大型放射光施設 SPring-8

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東京大学分子細胞生物学研究所教授、 東京大学分子細胞生物学研究所附属高難度蛋白質 立体構造解析センター長 豊島 近 教授が恩賜賞・日本学士院賞を受賞(トピック)

公開日
2018年03月12日
  • 受賞

2018年3月12日、日本学士院は、SPring-8の放射光を用いた「原子構造に基づくイオンポンプ作動機構の解明」への功績に対し、東京大学分子細胞生物学研究所教授、 東京大学分子細胞生物学研究所附属高難度蛋白質 立体構造解析センター長 豊島 近(とよしま ちかし)教授に恩賜賞・日本学士院賞を授与すると発表しました。
恩賜賞は日本学士院による賞の中でも最も権威あるもので、日本学士院賞の中から特に優れた功績に授賞されるものです。

受賞者氏名(所属):
 豊島 近(東京大学分子細胞生物学研究所教授、東京大学分子細胞生物学研究所附属高難度蛋白質立体構造解析センター長)

 Professortoyoshima

研究題目:
 原子構造に基づくイオンポンプ作動機構の解明

受賞理由:
 カルシウムやナトリウムなどのイオンの濃度は細胞内と細胞外では大きく異なります。このイオンの勾配は細胞膜に存在するイオン特異的ポンプによって維持されています。豊島 近氏は、イオンポンプ蛋白質を代表する筋小胞体カルシウムポンプに関し、イオン輸送サイクルのほぼすべての中間状態の構造をX線結晶解析によって決定し、生体膜を越えてイオンを濃度勾配に逆らって輸送するポンプ蛋白質の複雑な作動機構を原子構造に基づいて解明しました。さらには、イオンポンプが活動する場である脂質二重膜をも可視化し、脂質二重膜を構成するリン脂質と膜蛋白質との動的で緊密な相互作用を初めて明らかにしました。また、ナトリウムポンプに関しても、どのようにしてナトリウムイオンをわずか0.04ナノメートルの違いしかないカリウムイオンと厳密に区別し、高速に運搬できるのかをナトリウムポンプ蛋白質の原子構造を決定して明快に説明しました。


【用語解説】
イオンポンプ蛋白質
 生体膜に存在する蛋白質(膜蛋白質)で、目的とするイオンを選択的に結合し、ATP(アデノシン三リン酸)の持つエネルギーを利用し、2つのゲートを交互に開け閉めすることで、濃度勾配に逆らって、膜を越えてイオンを運搬する(能動輸送する)。

筋小胞体カルシウムポンプ
 筋肉の収縮は筋小胞体と呼ばれる袋状の構造に蓄えられていたカルシウムが筋細胞中に放出されることによって生じる。弛緩のためには、放出されたカルシウムを筋小胞体中へ汲み戻す必要があり、その役割を果たすのが筋小胞体カルシウムポンプである。

脂質二重膜
 生体膜はリン脂質やコレステロール等からなり、水と接する親水的な部分を外側に、油のように疎水的な部分を内側にして二重層を形成している。イオンは脂質二重膜を通過できないため、細胞の内外でイオンの濃度差を維持できる。

ナトリウムポンプ
 ほぼすべての動物細胞に存在し、ナトリウムを細胞内から外へ、カリウムを外から内へ運搬し、濃度勾配を形成する。ナトリウムの濃度勾配は他の輸送体の駆動力や、神経興奮の際の電気信号の源となる。



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