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東京大学豊島近教授が2009年度朝日賞を受賞(トピック)

公開日
2010年01月07日
  • 受賞

朝日賞(朝日新聞文化財団主催)は、学術、芸術などの分野で傑出した業績をあげ、日本の文化や社会の発展、向上に貢献した個人・団体に贈られる賞です。SPring-8のユーザーである東京大学の豊島近教授が、2009年度朝日賞を受賞されました。

受賞者:
東京大学分子細胞生物学研究所教授 豊島 近(とよしま ちかし)

東京大学教授 豊島 近

研究業績:
カルシウムポンプ作動機構の解明

研究内容:
カルシウムポンプ蛋白質は生体膜に埋め込まれた膜蛋白質であり、ATP(アデノシン三燐酸)の加水分解によって放出されるエネルギーを利用し、濃度勾配に逆らってカルシウムイオンを輸送する。たとえば、筋肉の収縮のために、カルシウムの貯蔵庫である筋小胞体から放出されたカルシウムイオンを、筋小胞体中に汲み戻すことによって、筋肉の弛緩をもたらす。このポンプ蛋白質の作動機構を原子構造に基づいて理解することが本研究の目的である。2000年に最初の「カルシウム結合状態」の結晶構造を決定して以来、SPring-8の構造生物学IビームラインBL41XUを用い、運搬サイクル全体をほぼカバーする9つの中間状態の結晶構造を決定し、作動機構を解明した。

受賞理由:
豊島教授グループは、困難なことで知られる膜蛋白質の結晶化に取り組み、独自の技術を開発してカルシウムポンプ蛋白質の構造決定に成功した。さらには、反応サイクル中の中間状態の構造を次々と決定し、濃度勾配に逆らってイオンを輸送するという複雑な動作を原子構造に基づいて説明するという画期的な研究を成し遂げた。しかも、構造変化の大きさは誰も予想し得なかったものであり、多くの派生的研究を促進するなど、構造生物学に多大なインパクトを与えた。

朝日賞授賞式 豊島近

贈呈式(2010年1月28日、東京・日比谷 帝国ホテル)