大型放射光施設 SPring-8

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大型放射光施設SPring-8による生きるためのエネルギーを取り出すチトクロム酸化酵素(呼吸酵素)の仕組みの解明について(プレスリリース)

公開日
2010年04月13日
  • BL44XU(生体超分子複合体構造解析)
兵庫県立大学大学院生命理学研究科 吉川信也教授、月原冨武特任教授他7名は、大型放射光施設SPring-8を利用して、チトクロム酸化酵素(呼吸酵素)の構造を精密に決定した。

平成22年4月13日
兵庫県立大学

 兵庫県立大学大学院生命理学研究科 吉川信也教授、月原冨武特任教授他7名は、大型放射光施設SPring-8の生体超分子複合体構造解析ビームラインBL44XUを利用して、チトクロム酸化酵素※1(呼吸酵素)の構造を精密に決定した。
 この酵素が生命活動のための(生きるための)エネルギーを酸素(O2)を利用して、活性酸素種を作らずに、効率よく取り出す仕組みを解明した。
 生物が生きるためのエネルギーを取り出す仕組みを解明したことは、本研究の第一の基礎科学的成果といえる。それに加えて、創薬等への応用の可能性が期待される。
 その結果を世界の3大自然科学雑誌である米国科学アカデミー紀要最新号(2010年4月12日号)に発表する。

(論文)
"Bovine Cytochrome c Oxidase Structures Enable O2 Reduction with Minimization of Active Oxygen Species and Provide a Proton Pumping Gate"
(日本語訳:ウシチトクロム酸化酵素は活性酸素の生成を最小限にして酸素を還元し、プロトンの逆流を止める構造を持つ。)
K. Muramoto, K. Ohta, K. Shinzawa-Itoh, K. Kanda, M. Taniguchi, H. Nabekura, E. Yamashita, T. Tsukihara, S. Yoshikawa
Proceedings of National Academy of Science, Published online April 12, 2010

《参考資料》

図1 空気中の酸素が結合する場所の構造


図1 空気中の酸素が結合する場所の構造


図2 ウシ心筋由来チトクロム酸化酵素の全体構造


図2 ウシ心筋由来チトクロム酸化酵素の全体構造


《用語解説》

※1 チトクロム酸化酵素
 チトクロムの一成分で、電子伝達系の末端で作用する酸化酵素。シアン化物や一酸化炭素などは、この作用を阻害する。

※2 チトクロム
 生物の細胞内に存在する、ヘモグロビンとよく似た構造のヘムたんぱく質。細胞呼吸において電子伝達体としての役目を果たす。



(問い合わせ先)
 兵庫県立大学大学院生命理学研究科
  教授 吉川信也 
  TEL:0791-58-0190

 兵庫県立大学播磨科学公園都市キャンパス事務部
  次長兼総務課長 西村拓也
  TEL:0791-58-0101

(SPring-8に関すること)
 財団法人高輝度光科学研究センター 広報室
  TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
  E-mail:kouhou@spring8.or.jp

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