2026年秋の学校 講義・講習概要
基礎講義(必須)
| 基礎講義 | 内容 | 講師(所属) |
|---|---|---|
| 1.放射光発生の基礎と電子加速器 | シンクロトロン放射光とは、加速器でほぼ光速まで加速された相対論的荷電粒子(一般に電子)が磁場で軌道を曲げられた際、接線方向前方に放射される強力な電磁波である。本講義では、円軌道放射に加え、挿入光源(アンジュレーター、ウィグラー、自由電子レーザー)など多様な放射光の特徴と発生原理を解説する。また、発生に不可欠な高エネルギー電子加速器についてもニュースバルを例に紹介する。 | 橋本 智(兵庫県立大学) |
| 2.ビームライン ~光源と実験ステーションを繋ぐもの~ |
放射光利用実験では光源からの放射光をそのまま利用することはほとんどなく、ユーザーの用途に合わせてビームライン光学機器で様々な制御(例えば光のエネルギーやサイズの調整など)がなされたX線が提供される。講義ではX線光学の定性的な説明を行い、それらを利用したビームライン光学機器類について紹介した後、熱対策などの技術的な問題について触れる。 | 小山 貴久(高輝度光科学研究センター) |
| 3.X線検出器の基礎 | SPring-8の放射光実験において、検出器はデータの質を左右する「目」の役割を担います。本講義では、まずX線と物質の相互作用から信号生成に至る物理プロセスを整理します。その上で、強度・エネルギー・時間など、得たい情報に応じて最適な検出器を選択するための 基本的な考え方を解説します。後半では、近年の主流であるハイブリッド型ピクセル検出器等の最新技術を紹介し、検出器の特性が実験の精度向上にどう寄与するかを学びます。 | 今井 康彦(高輝度光科学研究センター/理化学研究所) |
| 4.X線自由電子レーザー入門 | X線の発見から約120年後の2009年に、米国のSLAC国立加速器研究所が人類最初のX線レーザーを実現しました。それから2年後の2011年には日本の理化学研究所が世界で2番目のX線レーザーを実現し、SACLAと名付けました。その後世界各地でX線レーザーの建設が行われ、X線レーザーの時代が始まっています。これらのX線レーザーは「自由電子レーザー」と呼ばれるタイプの光源で、私達が普段イメージする可視光近傍のレーザーとは異なる方法で光を作り出しています。本講義では、X線レーザーの仕組みとX線レーザーによって可能になったサイエンスをSACLAでの取り組みを中心に紹介します。 | 久保田 雄也(東京大学/理化学研究所) |
| 5.X線イメージング | X線の高い透過性はレントゲン写真のように物体内部の構造観察を可能にする。さらに、放射光X線の高輝度性は様々な新しい画像法(イメージング)を可能にした。屈折コントラスト法による高コントラスト動的観察、走査型X線顕微鏡による微量元素の二次元分布測定、X線顕微鏡トモグラフィーによる三次元内部構造の顕微観察、コヒーレントX線回折イメージング等を例に挙げ、SPring-8における応用例を紹介する。 | 篭島 靖(兵庫県立大学) |
| 6.回折・散乱の基礎と構造解析への応用 | 物質の性質を理解する上で、原子配列は、最も基本的、かつ、重要な情報の一つです。本講義では、回折・散乱現象の基礎から出発し、原子によるX線の回折・散乱、回折・散乱実験による原子配列の解析について概観します。結晶構造解析はわかりやすい応用例ですが、結晶構造解析のみならず、薄膜結晶や周期性を持たない非晶質材料、集合体の構造の解析などを対象にして、放射光利用の優位性や放射光利用ならではの実験例についても解説します。 | 藤原 明比古(関西学院大学) |
| 7.XAFSの基礎 | XAFS(X線吸収微細構造)は、物質を構成する原子の化学状態(価数や電子軌道)や局所構造(隣接原子の種類・数・距離)を非破壊で調べることができる手法です。本講義では、放射光を利用したXAFS解析を行う上で必須となる、X線吸収の原理から実験手法、解析の基礎までを解説します。測定や解析における操作の意味を正しく理解することで、自身の研究においてXAFSを有効なツールとして活用・応用できるようになることを目指します。 | 片山 真祥(高輝度光科学研究センター/島根大学) |
