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東京工業大学フロンティア研究機構の細野秀雄教授が仁科記念賞を受賞(トピック)

公開日
2012年11月22日
  • 受賞情報

2012年度 仁科記念賞を東京工業大学 フロンティア研究機構の細野秀雄教授が受賞されました。
仁科記念賞は、故仁科芳雄博士の功績を記念し、原子物理学とその応用に関し、優れた研究業績をあげた比較的若い研究者を表彰することを目的とされています。

賞の名称:
2012年度 仁科記念賞

受賞者:
細野 秀雄(東京工業大学フロンティア研究機構 教授)

細野教授写真

受賞業績:
鉄系超伝導体の発見

業績要旨:
細野秀雄氏は、2008年1月にLaFeAsO1-xFxTc=26K)という層状オキシニクタイドで鉄系の超伝導体を発見した。過去には、大きな磁気モーメントをもつ3d遷移金属である鉄を含む化合物は、超伝導の発現には極めて不向きと信じられてきた。発見されたLaFeAsO1-xFxは転移温度Tcが比較的高かったことから、大きなインパクトを与え、世界中で鉄系超伝導の研究が急速に立ち上がり、最高のTcは銅酸化物超伝導体に次ぐ56Kまで上昇している。多彩な母物質、多バンド由来のペアリング機構や高い磁場下でも大きい電流密度を持つなどが見出されるなど急速に展開しており、新大陸の発見と形容される大きな拡がりをみせている。さらに細野氏は、フッ素イオンの代りに水素マイナスイオンH-で酸素イオンサイトを置換するという斬新な発想で従来の2~4倍量の電子ドープに成功し、LaFeAsO1-xHxではこれまでに見出されていた領域に加え、0.23<x<0.45の領域でxに対してTcがドーム状に変化することを見出した。この結果は鉄系の高いTcを支配する機構を再考する貴重な知見を提供している。

授賞理由:
超伝導は、電気抵抗=0,超伝導体内部の磁束=0(マイスナー効果)、ジョセフソン効果等の物理的に大変興味ある現象を示すと共に多くの応用が考えられている。しかし、その応用に今一歩の拡がりがないのは、超伝導転移温度(Tc)が低いためであると考えられている。実際、1986年まではTcは20K(-250°C)が上限であろうと考えられてきた。
それに新しい革命をもたらしたのが銅酸化物超伝導体の発見であり、数年でTcは一気に160K(-113°C)まで上昇した。細野氏らは、2008年1月に新しい鉄を含む超伝導体としてLaFeAsO1-xFxを発見した(図1参照)。この物質のTcが26Kと比較的高かったことから、直ちに中国をはじめ世界の研究者が参入し、猛烈な勢いで競争が開始された。細野氏のグループは日本大学の高橋博樹氏らと共同で2GPa程度の高圧下でTcが43Kまで上昇することを発見しその後LaをSmで置換することでTcは56Kまで上昇している(図2参照)。これはS=1/2を持つ銅酸化物に続いて鉄という大きな磁気モーメントを持つ系が大変高いTcを示したことで多くの注目を集めた。

図1
図1
図2
図2

その後、Fe2+の正方格子を含むFePn(Pn:プニクトゲン)またはFeCh(Ch:カルゴゲン)層からなる結晶の多くが超伝導の母物質になることが判明し、“鉄系超伝導グループ”という大きな山脈を形成するに至った。またこの系は角度分解光電子分光などの物理測定や理論計算などによって多バンド系に特徴的な電子状態を持つことが次第に明らかになりクーパー対の形成機構についても、大きな論争を呼び、現在の物性物理における中心的話題になりつつある。
また最近、細野氏はLnH2(Ln:ランタノイド)が安定であることにヒントを得て、LnFeAsOではフッ素イオン(F-)の代わりに水素マイナスイオン(H-)で酸素サイトを置換するという発想により、高圧合成を駆使して従来の2~4倍量の電子ドーピングに成功した。これらにより、超伝導領域はかなり広い領域に渡っていることが判明し、既報の、xが小さい領域でのTcのドーム状の変化に対し、xが大きい領域でもTcがドーム状に変化していることを明らかにした。これらは鉄系超伝導の機構解明につながる重要な知見として注目されている。
以上のように、細野秀雄氏は固体化学の深い造詣と独自の物質センスにより3d磁性元素の化合物で新規の超伝導体を創製し、物性物理の分野に新しい領域を拓いた。特に鉄系超伝導の発見は、銅酸化物超伝導体に匹敵するインパクトを与えた。
これらは仁科記念賞にふさわしい業績である。