大型放射光施設 SPring-8

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三次元ナノESCA装置を用いて70nm空間分解能で角度分解測定を実証(トピック)

公開日
2011年11月25日
  • BL07LSU(東京大学放射光アウトステーション物質科学)

2011年11月25日
東京大学

 東京大学大学院工学系研究科尾嶋正治教授のグループは、同グループの堀場弘司助教が中心になって同豊田智史特任助教、永村直佳博士研究員、KEK組頭広志教授、雨宮健太准教授らと共同で開発した三次元ナノESCA装置をSPring-8の東京大学放射光アウトステーション(BL07LSU)に設置し、70nm空間分解能で角度分解測定が出来ることを初めて実証しました。東大アウトステーションではアンジュレータを8台直列に繋ぎ、世界最高輝度の軟X線を取り出すことが出来ます。三次元ナノESCA装置には新しく開発したゾーンプレート(円形回折格子)、60度の広い角度で光電子を一挙に検出する電子分析器が取り付けられており、70nmに絞った軟X線ビームを試料の所望の場所に照射して、角度分解でかつ高いエネルギー分解能で光電子のエネルギー分析を行うことが出来ます。これは一種の走査型光電子顕微鏡ですが、角度分解した光電子の強度から最大エントロピー法によって深さ方向分布を正確に求めることが出来る点が従来の光電子顕微鏡と大きく異なります。
 東大グループはこの分析システムをLSIのゲート電極パターンに適用して、好きな場所の深さ方向分布測定が可能であることを実証しました。この成果が今回の論文になりました。さらに、数100nm幅の抵抗変化不揮発メモリーやグラフェンFETなどのピンポイント光電子分光測定も実現しており、多くのナノデバイスのピンポイント故障解析に応用することが期待されています。
 この成果は放射光関係の装置論文が多く掲載されているReview of Scientific Instruments誌に掲載されました。

(論文)
"Scanning photoelectron microscope for nanoscale three-dimensional spatial-resolved electron spectroscopy for chemical analysis"
K. Horiba1,2,3, Y. Nakamura1, N. Nagamura1, S. Toyoda1, H. Kumigashira1,2,4, M. Oshima1,2,3, K. Amemiya3,5, Y. Senba6, and H. Ohashi6
1 Department of Applied Chemistry, The University of Tokyo, Tokyo 113-8656, Japan
2 Synchrotron Radiation Research Organization, The University of Tokyo, Tokyo 113-8656, Japan
3 Core Research for Evolutional Science and Technology (CREST), Japan Science and Technology Agency (JST), Tokyo 102-0075, Japan
4 Precursory Research for Embryonic Science and Technology (PRESTO), Japan Science and Technology Agency (JST), Saitama 332-0012, Japan
5 Photon Factory, Institute of Materials Structure Science, High Energy Accelerator Research Organization (KEK), Tsukuba 305-0801, Japan
6 JASRI/SPring-8, Hyogo 679-5198, Japan
Review of Scientific Instruments. 82, 113701 (2011)

《参考資料》

図1

図2


《問い合わせ先》

 国立大学法人 東京大学大学院工学系研究科
  教授 尾嶋 正治
   TEL:03-5841-7191 FAX:03-5841-8744

(SPring-8に関すること)
 高輝度光科学研究センター 広報室
  TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
  E-mail:kouhou@spring8.or.jp