大型放射光施設 SPring-8

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2009年夏の学校 講義概要

基礎講座

基礎講座1.放射光の発生 北村英男(理研)
放射光とは、高エネルギー電子が磁場あるいは電場中で偏向を受ける時に発生する電磁放射で、指向性に優れているため輝度が高く、赤外から可視光、紫外、真空紫外、軟X線、X線を経てガンマ線に至る広大な波長域をカバーする。放射光源をその発生原理で大別すると、偏向部放射光、アンジュレータ放射光、および自由電子レーザーとなるが、いずれも高エネルギーの電子加速器が必要となる。本講義では放射光概論とこの発生に不可欠な加速器原理の初歩に触れる予定である。

基礎講座2.ビームライン 後藤 俊治(JASRI:高輝度光科学研究センター)
ビームラインは, 偏向電磁石や挿入光源から放射される放射光をエンドステーションの実験装置に導くためのものである. 利用目的に応じて, その途中で分光器による単色化や光子エネルギーの選択, ミラーによるビーム集光や高エネルギー成分の除去などX線光学的な処理をおこなうだけでなく, 放射線安全の確保や, 基幹チャンネルを中心に高強度放射光の熱負荷の対処をするなど,多くの機能の複合体である. 本講義では, エンドステーションを利用するだけでは見ることのできないビームラインの上流部分について概説する.

基礎講座3.X線の強度を測る 八木 直人(JASRI)
ほとんどすべての放射光実験は,X線の強度を測定する実験です。それではX線の強度を測るにはどんな方法があるでしょうか?X線検出器はどのような原理に基づいてX線強度を測定しているのでしょうか?そもそもX線の強度とは何でしょうか?X線強度を正確に測定するには,何に気をつけたらよいでしょうか?測定したX線強度は,どのような過程を経てデータ処理されるのでしょうか?等々の疑問にお答えします。


応用講座

応用講座1.X線自由電子レーザー 新竹積(理研)
現在SPring-8にX線自由電子レーザー施設(XFEL/SPring-8、X線FEL)が建設中です。このX線レーザーを使えば、これまで結晶化が困難なためX線構造解析が不可能とあきらめられていた膜タンパク質など生理学上重要な物質の3次元構造の解析が可能となります。この講座では、X線FELの歴史的な位置付けと国際的な状況、その動作原理、加速器構成、技術開発の状況、そして得られる光の特徴と応用分野について、初心者にもわかりやすく説明します。

応用講座2.コンプトン散乱 小泉昭久(兵庫県立大)
コンプトン散乱は、高校の物理の教科書にも取り上げられており、聞き覚えのある物理現象であると思われるが、大学で用いる教科書的な書籍においてさえ、光子と静止した電子の散乱として取り扱われている場合が殆どであり、散乱後の光子の波長が変化する現象として説明されている。実際には、物質中の電子は運動しているので、その運動量を反映したプロファイルとして観測される。本講義では、放射光を用いたコンプトン散乱実験の特徴や研究例を紹介し、この実験によって得られる物理的な情報について解説する。

応用講座3.タンパク質結晶構造解析 木下誉富(大阪府立大学)
SPring-8には、タンパク質結晶構造解析を目的としたビームラインが10本あります(全62本)。そこから多くのタンパク質の立体構造が解析され、生命現象の原子レベルでの理解、それに基づく医薬品設計などの研究を促進しています。本講座ではX線回折法の基本原理と放射光を用いたデータ測定および構造解析に関する手法を解説し、具体例として病因タンパク質の構造決定とそれに基づく創薬手法について紹介します。

応用講座4.粉末構造解析 坂田誠 (JASRI)
粉末構造解析講座では、1.回折の基礎理論を簡単に説明した後、2.一般的な粉末構造解析の方法について述べる。その際、粉末法の中での異なった実験方法について比較検討し、それぞれの方法の特徴を明らかにする。次に、3.放射光粉末法の特徴について論じる。そして、最後に4.先端的放射光粉末法では、何が出来るのかに着目し、具体例をいくつか紹介することとする。時間が許せば、中性子粉末法との相補性について論じることにする。