大型放射光施設 SPring-8

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2014年夏の学校 実習概要

16件17件の実習課題を予定しています。受講者の皆さんにはこの中から2テーマを選択していただきます。ただし、特定のテーマに希望者が集中した場合、ご希望に添えるとは限りませんのでご了承下さい。なお、装置故障等の不測の事態により予定が変更される場合がありますので、ご理解をお願い致します。(応募者多数のため、実習可能ビームラインを1本追加し、実習課題は17件になりました。)

BL01B1:"その場" XAFS計測 --- 宇留賀 朋哉・新田 清文・加藤 和男・伊奈 稔哲(JASRI)

XAFS法は、結晶構造を形成していない物質や、濃度が希薄な試料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、広い研究分野で利用されている。本実習では、まずXAFS計測を行うための試料調整と、放射光光学素子の位置調整について実習を行う。その後、触媒粒子の形成反応に対して、"その場"XAFS測定を行い、触媒粒子内でどのような構造変化や電子状態変化が起こるかを解析する。

BL02B1:単結晶構造解析の入門 --- 池田 直(岡山大学)杉本 邦久(JASRI)

結晶構造解析は、単結晶が持つ逆格子空間を探り、そのなかに存在するブラッグ点の精密な座標位置と回折線強度を集計して計算・解析される。この実習ではBL02B1 に整備された4軸回折計と振動写真装置両方を用いて、逆格子空間をどのように考えたら良いのかと言う基本を学び、実際の装置を用いデータの収集とその処理計算について実習する。

BL04B2:高エネルギーX線回折を用いた浮遊液体の3次元構造解析 --- 小原 真司・藤原 明比古(JASRI/北陸先端科学技術大学院大学)

液体は原子の並び方に結晶のような秩序がないと考えられていますが、はたしてはまったく秩序がないのでしょうか?近年、液体を容器なしで浮遊させる「無容器法」が注目されています。本実習では、水や高温液体を容器なしで浮遊させ、SPring-8の高エネルギー放射光でその原子配列の観察を試みます。さらにコンピューターシミュレーションを併用して、この液体構造固有のネットワーク原子配列を明らかにします。

BL07LSU:軟X線で見る宝石の輝き --- 原田 慈久・和達 大樹(東京大学)

物質の様々な色は、光との相互作用によってもたらされます。しかし色(うわべ)だけ見ても、その物質が何からできているか(本質)はわかりません。例えば、金と真鍮は同じ金色ですが、真鍮は2つの金属の混合物です。本実習では、ルビーやサファイアといった宝石を取り上げます。物質の化学組成や物性を支配する電子状態を直接調べることができる軟X線吸収分光法を用いて、宝石の色を決める要因について一緒に考察します。

BL11XU:半導体結晶成長のその場X線回折測定 --- 高橋 正光(JAEA)

最先端の電子デバイスの作製においては、原子レベルで構造を制御した人工的な結晶を成長させることが必要とされています。高輝度放射光を用いると、結晶成長のような動的な現象にともなう物質の構造変化をその場測定することが可能になり、精密な構造制御につながる情報を得ることができます。本実習では、半導体の薄膜結晶を成長させながら、その表面構造を放射光X線回折で観察し、結晶成長のメカニズムを考察します。

BL13XU:放射光マイクロX線回折法入門 --- 木村滋(JASRI/岡山大学)

SPring-8のような第三世代放射光施設の最大の特長は輝度が高いことにあります.この特長は微小なX線ビームを形成することを可能にします.本実習では,SPring-8の放射光をゾーンプレートと呼ばれる集光素子でサブミクロンサイズに集光するとともに,その集光ビームを利用したX線回折を実施します。この手法が局所領域構造を調べる上で非常に有効であることを,ミクロン領域に選択成長した半導体細線を測定することで実感してもらいます。

BL14B2:XAFS分析の基礎 --- 本間 徹生(JASRI)

XAFS法は、結晶化していない物質や、濃度が希薄な材料に対しても、局所構造や電子状態を解析できる手法として、触媒、電池、発光材料など様々な研究分野で利用されています。本実習では、XAFS計測を行うための試料調整と、その原理に忠実な透過法による測定およびフリーの解析ソフトを用いたスペクトル解析を行い、XAFS分析の基礎について学んで頂く予定です。

BL17SU:軟X線を使った液体中の分子の電子状態観測 --- 徳島 高(理研)

軟X線は大気圧中での透過率が低く液体の研究には使いにくいX線である。しかし、近年、実験技術の進歩により、軟X線を使った液体中の分子の電子状態観測が可能になってきた。実習では100nm程度の薄膜により大気圧下の試料と真空を仕切る構造の液体セルを使った、軟X線発光、吸収分光法による大気圧下の液体試料の電子状態観測を行う。

BL19B2:粉末X線回折 --- 大坂恵一(JASRI)、廣沢一郎(JASRI/岡山大学)

