大型放射光施設 SPring-8

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SPring-8にて「粉末X線回折」測定代行を開始 ― SPring-8の測定代行を拡大 ―(プレスリリース)

公開日
2009年11月24日
  • BL19B2(産業利用I)
高輝度光科学研究センターは、JASRIスタッフが利用者に代わって大型放射光施設SPring-8を利用して粉末X線回折測定を行う測定代行を開始します。本測定代行は、平成21年11月24日から募集を開始し、平成22年1月から実際に測定を開始します。

平成21年11月24日
財団法人高輝度光科学研究センター

 高輝度光科学研究センター(以下「JASRI」、理事長 白川哲久)は、JASRIスタッフが利用者に代わって大型放射光施設SPring-8※1を利用して粉末X線回折測定を行う測定代行を開始します。本測定代行は、平成21年11月24日から募集を開始し、平成22年1月から実際に測定を開始します。

 測定代行では、利用者は測定したい試料をSPring-8へ送付または持参するだけで、測定データを得ることが可能となります。SPring-8では、原則、利用者がSPring-8まで赴き、自らが装置を操作する必要があります。しかし、企業や研究組織等によっては、放射光利用実験に精通した専門スタッフを抱えていないケースもあり、施設スタッフによる測定代行が望まれてきました。この要望に応えるため、JASRIでは平成20年10月よりXAFS※2で、また平成21年4月よりタンパク質結晶関係で測定代行を開始しており、今回の「粉末X線回折」は測定代行としては3番目の手法となります。

 最近では、粉末結晶を用いても単結晶と同様な構造解析が可能となりつつあり、現在SPring-8では、粉末X線回折測定を用いて燃料電池などのエネルギー・環境分野から医薬原料に至るまでの幅広い材料分析が行われています。

 測定代行は、成果専有時期指定課題※3の一形態として取り扱われ、半年毎に募集が行われる一般課題とは異なり、利用者は利用したい時にいつでも利用申請が可能です。利用料金は、ビーム使用料として18万円/2時間、消耗品実費負担相当額として定額分2,575円/2時間及び従量分(測定代行中に実際に使用した消耗品等の金額)の合計額となります。

 JASRIでは、測定代行を通じて、専門スタッフを確保することが困難な企業あるいは研究組織等への利便性拡大や、すぐに使いたいという即時利用ニーズへの対応を図ることにより、SPring-8の新たな利用者層の開拓につなげたいと考えています。

1.産業利用Iビームライン(BL19B2)における「粉末X線回折」測定代行について
 測定代行は平成20年10月からスタートした制度であり、現在、「XAFS」及び「タンパク質結晶」の2つの手法で運用しておりますが、平成22年1月からは新たに「粉末X線回折」の測定代行を開始します。ちなみに、これまで「XAFS」では燃料電池の電極材料等について、「タンパク質結晶」では製薬関連等のタンパク質について、それぞれ測定を行っています。
 「粉末X線回折」測定代行は、JASRI産業利用推進室のスタッフが、利用者に代わってSPring-8の産業利用 I ビームライン(BL19B2)を利用して測定を行うものです。よって、利用者は試料をSPring-8へ送付するだけで測定データを得ることができます。測定代行においては、利用者のSPring-8への来所や測定現場への立ち会いは任意です。

2.粉末X線回折法とその用途
 
物質の性質は原子配列などの構造に支配されています。その構造に関する知見を得るための方法の一つとして,X線回折法は非常にポピュラーな分析手段です。従来、物質の原子・分子レベルでの構造を精密に調べるためには、単結晶を用いたX線回折が主に使用されて来ました。一方で、結晶の粉末を用いたX線回折は、混合物の物質同定などに用いられてきました。近年、解析方法の進歩によって、粉末結晶を用いた実験でも単結晶と同様な構造解析が可能となりなりつつあります。
 特に産業利用分野に関しては、新規物質の探索において、極微量の生成物の分析結果を踏まえ、量産化の手がかりを見つけることが重要となっています。そのため、高輝度・大強度・高指向性の放射光を用いた粉末X線回折は、技術革新が著しいナノテクノロジー材料や医薬、エネルギー・環境分野において,数多くの成果を挙げることに貢献しています。

◎ 適用分野:セラミックス材料、蛍光体材料、機能性無機・有機材料、リチウム2次電池、燃料電池、医薬原料など幅広い材料の分析に適用されています。

3.共用ビームラインBL19B2(産業利用 I )と粉末X線回折計
 
産業利用 I ビームライン(BL19B2)は、産業界による放射光利用の拡大を主な目的とした汎用的な偏向電磁石ビームラインです。
 粉末X線回折測定には、少量の粉末試料から高い精度で回折データを集めることができる大型デバイシェラーカメラを利用して、ガラスキャピラリに封入した数mgの粉末試料からのX線回折をIP(イメージングプレート)に短時間(1試料あたり5分)で効率的に測定できる装置を使用します。平成21年度より、全自動試料交換・測定システムを導入し、粉末X線回折測定の高速化・自動化が実現しました。これにより、主に産業界が放射光粉末回折実験に対して期待している「大量のサンプルを手軽に測定したい」というニーズに答える事ができるようになりました。

