大型放射光施設 SPring-8

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SACLAが「SXFELビームライン」の共用運転を開始 ―軟X線FELと硬X線FELを同時に供給する世界初の施設を実現―(トピックス)

公開日
2016年07月25日
  • SACLA

2016年6月25日
理化学研究所
高輝度光科学研究センター

 理化学研究所(理研)、高輝度光科学研究センター(JASRI)は、X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free-Electron Laser)施設[1]SACLA[2]の「SXFELビームライン」について7月15日に初のユーザーによる利用研究課題を実施しました。
 SACLAは波長0.1ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)以下という世界最短波長の硬X線FEL[3]を発振する施設として、これまでに数多くの成果をあげてきました。一方で、触媒機能の解明やEUVリソグラフィのための基盤研究など、軟X線が得意とする領域が存在することから、軟X線FEL[3]にも大きな期待が寄せられていました。
 そこで理研とJASRIは、SACLAのプロトタイプ機として利用された「SCSS試験加速器[4]」も活用しながら、既存のBL1で軟X線FELを発振するための高度化を進めてきました。2015年10月には、波長30ナノメートル付近においてレーザー発振を確認し、その後の調整運転を経て、2016年4月にはBL1の正式名称を「SXFELビームライン」としています(SXとはSoft-X ray=軟X線の略)。7月15日にはSXFELビームラインで最初の利用研究課題として、東京大学の松田巌准教授らの研究グループによる実験が実施されました。
 SXFELビームラインは今後、さらなる調整により、2016年秋以降は最短波長が12nm以下まで到達する見込みです。
 SACLAは、世界で唯一の軟X線FELと硬X線FELを同時に供給する施設として、さまざまな学術・産業の発展に今後も一層貢献していきます。

図1 SXFELビームラインの実験ステーション
図1 SXFELビームラインの実験ステーション
 
図2 SXFELビームラインで初の利用研究実験を実施した松田准教授のグループ
図2 SXFELビームラインで初の利用研究実験を実施した松田准教授のグループ

 


<関連プレスリリース>
2006年6月22日 プレスリリース
「X線自由電子レーザー(XFEL)試験加速器からレーザー光の発振に成功」
2008年7月28日 プレスリリース
新しい科学技術を創る小型自由電子レーザー
2011年6月7日 プレスリリース
夢の光をついに実現
2012年6月25日 プレスリリース
「コンパクトXFEL」SACLAの有用性、世界が認識
2015年6月8日 トピックス
SACLAが新しいビームラインの共用を開始
2016年4月26日 トピックス
SACLAで「SXFELビームライン」が稼働


《補足解説》
*1 X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray free electron laser)

近年の加速器技術の発展によって実現したX線領域のパルスレーザー。従来の半導体や気体を発振媒体とするレーザーとは異なり、真空中を高速で移動する電子ビームを媒体とするため、原理的な波長の制限はない。

*2 SACLA
理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。科学技術基本計画における5つの国家基幹技術の1つで、2006年度から5年間の計画で建設・整備された。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用を開始した。0.1ナノメートル以下という世界最短波長のX線レーザーを発振する能力を有する。
詳細はhttp://xfel.riken.jp/

*3 軟X線FEL、硬X線FEL
軟X線FELとは波長が0.3~数10nm付近の軟X線領域の自由電子レーザー、硬X線FELとは波長が0.3nm以下と軟X線より短い硬X線領域の自由電子レーザー。レーザーを用いる実験では試料のサイズや特性に応じて最適な波長のレーザーを用いる。工業的に重要な触媒等、軟X線領域での観察に適した試料も多く存在する。

*4 SCSS試験加速器
SACLAのプロトタイプ機として、SPring-8サイトに建設された小型の自由電子レーザー装置。2006年に真空紫外光のレーザー発振に成功し、加速器・光源・利用の各方面について、様々な試験研究が実施された。2013年5月に運転を休止した。SCSSは、「SPring-8 Compact SASE Source」の略。SASEは自己増幅自発放射(Self Amplified Spontaneous Emission)を意味し、反射鏡を使わずに光を増幅してレーザー発振を得る方法を指す。



【問い合わせ先】
*SACLAの技術的内容については下記担当にお問い合わせ下さい
理化学研究所 放射光科学総合研究センター
XFEL研究開発部門 部門長  田中 均(たなか ひとし)
 TEL:0791-58-2800
 E-mail:tanakaatspring8.or.jp

<機関窓口>
理化学研究所 広報室 報道担当
 TEL:048-467-9272 FAX:048-462-4715
 E-mail:ex-pressatriken.jp

(SPring-8に関すること)
公益財団法人高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及啓発課 
 TEL:0791-58-2785 FAX:0791-58-2786
 E-mail:kouhou@spring8.or.jp