大型放射光施設 SPring-8

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パーソナルツール
 

状態選別XAFS分光

  • Spring8ならでは

問い合わせ番号

SOL-0000001610

ビームライン

BL39XU(X線吸収・発光分光)

学術利用キーワード

A. 試料 無機材料
B. 試料詳細 金属・合金, 半導体, 超伝導体, 磁性体, 絶縁体・セラミックス, 結晶性固体, 非晶質、ガラス, 液体・融体, 環境関連物質
C. 手法 非弾性散乱, 吸収、及びその二次過程
D. 手法の詳細 非弾性分光, XAFS
E. 付加的測定条件 偏光(直線), 偏光(円、楕円), 低温(〜液体窒素), 室温
F. エネルギー領域 X線(4~40 keV)
G. 目的・欲しい情報 化学状態, 結合状態, 局所構造, 電子状態、バンド構造, スピン・磁性構造, 相転移

産業利用キーワード

階層1 半導体, 記憶装置, 電池, 環境
階層2 HD、MO, 燃料電池, 触媒
階層3 磁性層
階層4 局所構造, 電子状態, 価数, 化学状態
階層5 XAFS, X線散乱

分類

A80.14 磁性材料, A80.34 触媒化学, A80.40 環境材料, M40.10 XAFS

利用事例本文

状態選別XAFS分光法は特定原子の状態を選別して、その化学状態や電子状態を調べることのできる強力な手法です。この手法を用いることで、様々な環境下における物質中の特定の元素だけでなく、その元素の価数やスピン状態を選択して、結合状態や配位環境、電子状態に関する情報を取得することができます。SPring-8 BL39XU では硬X線領域(5-16 keV)の直線偏光や円偏光X線を利用できるため、3d遷移金属、4f希土類元素、5d遷移金属といった幅広い元素に対してこの手法を適用することができます。これは、材料科学だけでなく、触媒化学や環境科学に対しても適用できることを意味しています。

図に示すのは、MnOについて測定したMn K-吸収端(1s3d, 4p)でのスピン選別XAFSスペクトルです。Mn 3p1s発光スペクトルの入射光エネルギー依存性の結果を解析することによって、アップスピンおよびダウンスピンをもつ1s電子による励起に対するXAFSスペクトルをそれぞれ分離して得ることができました。

図: Mn 3p1s 発光スペクトルから導出されたMnOのスピン選択XAFSスペクトル。

[ H. Hayashi, M. Kawata, Y. Udagawa, N. Kawamura and S. Nanao, Physical Review B 70, 134427 (2004), Fig. 3,
©2004 American Physical Society ]

 

画像ファイルの出典

原著論文/解説記事

誌名

H. Hayashi et al. Phys. Rev. B 70, 134427 (2004).

図番号

Fig. 3

測定手法

状態選別XAFS分光法は、試料からの蛍光X線(非弾性散乱X線)を分光し、それを入射X線のエネルギーの関数として測定することによって得られます。この例では、MnOにおけるMn原子のアップスピン励起とダウンスピン励起によるエネルギー損失の相違を利用して、スピン選別したXAFSスペクトルが得られます。二次光学過程を利用しているため、得られる信号強度が微弱であり、最近では図2に示すような分光結晶を多数枚用いた高感度測定が行われております。

図1: エネルギー分散型(円筒集光型)発光スペクトル測定原理。

 

図2: マルチ結晶型発光分光器(エネルギー分散型)。

 

[ H. Hayashi, M. Kawata, R. Takeda, Y. Udagawa, Y. Watanabe, T. Takano, S. Nanao and N. Kawamura, Journal of Electron Spectroscopy and Related Phenomena 136, 191-197 (2004), Fig. 1, 3,
©2004 Elsevier Science Publisher ]

 

画像ファイルの出典

原著論文/解説記事

誌名

H. Hayashi et al., J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom. 136, 191 (2004).

図番号

Fig. 1, 3

測定準備に必要なおおよその時間

12 時間

測定装置

装置名 目的 性能
二次元位置敏感型検出器付マルチ結晶分光器 エネルギー範囲100-200 eVのスペクトルを一度に測定 エネルギー分散型、最大5結晶利用可
X線発光の磁気円二色性測定用X線発光分光器 X線発光の磁気円二色性スペクトルの測定 エネルギー分散型、1結晶のみ、最大印加磁場 2T

参考文献

文献名
H. Hayashi, M. Kawata, Y. Udagawa, N. Kawamura, and S. Nanao, Phys. Rev. B 70, 134427 (2004).
H. Hayashi, M. Kawata, R. Takeda, Y. Udagawa, Y. Watanabe, T. Takano, S. Nanao, and N. Kawamura, J. Electron Spectrosc. Relat. Phenom. 136, 191 (2004).
林久史, 分光研究 Vol. 53, No. 5, 283 (2004).

関連する手法

EXAFS/XAFS分光、X線磁気円二色性、X線ラマン散乱、X線共鳴発光分光

アンケート

SPring-8だからできた測定。他の施設では不可能もしくは難しい
ユーザー持ち込み装置を使った

測定の難易度

中程度

データ解析の難易度

中程度

図に示した全てのデータを取るのにかかったシフト数

4~9シフト

最終変更日 2024-07-02 16:05