大型放射光施設 SPring-8

コンテンツへジャンプする
» ENGLISH
パーソナルツール
 

SPring-8セミナー先端シリーズ 健康科学・技術最前線(第1回)

副題/演題 角膜再生医工学の臨床応用に向けて
開催期間 2005年12月15日
開催場所 上坪講堂
主催 (財)高輝度光科学研究センター
形式 レクチャー(講演)
分野 生命科学
概要

近年、健康に対する意識の高まりのなか、健康に関連した科学・技術の発展の素晴らしさは、皆さんご存じの通りです。新しい健康科学・技術には、物理的技術と、生物学的技術のそれぞれの進展から生まれたものがあり、どちらにも革新的な進歩が見られます。本シリーズでは、両方面における新しい技術に着目し、それぞれの専門家の方をお招きして解説して頂きます。健康科学が現在どこに向かおうとしているか、それが社会的にどんなインパクトを持つのかを把握できるシリーズになると思います。

This talk will be given in Japanese.

日   時 : 2005年12月15日 16:00-17:00

講演者 : 木下 茂 教授
所   属 : 京都府立医科大学 視覚機能再生外科学

講演要旨
  角膜は眼の表面にある約500μmの厚さの透明な組織であり、約40ジオプトリの凸レンズとしての役割を果たしている。この角膜は特異な粘膜上皮である5-6層の50μmの角膜上皮細胞層で表面が覆われており、通常は血管の無いユニークな組織である。この角膜上皮はK3,K12といった角膜特異的keratinを発現し、極めて強固なtight junctionを最表層に構成しており、基底細胞が増殖して上皮層のターンオーバーを維持している。その幹細胞は角膜周辺部に位置する角膜輪部に存在するとされている。したがって、化学外傷やStevens-Johnson症候群のような薬剤障害で角膜上皮層と幹細胞が障害され消失すると、角膜に結膜上皮と血管が侵入し、極端な視力低下が生じる。このような場合、通常の角膜移植は奏功せず、角膜上皮層だけを置換させる角膜上皮移植が選択される。
  近年、この移植において、再生医工学的なアプローチである培養粘膜上皮シートの作成と移植が脚光を浴び、その技術も飛躍的に改良されつつある。実際、健康な片眼から角膜上皮幹細胞を採取して培養上皮シートを作成し、他眼の病的な角膜に移植する自家培養角膜上皮幹細胞移植は安定した成績をおさめており、ドナー角膜上皮の幹細胞から作成した同種移植となる培養角膜上皮シートでも、それなりの臨床成績を示してきている。さらに、自家口腔粘膜上皮を用いて作成する培養口腔粘膜上皮シートは、眼表面の再建に画期的な役割を果たしている。このような結果を踏まえて、我々は、製品化を目指して、培養条件の最適化、輸送方法などとともにGMP対応を見据えた、さまざまな条件設定に入りつつある。今回は、培養粘膜上皮シートについての我々の将来的なスキームを紹介しながら、現状を要約する。

世話人: 八木 直人(JASRI 利用研究促進部門 e-mail: yagi@spring8.or.jp PHS: 3852)

今後のスケジュール

SPring-8セミナー先端シリーズについて:
「SPring-8セミナー先端シリーズ」は、SPring-8利用に結び付くような特定のテーマについて、外部から講演者を招いてシリーズ化して実施するものでSPring-8スタッフ等に将来的な放射光利用の共通認識を持つことを目的とする。

問い合わせ先 辻 雅樹、竹内やよい (財)高輝度光科学研究センター 研究調整部
0791-58-2730

spring8_seminar@spring8.or.jp
最終変更日 2006-04-08 15:48