グループ講習
| グループ講習 | 講習内容 | 講師(所属) | PCの要/不要 |
|---|---|---|---|
| 1.単結晶構造解析 | 物質を対象とする研究において、必要な情報は目的によって多岐に渡ります。しかし、物質の構造が研究に不要であることはほとんどありません。物質の構造を得る目的で多く用いられている手法が単結晶構造解析です。本講習では、有機小分子化学物結晶の構造解析について概説し、SPring-8 における単結晶回折装置(BL02B1)を見学、デモデータを用いた構造解析実習を行います。特に実習に重点を置きます。 | 橋爪 大輔・足立 精宏(理化学研究所CEMS) | 必要 (OSは出来ればWindowsが望ましい) |
| 2.放射光粉末X線回折によるその場観測の実際 | 放射光粉末X線回折は、微量試料を用いた短時間での測定、雰囲気制御の簡便さなどから物質の反応を追跡するなどのその場観測に適している。SPring-8の高輝度放射光を利用した粉末試料のX線回折について実習を行い、BL02B2において試料のハンドリングや測定システムの操作などの模擬実験を行う。その後、銅の高温環境下での酸化反応を追跡した回折データを用いて解析を行い、その結果について考察する。 | 笠井 秀隆(大阪公立大学) 森 祐紀(兵庫県立大学) |
必要 (Excelインストール済、OS不問) |
| 3.タンパク質結晶構造解析 | 生体内で様々な役割を持つタンパク質の構造情報は、生命機能を理解したり、そのタンパク質を標的とした薬剤をデザインするために重要である。本講習ではタンパク質のX線結晶構造解析を行う上で必要となるタンパク質結晶の作製法、タンパク質結晶を用いた回折実験、およびデータ解析などに関して学ぶ。 | 緒方 英明(兵庫県立大学) 河村 高志(高輝度光科学研究センター) |
不要 |
| 4.小角X線散乱A -マテリアル系- | 小角X線散乱は物質中のナノ構造を観察する計測法で、高分子、液晶、金属、生体物質等、広い分野で応用されている。本講義では、1)X線散乱法でナノ構造を見ることの基礎、2)小角X線散乱法で用いられるX線光学系・検出器系の構造と原理、3)小角X線散乱法の応用例(特に、高分子材料、タンパク質・溶液散乱) に関して平易に解説する。小角X線散乱a,bでは、a:マテリアル系、b:bioSAXS系として説明する。 | 増永 啓康(高輝度光科学研究センター) | 不要 |
| 5.小角X線散乱B -bioSAXS- | 小角X線散乱は物質中のナノ構造を観察する計測法で、高分子、液晶、金属、生体物質等、広い分野で応用されている。本講義では、1)X線散乱法でナノ構造を見ることの基礎、2)小角X線散乱法で用いられるX線光学系・検出器系の構造と原理、3)小角X線散乱法の応用例(特に、高分子材料、タンパク質・溶液散乱) に関して平易に解説する。小角X線散乱a,bでは、a:マテリアル系、b:bioSAXS系として説明する。 | 長尾 聡(高輝度光科学研究センター) | 必要 (表計算ソフト・ImageJ等の画像解析ソフトを使用) |
| 6.X線回折・散乱を用いた薄膜構造評価 | 私たちの生活に欠かせない存在である半導体デバイスは、様々な機能性薄膜で構成されています。膜厚が数nmから数百nm程度の機能性薄膜の構造評価には、高輝度X線源である放射光が強力な評価ツールとなります。本講習では薄膜構造評価法であるX線回折測定やX線反射率測定の原理と応用例を紹介し、BL13XUに設置されている多軸X線回折計において測定手順を見学していただきます。 | 小金澤 智之(高輝度光科学研究センター) | 不要 |
