大型放射光施設 SPring-8

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SPring-8 Seminar (第253回)

副題/演題 SOFC燃料極における炭素析出メカニズムの解明と水素生成用炭素触媒の可能性
開催期間 2016年08月17日 (水) 13時30分から14時30分まで
開催場所 上坪講堂
主催 (公財)高輝度光科学研究センター(JASRI)
形式 レクチャー(講演)
概要

Speaker : 徳永 智春

Language : 日本語

Affiliation : 名古屋大学

Title : SOFC燃料極における炭素析出メカニズムの解明と水素生成用炭素触媒の可能性

Abstract :
 固体電解質型燃料電池(SOFC)は、600ºC ~1000ºCの高温で作動させる燃料電池であり、燃料極として使用されるNi-YSZサーメットの触媒作用により炭化水素ガスの内部改質が可能であり、炭化水素ガスを直接供給できる。しかし、高温で炭化水素ガスを直接供給する場合、燃料極に炭素が析出し、電極性能が劣化することが報告されている。これまでの炭素析出に関する研究では、SEMによる炭素析出後の燃料極表面観察結果から、炭素析出がNi-YSZ界面で生じると論じられている。一方で、炭素析出源と炭素析出メカニズムに関しては検討されておらず、明らかとなっていない。そこで、Ni-YSZサーメットのモデル材料を作製してSOFCと同様の条件下で炭素を析出させ、Ni-YSZサーメットにおける炭素析出源と炭素析出メカニズムの詳細な検討を試みた。
 また得られた結果から、炭素それ自身が炭化水素ガスを分解する触媒として機能している可能性が示唆された。様々な炭素材料が炭化水素ガスを分解する触媒となり得る可能性については後半に紹介する。

 Ni粉末とYSZ粉末を混合してNi-YSZサーメットのモデル材料を作製した。Ni-YSZ混合粉末を加熱炉内に導入し、管状炉内の一端からCH4ガスを100 ml/minの流量で流すことでCH4雰囲気に調整後、700 ºCに加熱し、SOFCと同様の条件で試料に炭素を析出させた。炭素を析出させた試料をTEM内に導入し、炭素析出の詳細な観察を行った。さらに、CH4雰囲気中加熱その場観察を行い、炭素の析出源及び成長メカニズムを探った。
 Ni-YSZ混合粉末の微細構造観察を行った結果、炭素析出がNi-YSZ界面ではなく、Ni由来であることが明らかになった。析出した炭素の形態は、EELSにより層間相互の結合であるπ*結合に対応するedgeと、六員環の結合であるσ結合に対応するedgeが得られ、グラファイトであることが明らかになった。その場観察では、Ni表面の特定の結晶面で炭素が析出し、生成したグラファイトが周囲のグラファイトと繋がるように成長し、Ni表面全体を覆う様子が確認された。この結果から、Ni上で析出した炭素がNiを覆うように成長し、Ni-YSZ界面まで成長するというメカニズムが考えられた。過去の研究では、Ni-YSZ界面に炭素が析出すると報告されてきたが、Ni-YSZ界面近傍では炭素析出量が多いため、これをSEMで観察した場合、Ni-YSZ界面に炭素析出が確認され誤った見解を得ていたと考えられる。実際には、Ni-YSZ界面に存在する炭素はNi表面から成長してきたものであり、Ni-YSZ界面から生成した炭素ではなかった。この炭素材料が成長することでカーボンからなるカプセルが成長し、燃料極上に堆積することでSOFCの効率が低下することが判明した。
 これらの結果を精査したところ、金属だけではなく炭素材料それ自身がCH4を分解する触媒として機能していることが示唆された。そこで、様々な炭素材料をCH4雰囲気中に置き加熱したところ、400ºCの低い温度からCH4を分解することが判明した。グラファイト構造のエッジが触媒能を有する可能性については報告されていたが、湾曲したグラファイト構造がより低い温度から触媒能を示す可能性が見いだされた。

担当者 : 櫻井 吉晴
Mail : sakurai@spring8.or.jp
PHS : 3803

問い合わせ先 JASRI 研究調整部 研究業務課 SPring-8セミナー事務局 高雄美奈子
0791-58-0833
0791-58-0830
minako@spring8.or.jp
最終変更日 2016-08-17 14:18