焼結ダイヤモンドアンビルを用いた高圧実験
問い合わせ番号
SOL-0000001280
ビームライン
BL04B1(高温高圧)
学術利用キーワード
A. 試料 | 無機材料 |
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B. 試料詳細 | 金属・合金, 結晶 |
C. 手法 | X線回折 |
D. 手法の詳細 | 粉末結晶構造解析 |
E. 付加的測定条件 | 高圧(大型プレス), 応力付加、変形, 高温(>>500度) |
F. エネルギー領域 | X線(>40 keV) |
G. 目的・欲しい情報 | 結晶構造, 構造変化, 相転移 |
産業利用キーワード
階層1 | 機械, 金属, 工業材料, その他 |
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階層2 | 構造材(鉄、非鉄) |
階層3 | |
階層4 | 格子定数, 結晶構造, 結晶多形 |
階層5 | 回折 |
分類
A80.20 金属・構造材料, M10.20 粉末結晶回折
利用事例本文
地球の中心核は鉄でできていると考えられており、これまでに高温高圧下の鉄については数多くの研究が行われています。1970年代までに、鉄には4つの多形、相(bcc)、相(fcc)、相(hcp)、相(bcc)が存在することが知られていました。しかし、1990年代にダイヤモンドアンビル(DAC)の実験から、5番目の多形の相(dhcp、斜方晶)が1500 K、35 GPa以上の高温高圧下で存在することが主張されています。もし相が存在すると、地球の中心核はこれまで考えられていた相ではなく、相で構成されていることになります。これまでDAC以外では30 GPa以上の圧力で実験を行うことができなかったため、他の方法でその存在を確かめることはできませんでした。しかし、焼結ダイヤモンドアンビルを用いた大容量高圧プレス装置とエネルギー分散型X線回折を使うことによって、2000 K、40 GP以上の高温高圧実験を行うことができるようになりました。図に実験で得られた鉄の相平衡図を示します。実験より、2100 K、44 GPaまでの高温高圧下では相と相以外の相は存在しないことが確認されました。この結果から、鉄の相は安定相ではなく、DACの実験特有の強い1軸圧縮によって生じた準安定相である可能性が出てきました。
図 実験によって決定された鉄の相平衡図。白抜きの四角(dhcp)とダイヤ(斜方晶)はDAC実験から得られた相
[ A. Kubo, E. Ito, T. Katsura, T. Shinmei, H. Yamada, O. Nishikawa, M.-S. Song and K. Funakoshi, Geophysical Research Letters 30, 1126 (2003), Fig. 3,
©2003 American Geophysical Union ]
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所内報
誌名
Research Frontiers, 2001B-2002A
ページ
69
測定手法
図は、川井型大容量高圧プレス装置を用いたときのエネルギー分散型X線回折の概略です。偏向電磁石からの白色X線は、垂直、水平スリットによって典型的に0.05(垂直) x 0.1(水平) mm2に絞られます。エネルギー分散型X線回折用に、第1段アンビルにはX線が通る穴が開けられおり、白色X線はそこから第1段アンビルを抜けて、第2段アンビル間の水平方向の隙間を通り抜けます。高温高圧試料からの回折X線は、4096個のマルチチャンネルアナライザーを持つ純ゲルマニウム半導体検出器(SSD)で検出されます。このとき、20~150 keVまでエネルギーの回折データを得ることができます。ある回折角で固定されたコリメーター(0.05 mm幅)と受光スリットを通すことで、試料からの回折X線のみが検出されます。水平ゴニオメータは、0.0001°の精度で-10から23°までの回折角2θを移動できます。このシステムでは、だいたい数分間で1つの回折線を得ることができます。
図 川井型大容量高圧プレス装置を用いたエネルギー分散型X線回折の概略図
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BL評価レポート
ページ
14
測定準備に必要なおおよその時間
1 日
測定装置
装置名 | 目的 | 性能 |
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SPEED-Mk.II | 高温高圧実験 | 2500 K、50 GPa |
SPEED-1500 | 高温高圧実験 | 2500 K、30 GPa |
参考文献
文献名 |
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Geophys. Res. Lett., 30, 1126(2003) |
関連する手法
アンケート
SPring-8だからできた測定。他の施設では不可能もしくは難しい
本ビームラインの主力装置を使っている
ユーザー持ち込み装置を使った
測定の難易度
熟練が必要
データ解析の難易度
中程度
図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数
10シフト以上