蓄積電流値依存性(1μm以下)、フィリング パターン依存性(1.2~3.5μm以下)、安定性(3~5μm以下/日)において優れた動作特性を達成しています。本システムを利用して、各サイクル開始時などに定点観測を行い長期的なビーム位置の変動の観測や、挿入光源の位相駆動により生じる短期的な軌道変動の観測等を行っています。基本的に は、このモニターの情報は実験中のユーザにも提供できる環境が整えられています。
最近では、より盛んに行われるようになってきた時分割実験に対応するために、検出部にストリップライン型構造を採用することによりパルス毎の位置計測を可能とした高速型モニターの開発にも取り組んでいます。
これらの要素技術開発の他に、特に、長期運転停止期間において、圧空およびステッピングモータ駆動機器、真空機器、冷却水系、圧空系、インターロック系の保守点検作業をきめ細かに行っています。