燃料デブリ等保管時の水素安全 技術のさらなる向上に目処(プレスリリース)
- 公開日
- 2019年07月22日
- BL14B1(QST 極限量子ダイナミクスII)
- BL28B2(白色X線回折)
2019年7月22日
長岡技術科学大学
関西学院大学
宇都宮大学
ダイハツ工業
アドバンエンジ
日本原子力研究開発機構
長岡技術科学大学高瀬和之教授、関西学院大学・田中裕久教授、宇都宮大学・杉山均特任教授、ダイハツ工業・谷口昌司主任、アドバンエンジ・工藤勇課長代理、日本原子力研究開発機構・日野竜太郎特任参与らの研究グループは、東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所(1F)の廃炉に伴う燃料デブリ等の放射性廃棄物を対象に、保管容器の長期にわたる水素安全の確保と水素安全技術のさらなる向上のため、保管容器内に蓄積される水素の濃度を低減する技術の開発に目処をつけました。開発に目処をつけた水素安全技術は次の技術からなります。 ・高性能な2種類の水素再結合触媒の製造技術 開発した水素再結合触媒を使って、1F の燃料デブリ等保管容器の設計条件である、容器内水素濃度を爆 発下限界(容器体積の4%)未満に低減できることを実験によって確認しました。 【論文情報】 タイトル:Research on hydrogen safety technology utilizing the automotive catalyst |
※本研究開発の一部は、文部科学省国家課題対応型研究開発推進事業「英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業」廃炉加速化研究プログラム(国内研究)「廃棄物長期保管容器内に発生する可燃性ガスの濃度低減技術に関する研究開発」(研究代表:長岡技術科学大学教授 高瀬和之)で行われたものです。
ハニカム型⽔素安全触媒
このプロジェクトにおいて、ダイハツ工業・谷口昌司、日本原子力研究開発機構・松村大樹、関西学院大学・田中裕久の研究グループは、自動車触媒を応用した、実用性の高い「ハニカム型水素安全触媒」を開発した。この結果、福島第一原子力発電所の廃炉の際に、燃料デブリ等を安全に搬出・輸送し、そして長期間に渡り安全に保管することが可能となる。
即ち、密閉された保管容器内で、燃料デブリ等の水分が放射線分解して水素ガスを発生する課題に対して、ガソリン自動車用ハニカム型触媒を応用し、外部からの電力供給などを必要とせず、発生した水素と酸素を容器内で安全な水に戻す「水素安全触媒」を開発した。
大型放射光施設SPring-8 を活用し、反応メカニズムを解析することにより、触媒開発を加速した。触媒試作は、株式会社キャタラーと日本ガイシ株式会社の協力を得た。また、触媒改良の効果は、ドイツ・ユーリッヒ研究所 (Forschungszentrum Juelich GmbH) の大スケール反応装置にて実証した。今後実用化に向けたステップに移行する。
本触媒は自動車触媒技術を応用しているため、以下のような優れた特徴を持つ。
・燃料デブリ等の保管容器内で発生する水素を、安全な濃度(4%未満)に保つ
・高活性で、様々な環境で性能発揮(マイナス 20 ℃から水素濃度を低減可能)
・外部からの電力供給が不要
・セラミックス・ハニカムに塗布されているため、軽量で取扱いが容易
・コンパクトで、保管容器にほとんど改造を加えることなく取り付け可能
・貴金属使用量が極めて少ない
・量産が可能で、実用性が高い
1. 触媒性能:低温から⽔素を⽔に戻す反応
・マイナス 20 ℃付近から⽔素を除去できることが観察された
2. 触媒反応メカニズム解析:⼤型放射光施設SPring-8 ビームラインBL14B1とBL28B2にて実施
・貴⾦属表⾯が還元されやすい材料では、湿度環境でも活性の低下は起こりにくいという材料開発に対して重要な知⾒を与えた
3. ⼤スケールでの実験:ドイツ・ユーリッヒ研究所での性能実証実験
・量産可能な触媒仕様で⾼性能・⾼活性であることが確認できた
4. 開発した触媒の外観
【問い合わせ先】 (SPring-8 / SACLAについて) |
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