| 7.X線吸収分光法 | X線吸収分光法(XAS)は、特定原子(元素)の内殻電子の励起に伴う吸収スペクトルからその原子の電子状態や局所構造を知ることができる手法で、様々な分野で応用されている。本講習では、実際に利用されている測定機器に触れながら、XASの原理、特長、測定法及びXASスペクトルの解析の基礎について説明します。 | 片山 真祥(高輝度光科学研究センター/島根大学) 内山 智貴(東北大学) |
必要 (Win or Mac、XAFS解析用フリーソフトAthena, Arthemis) |
| 8.皮膚角層および毛髪の構造解析 | 皮膚表面には、異物侵入や脱水から生体を保護する「角層」があります。角層は、生体を保護するためのバリア機能を有しています。放射光X線回折を利用して、角層の微細構造を調べることで、効果の高い製剤の開発に繋がる基盤情報が得られます。同じように、毛髪の微細構造を理解することで、機能性をもつシャンプーやヘアケア製品の開発が可能になります。実際の実験例を踏まえながら、これらの内容についてわかりやすく解説します。 | 中沢 寛光(帝京科学大学) 小幡 誉子(星薬科大学) 太田 昇(高輝度光科学研究センター) |
不要 |
| 9.GeV光ビームの生成とサブアトミック科学 | GeV光ビームは、X線に比べて10万倍程度高いエネルギーを持ち、原子より極微の世界である原子核や素粒子などのサブアトミック科学の研究に利用されています。本講習では、レーザー光をSPring-8蓄積電子と逆コンプトン散乱させて高エネルギー光ビームを生成する手法を解説し、得られたGeV光ビームを用いて行われている研究の一端を、実験装置の見学・説明を含めて紹介します。 | 堀田 智明・桂川 仁志・小早川 亮 田中 慎太郎・秋山 タケル(大阪大学) |
不要 |
| 10.高圧力の発生と高圧下の物質科学 | 講習では高圧下の物質科学と放射光X線を利用した評価に関する簡単な講義と併せて、ダイヤモンド・アンビル・セルを用いた高圧発生技術を習得します。実際にダイヤモンド・アンビル・セルを用いた高圧氷の生成と、BL10XUで取得された氷のX線回折パターンの解析を通して圧力と格子体積の関係を得る実習を行う予定です。 | 横尾 舜平(東京大学) | 必要 (OSはWindowsが望ましいが必須ではない) |
| 11.核共鳴散乱 ― 原子核を通してみる物質の世界 ― |
核共鳴散乱は、メスバウアー効果と呼ばれる原子核の共鳴現象を利用した測定手法である。原子核における共鳴エネルギー幅はナノ電子ボルト程度と非常に狭く、高分解能の分光が可能である。例えば、電子系から原子核へのごくわずかな影響(超微細相互作用)を測定することで電子状態を議論したり、核共鳴と同時に起こるフォノン励起を捉えることでフォノンの分散関係を測定したりすることができる。本講習では、核共鳴散乱の原理に加え、さまざまな応用例の紹介や放射光の分光法で汎用的なXAFSとの比較を行い、その有用性について解説する。 | 小林 康浩(京都大学) 筒井 智嗣(高輝度光科学研究センター/茨城大学/岡山大学) |
不要 |
| 12.放射光光電子分光法による物質の電子状態分析 | 物質の性質は物質内の電子構造によって決定されています。光電子分光法は、光電効果を利用して物質の組成と電子状態を直接的に調べることができる実験手法です。高輝度放射光の利用によって角度分解光電子分光を行うことも可能となり、物質のバンド構造やフェルミ面を決定することもできます。実習では、光電子分光法による物質の組成分析、および角度分解光電子分光法による物質のバンド構造の測定について体験していただく予定です。 | 藤森 伸一(日本原子力研究開発機構) | 必要 (xyグラフ作成可能なソフトを用意、OS不問) |
| 13.放射光X線イメージングの概要と基礎 | 放射光を利用したX線イメージングでは、単純なレントゲン撮影のように計測対象である試料の内部構造を単に可視化するだけでなく、得られた画像データを定量的に取り扱うことにより、様々な情報を引き出すことができます。本講習では、まずX線イメージングの概要を示し、どのような研究に使われているか、どのような情報が引き出せるのかを学びます。その後、この計測を行うための基本ツールの説明を行います。 | 上杉 健太朗(高輝度光科学研究センター) | 必要 (OS不問) |