粉末X線回折は、構造解析技術として物質科学研究での重要な技術であるばかりでなく、複数の化合物から成る材料の組成分析技術として産業界(企業)でも広く用いられています。高輝度な放射光を用いた粉末X線回折では、通常は検出が困難な微量成分も短時間で測定できるため、機能性セラミックスの開発などに盛んに用いられています。今回は、BL19B2の大型デバイシェラーカメラで良質なデータを取得するための装置調整と測定の実習を予定しています。

BL20B2:X線画像検出器の評価 --- 上杉 健太朗(JASRI)

X線画像検出器は、X線回折・小角散乱・X線画像計測など様々な計測手法において利用されている、2次元像(画像)を取得できる装置である。本実習では、それらの実験で用いられるいくつかの画像検出器の評価を行う。これにより各検出器の特徴を理解し、その特性を知る事を目的とする。

BL22XU:X線回折法を利用した金属材料応力・ひずみ評価 --- 菖蒲 敬久(JAEA)

構造物には、製造、加工工程において残留(静的)応力・ひずみが、使用中において熱・負荷(動的)応力・ひずみが発生し、構造物が持つ限界値を超えると破壊につながります。そのためこの「隠れた力(応力・ひずみ)」を計測し、材料強度評価することが産業界では非常に重要視されております。実習では、材料強度学に関して簡単に講義した後、金属材料を伸ばしながらX線回折測定を行っていただき、得られた原子間距離から材料の伸び(ひずみ)や応力を算出、その結果と一般的にひずみ評価で用いられているひずみゲージの値を比較し、金属の弾塑性変形現象をミクロレベルで考察します。

BL24XU:微小領域高精度X線回折 --- 津坂 佳幸(兵庫県立大学)

近年の半導体デバイスの構造は,高機能化,高集積化の要求にともなって,極めて微細かつ複雑になりつつある.一方で,それらのデバイス特性は,その結晶性に敏感であり,その評価には高精度X線回折が有用である.本実習では,高輝度光源を用いることで初めて可能となる,微小領域の結晶性を高精度で評価する手法の取得を目指す.具体的には,微小領域高精度回折実験のための光学系の形成と,その応用例としてシリコン基板の結晶性評価を行う.

BL26B1:単結晶回折(タンパク質) --- 平田 邦生(理研)
BL26B2:単結晶回折(タンパク質) --- 熊坂 崇(JASRI/理研/関西学院大学)

単結晶X線回折は、分子の立体構造を原子レベルで詳細に明らかに出来る強力な手法で、幅広い分野で利用されています。生命科学分野においてもタンパク質の構造から機能を明らかにする構造生物学研究の主要な手法として用いられていますが、分子量が大きいことや回折分解能が限られているために、さまざまな手法が開発され独自の発展を遂げています。本実習ではこの解析の一連の流れを習得するために、CCD検出器による結晶回折データ測定と位相決定、計算機を用いた分子構造の構築と精密化を体験していただきます。
(BL26B1とBL26B2は同一内容となります。)

BL40B2:X線小角散乱法を用いたタンパク質分子の構造解析 --- 八木 直人・関口 博史(JASRI)

X線小角散乱法(SAXS)は、数nmから数µmの大きさや周期を持つ物質について、ダイレクトビーム近傍に観測される散乱X線の強度分布から、その構造を解析する手法です。これは高分子から粘土まであらゆる種類の物質に応用できる手法ですが、タンパク質溶液に適用することにより、“生きた状態”に近いタンパク質分子の構造を知ることができます。本実習ではタンパク質溶液からの散乱データ収集および分子構造予測に至る一連の解析を行い、タンパク質分子の構造-機能相関について考察します。SAXSの基礎と測定手法に関する知識は、タンパク質以外の試料にも役立つと思います。

BL46XU:X線反射率 --- 小金澤 智之(JASRI)

可視光と同じようにX線も屈折率が変化する界面においてX線の反射・全反射・屈折が起こります。これらの現象を利用した分析手法がX線反射率です。X線反射率では膜厚が数nmの薄膜の密度や膜厚を評価することができます。実習ではシリコン基板やガラス基板に成膜された薄膜の膜厚評価を通して、X線の反射・全反射現象を体験していただきます。

ニュースバル:炭素を含む物質の軟X線吸収スペクトル測定 --- 新部 正人(兵庫県立大学)

放射光を用いた物性研究において、物質の吸収スペクトル測定は基本的な手法のひとつである。また軽元素の軟X線吸収分光法においては、吸収端近傍微細構造(NEXAFS)の解析が重要となる。本テーマでは炭素を含む代表的な物質として、高配向性熱分解グラファイト(HOPG)の軟X吸収スペクトル測定を実習する。HOPGの吸収スペクトルの入射角依存性を測定することにより、炭素が持つπ結合とσ結合がスペクトルにどのように反映されるかを体験する。