大型放射光施設 SPring-8

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2007年夏の学校 講義概要

基礎講座

基礎講座1.光源加速器 高雄 勝(JASRI)

放射光とは加速された電子から放出される電磁波のことである。電子は、エネ ルギーが高くなればなるほど短い波長の放射光を発生することができるが、 SPring-8ではその波長域はX線領域に達している。現在のところ、高エネルギ ー電子を貯め込み安定に放射光を発生させる電子蓄積リングは、強力なX線源 として利用できる唯一のものである。本講義では、SPring-8を例に挙げながら 蓄積リングの原理について解説する。

基礎講座2.放射光の発生 田中隆次(理化学研究所)

シンクロトロン放射光とは、磁場中を運動する荷電粒子により放出される電磁波のことであり、指向性に優れているため、従来の光源に比べて格段に輝度が高い。蓄積リングを周回する電子からは、偏向磁石のような一様磁場により発生する放射光と、アンジュレータやウィグラなどの挿入光源と呼ばれる特殊な磁場発生装置から、より輝度の高い放射光を得ることができる。本講座ではシンクロトロン放射光の発生原理や放射光実験をする上で役立つ光の基礎知識などについて解説する。

基礎講座3.ビームライン 後藤俊治(JASRI)

ビームラインは, 挿入光源や偏向電磁石から放射されるシンクロトロン放射光を実験装置まで導くためのものである. ビームラインの途中での吸収・散乱による放射光のロスを防ぐため, 真空ポンプを用いて真空に保たれている. シャッタを用いて放射光の導入と遮断がおこなわれる. 適当な位置に分光器, ミラー, スリットなどの機器が並べられて実験装置までに, 波長およびバンド幅, 空間的広がり・角度的広がりなどが制御され, 利用者の必要とする光が供給される. これらの機器の多くはX線の散乱源となるため遮蔽ハッチで囲うことにより放射線遮蔽がほどこされている. 本講義では, ビームラインの全体像について概説する.

基礎講座4.X線の強度を測る 八木直人(JASRI)

ほとんどすべての放射光実験は,X線の強度を測定する実験です。それではX線の強度を測るにはどんな方法があるでしょうか?多くの種類のX線検出器がありますが,それらはどのような原理に基づいてX線強度を測定しているのでしょうか?そもそもX線の強度とは何でしょうか?X線強度を正確に測定するには,何に気をつけたらよいでしょうか?測定したX線強度は,どのような過程を経てデータ処理されるのでしょうか?等々の疑問にお答えします。

応用講座

応用講座1.タンパク質結晶構造解析 村本和優(兵庫県立大学)

近年、高輝度の放射光を用いることによって多くのタンパク質の立体構造が決定され、さらに高分解能での構造解析が可能となっている。構造決定数の増加ならびに解析精度の向上はタンパク質の持つ機能やその原子レベルでの反応機構ついて多くの知見を与え、生命機能の理解ならびに生命科学関連分野への応用に役立てられている。本講座では放射光を用いたタンパク質結晶構造解析に関する手法とX線回折法の原理を中心に解説する。また、具体的な解析例についても紹介したい。。

応用講座2.軟X線分析 村松 康司(兵庫県立大学)

一般に,波長が約0.1〜数十nmの軟X線は物質に対する透過能が低く,薄い空気層によっても容易に吸収されます。これは物質を構成する軌道電子と軟X線との相互作用が強いためであり,逆に軟X線をプローブとしてこの相互作用を観測すれば,電子状態や化学状態に関する分析情報を引き出すことができます。本講義では,軟X線放射光をプローブとした代表的な分析応用として,軟X線吸収分光法,軟X線発光分光法,軟X線光電子分光法などについて概説します。

応用講座3.XAFS 宇留賀朋哉(JASRI)

物質によるX線の吸収量を高い精度で測定すると微細な変動が観察される。これをX線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Structure)、略してXAFS(ザフス)と呼ぶ。XAFSを解析すると、非晶質物質の原子レベルの構造や原子価など、他の手法では得難い情報が得られる。世の中の多くの物質は非晶質なのでとても役に立つ。本講義では、実験手法や解析手法、先端物質への応用例について紹介する。

応用講座4.微細加工 渡邊 健夫(兵庫県立大学)

MPUやメモリ等の超LSI素子はムーアの法則にしたがい約1年から2年毎に4倍の高集積化が図られており、半導体微細加工技術の進歩によるところが大きい。2010年からの32nm世代以降の半導体量産技術として極端紫外線リソグラフィ(EUVL)技術が導入される。ニュースバル放射光施設ではこのEUVL技術の開発を進めている。講義ではこの最先端の微細加工技術の開発の現状とその将来像について分かり易く紹介する。