| 14.X線発光分光法 | X線は試料と様々な相互作用を行いますが、X線のエネルギーの一部を試料に渡してその分だけエネルギーが減ったX線が放出されるという経路もあります。このエネルギーが減って放出されたX線を計測するのがX線発光分光法です。 出てきたX線のエネルギーを詳細に調べ、それを許に試料とX線との相互作用を理解することで、試料の構造や電子状態に関する詳しい情報が得られます。講習ではX線発光分光法の基礎について説明し、燃料電池の電極触媒に対する観察結果を例に取り、X線発光分光法の有用性を具体的に解説します。 | 松村 大樹(日本原子力研究開発機構/関西学院大学) 石井 賢司(量子科学技術研究開発機構/岡山大学/東北大学) |
不要 |
| 15.二体分布関数法(PDF) | 二体分布関数法(PDF)は、ガラスや液体の局所構造に関する情報が得られます。本講習では、実際に利用されている計測機2つのデータを用いて、データ処理の実習を行う予定です。 | 尾原 幸治(島根大学) 山田 大貴(東北大学) 下野聖矢(高輝度光科学研究センター) |
不要 |
| 16.ブラッグコヒーレントX線回折イメージング法 | 放射光の特徴のひとつであるコヒーレンスを活用したブラッグコヒーレントX線回折イメージング法について講習を行います。ブラッグコヒーレントX線回折イメージング法は微小結晶試料を3次元的に可視化する技術で、結晶の形状やサイズ、内部の応力分布等を可視化します。講習は講義と実習からなります。講義ではコヒーレントX線回折イメージング法の概要を紹介します。また実際に計測に使われる装置群の見学も行います。実習では、データの解析(位相回復計算)を体験していただきます。計算にはGPU搭載のPCが必要であるため、ビームラインに設置するPCを利用します。このため1回の講習につき2名までとさせていただきますこと、ご了承ください。 | 大和田 謙二・押目 典宏・シャオ・ミンヤン (量子科学技術研究開発機構) |
不要 |
| 17.放射線生物学の基礎 | 放射線は医学分野において診断や治療に使われています。放射線がん治療においては、がん患部に放射線を集中させることでがん細胞に細胞死を誘発します。本講習では、研究で用いられている培養細胞の観察をするとともに、放射線の細胞致死効果の測定法を学びながら、放射線生物学のほんの入り口を体験していただきます。 | 小西 輝昭・城 鮎美 (量子科学技術研究開発機構) |
必要 (Excelインストール済、OS不問) |
| 18.放射光X線トポグラフィーによるパワー半導体単結晶の欠陥観察 | 放射光X線は高輝度、高指向性、波長可変、広いビーム幅等の特徴を有するため、単結晶材料の格子欠陥の非破壊観察に適する。本講習では、欠陥周囲の格子歪みによる回折強度の変化を利用して欠陥の分布と種類を観察する「X線トポグラフィー」を用い、SiC、GaN、AlN、Ga2O3等次世代のパワーデバイス用半導体単結晶材料の欠陥評価の原理と事例を紹介する。 | 姚 永昭(三重大学) 梶原 堅太郎(高輝度光科学研究センター) |
不要 |
| 19.放射光を利用した応力・ひずみ計測 | 安全・安心な要素設計には、部材要素に作用する応力・ひずみを把握することが不可欠です。特に部材中に隠れている残留応力は、強度に大きな影響を及ぼすため、高精度に評価する必要があります。本講習では、応力・ひずみ測定の基礎的な原理・手順を理解することを目指します。そのため、ひずみ測定の最も基礎的な手法であるひずみゲージ法、さらには、X線回折を利用した応力・ひずみ解析法について、実体験を通して理解することを目的とします。 | 菖蒲 敬久・冨永 亜希 (日本原子力研究開発機構) |
必要 (Excelインストール済、OS不問) |