粉末X線回折の測定代行には全自動試料交換・測定システムを備えた大型デバイシェラーカメラを使用します。 粉末X線回折の測定代行には全自動試料交換・測定システムを備えた大型デバイシェラーカメラを使用します。

4.粉末X線回折測定代行における測定試料
(1)試料形態
 試料形態はガラスキャピラリに封入した粉末試料に限り実施し、生物(動物、植物、微生物)試料は、原則として対象外とします。また、JASRIが定める「ランク4」の化学薬品、即ち、下記に列記したとおり、取扱いに際し国または県の許可が必要な物質についても対象外とします。
(i)「化学兵器の禁止及び特定物質の規制等に関する法律」に定める特定物質
(ii)「麻薬及び向精神薬取締法」に定める麻薬及び向精神薬
(iii)「覚せい剤取締法」に定める覚醒剤及びその原料
(iv)「大麻取締法」に定める大麻草及びその製品
(v)「あへん法」に定めるあへん、けし、けしがら
(vi)「毒物及び劇物取締法」に定める特定毒物
(vii)「労働安全衛生法」に定める製造禁止物質

(2)試料調製
 測定試料の調製は利用者が行う必要があります。調製方法が判らない場合は、担当者が相談に応じます。

(3)測定試料環境
 当面は大気中室温環境下での測定のみを対象とします。

5.申込方法
(1)「粉末X線回折」測定代行の申込概要:
 http://www.spring8.or.jp/ja/users/proposals/call_for/indu_powder_substitu/
 申込先:JASRI産業利用推進室(Tel:0791-58-0924、E-mail:daikou19@spring8.or.jp
 ※「粉末X線回折」測定代行の実施時期に関しては、相談のうえ決定することになります。

(2)参考
・「XAFS」測定代行の申込概要:
 http://www.spring8.or.jp/ja/users/proposals/call_for/indu_xafs_substitu/
 申込先:JASRI産業利用推進室(Tel:0791-58-0924、E-mail:daikou14@spring8.or.jp

・「タンパク質結晶」測定代行の申込概要:
 http://www.spring8.or.jp/ja/users/proposals/call_for/protein_substitu/
 申込先:JASRI利用研究促進部門(Tel:0791-58-0833、E-mail:mail-in@spring8.or.jp

6.利用料金
 
測定代行は「成果専有時期指定課題」の一形態として取り扱います。測定代行に掛かるビーム使用料及び消耗品実費負担については、「成果専有時期指定課題」に準じた金額となります。具体的には、次の(1)及び(2)の合計金額となります。

(1)ビーム使用料
 利用は2時間単位で受け付け、測定方法、試料数、測定スペクトル数によりビームタイムが2時間単位で算出されます。JASRIスタッフと十分に事前打合せを行い、必要ビームタイムを確認して頂き、ビーム使用料(成果専有時期指定料金相当:18万円/2時間)が算出されます。

(2)消耗品実施負担相当額
 消耗品費として、定額分(2,575円/2時間)と従量分(測定代行中に実際に使用した消耗品費等の金額)の合計額が必要となります。


《用語解説

※1 大型放射光施設SPring-8
 兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高の放射光を生み出す理化学研究所の施設で、その管理運営はJASRIが行っている。SPring-8の名前はSuper Photon ring-8GeVに由来。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、電磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のこと。SPring-8では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーや産業利用まで幅広い研究が行われている。

※2 XAFS
 XAFSとはX-ray Absorption Fine Structureの略称で、日本語ではX線吸収微細構造と呼ばれている。すべての物質は、原子構造を反映したX線の吸収現象を示す。その吸収量を精密に捉えることによって、物質の構造情報を得ることができるX線分光法である。

※3 成果専有時期指定課題
 SPring-8の利用には、成果専有利用と成果非専有利用の2つの利用形態がある。成果専有利用は、成果公開の義務がない利用形態である。審査も簡略化されるが、成果公開の義務がない代わりに、利用時間に応じたビーム使用料が課せられる。実験内容あるいは試料等に機密情報が含まれる場合等に利用されている。
 成果専有時期指定課題とは、成果専有利用課題のうち、申請時に利用希望時期を指定できる課題である。申請された課題は、利用希望時期を踏まえて迅速な審査が行われる。


《問い合わせ先》
 (財)高輝度光科学研究センター
 〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1

(測定代行に関する事項)
 産業利用推進室
 梅咲 則正(うめさき のりまさ)
  E-mail: メール
  Tel: 0791-58-0834 / Fax: 0791-58-0830

(課題募集に関する事項)
 利用業務部
 牧田 知子(まきた ともこ)
  E-mail: メール
  Tel: 0791-58-0961 / Fax:0791-58-0965

(SPring-8全般に関する事項 )
 広報室
 岡田 行彦(おかだ ゆきひこ)
  E-mail: kouhou@spring8.or.jp
  Tel: 0791-58-2785 / Fax: 0791-58-2786