大型放射光施設 SPring-8

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BL31LEP 概要

問い合わせ番号

INS-0000001563

ビームラインの概要

 レーザー電子光ビームは蓄積リング内8 GeV電子と外部より入射される紫外(又は深紫外)レーザー光との逆コンプトン散乱によって得られるGeV領域の偏極高エネルギーガンマ線ビームであり、その波長が典型的なハドロンの大きさ(~1 fm)より短くなるため、そのサブ構造であるクォークの世界までの探究に利用可能である。既に1999年度から稼働しているBL33LEP(LEPS実験)においては、このレーザー電子光ビームを主に液体水素標的や液体重水素標的に照射してハドロン光生成反応を行い、ペンタクォーク粒子Θの存在の示唆やバリオン共鳴状態の研究などで重要な成果を得てきたが、統計精度の向上や生成・崩壊機構の解明のためには、ビーム強度の増強と検出器の大型化に限界があった。
 BL31LEPは2本目のレーザー電子光ビームラインとして建設され、2013年1月に最初のビームを得て、コミッショニングが開始された。逆コンプトン散乱で反跳された電子を偏向電磁石下流のクロッチチェンバーのアルミ窓から取り出してタギングすることにより、1.4 GeV~3.0 GeVのビーム光子のエネルギーを求めることができ、一度に広いエネルギー範囲で測定が可能である。BL31LEPにおけるLEPS2実験では、高出力の複数レーザーの同時入射によるビーム強度の一桁向上と、蓄積リング棟外の広いスペースに専用実験棟を建設し、大立体角・高分解能検出器を設置して実験を行うことを2つの目玉としており、これらを駆使してクォーク核物理研究のいっそうの進展を図る。

BL31LEPの概観図

研究分野

  • レーザー逆コンプトン散乱による大強度GeV光ビームの生成
  • 光―核子反応、光―原子核反応によるハドロン物理
  • GeVガンマ線及び変換電子/陽電子を用いた検出器の試験・較正

キーワード

  • 科学領域
    クォーク核物理、ハドロン光生成、レーザー電子光、偏極、ペンタクォーク、エキゾチック状態、核媒質中の質量変化
  • 装置
    紫外レーザー、深紫外レーザー、タギング検出器、BGO電磁カロリメータ、大立体角スペクトロメータ、ドリフトチェンバー、タイムプロジェクションチェンバー、高抵抗板チェンバー、中性子ホドスコープ、TOPカウンター、SSD、偏極光子、偏極標的、高速データ収集系

光源と光学系

 レーザー電子光ビームの光源は、蓄積リング長直線部での電子と蓄積リング外部より入射するレーザーとの散乱点であり、収納部側壁外部に専用のレーザー室を設置している。長直線部での蓄積電子ビームの角度発散が非常に小さい(12 μrad)ので細く平行なレーザー電子光ビームが得られる。セル31の真空チェンバーをレーザー光導入部の大口径化、及び反跳電子タギングのために改造している。
 レーザー室内には355 nm紫外レーザーと266 nm深紫外レーザー用の2台の定盤が置かれ、プリズム型ミラーを通してそれぞれ4台同時入射が可能な構成となっている。前者によるガンマ線の最大エネルギーは2.4 GeVで大強度であり、後者の場合は強度は一桁落ちるが最大エネルギーが2.9 GeVとなる。どちらのビームを利用するかは実験によって使い分ける。

BL31LEP用蓄積リング内長直線部の模式図。

レーザー入射室及び収納部内フロントエンド部。

実験ステーション

  • ビーム
    Energy Range (tagged photon) 1.4 - 2.4 GeV (355-nm UV Solid-state laser)
    1.4 - 2.9 GeV (266-nm DUV Solid-state laser)
    Energy Resolution < 15 MeV
    Photon Flux < 2 x 107 photons/s (355-nm lasers)
    < 2 x 106 photons/s (266-nm lasers)
  • 実験棟
    蓄積電子とレーザー光の衝突点より約135 m下流に18 m×12 mの敷地面積を持つLEPS2実験棟が建設され、2011年3月に竣工した。生成されたレーザー電子光ビームは真空ビームパイプを通って、実験棟まで輸送される。
  • LEPS2実験棟及び冷却設備。

  • 検出器
    LEPS2実験で用いる大型荷電スペクトロメータ用検出器系は鉄ヨークの直径が5 mで総重量が約400トンの 1 Tソレノイド磁石の中に設置される。磁石は米国ブルックヘブン国立研究所(BNL)でK中間子稀崩壊実験(E949)に使用されていた物であり、長さ2.22 m、直径2.96 mの空洞領域を有している。磁石内部に入る検出器群(大口径飛跡検出器や粒子識別検出器)は2015年度稼動を目指して、開発・製作が進められている。
    実験棟の上流側スペースには、大立体角電磁カロリメータBGOeggが設置されている。東北大学電子光理学研究センターで建設された、20放射長のBGO結晶を1320本、卵型に組上げた世界最高エネルギー分解能を持つカロリメータであり、2013年度後期より、高抵抗板チェンバー(RPC)による前方飛行時間測定装置と合わせて実験を開始する。

    (左)BNLから移設した直径5 mの大型ソレノイド電磁石
    (右)恒温ブース内に設置された、電磁カロリメータBGOegg

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    BL31LEP PUBLICATION SEARCH

    連絡先

    石川 貴嗣
    大阪大学核物理研究センター
    〒567-0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘10-1
    Phone : 06-6879-8942(PHS:3245 at SPring-8)
    e-mail : ishikawarcnp.osaka-u.ac.jp

    Website

    http://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/Divisions/np1-b/?LEPS2_%28BL31LEP%29

最終変更日 2022-10-03 14:43