大型放射光施設 SPring-8

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2016年ノーベル医学生理学賞、化学賞受賞者の研究にSPring-8が貢献

公開日
2016年10月06日
  • トピックス

医学生理学賞 大隅良典東京工業大学栄誉教授

今年の医学生理学賞は「オートファジーのメカニズム解明」の業績により、東京工業大学の大隅良典栄誉教授に贈られます。大隅栄誉教授は、酵母のオートファジーを発見して以来、その仕組みの解明に取り組み、オートファジーに関与する遺伝子を同定しました。さらにその遺伝子がコードするタンパク質の研究を進められており、その一環として北海道大学の故・稲垣冬彦教授、微生物化学研究所の野田展生主席研究員らと、SPring-8を用いてX線結晶構造解析による研究を進められています。

野田主席研究員は「大隅先生がこの度ノーベル医学生理学賞を受賞されましたことは、この上ない喜びであり、受賞のニュースを聞いた際は、思わず叫び声を上げてしまいました。これまで約15年に渡り大隅先生と共同研究をさせていただき、放射光結晶学を中心とした構造生物学的手法によりオートファジーのメカニズム解明の一助となれましたことは、大変光栄なことだと思っております。オートファジーはとても奥深いテーマであり、依然として多くの謎が残されておりますので、今後も構造生物学的手法により謎の解明に少しでも貢献できればと考えております。」と語っています。

化学賞 ノースウェスタン大学 J. F. Stoddart教授

今年の化学賞は、アメリカのノースウェスタン大学のJ. F. Stoddart 教授、フランスのストラスブール大学のJean-Pierre Sauvage教授、オランダのフローニンゲン大学のBernard L. Feringa教授に贈られます。受賞理由は「分子機械の設計と合成」です。このうちJ. F. Stoddart教授は、1991年に「ロタキサン」と呼ばれる分子集合体を合成しました。ダンベルの軸の部分にリングがはまったような構造で,軸に沿ってリングを動かすことができます。J. F. Stoddart教授はこれをエレベーターのような分子機械や人工筋肉分子に応用することに成功しています。さらに2014年には、ダンベルの軸の部分を巨大分子の「かご」の中に入れて、これにリングをはめることに成功しました。この研究で「かご」を提供し、SPring-8を用いてX線結晶構造解析によってその構造を決定したのは、東京大学の藤田誠教授です。

藤田教授は「今年のノーベル化学賞は、分子機械の原型をつくりあげた欧米3教授に授与されました。分子機械は、外部からのエネルギー注入で機械のような仕事をする分子の総称です。日本では新海征治先生(九大)がたいへん先駆的な仕事をされた研究分野でもあります。私たちはSPring-8長期課題研究を通して、受賞者の一人、J. F. Stoddart教授と共同研究を行ないました(J. Am. Chem. Soc., 2014, 136, 12027)。私たちの巨大な中空錯体の内部に官能基を密集させると、外部刺激(イオンの注入)をトリガーに、Stoddart教授のお株ともいえるロタクサン(軸に環を通した構造の分子)の生成が効率良く集団的に起こることを見出しました。SPring-8でのX線構造解析で、その官能基の密集状態を捉えることができました。SPring-8の放射光の威力が、微力ではありますがStoddart教授のノーベル賞に貢献できたことを、放射光ユーザーの一人として大変嬉しく思っております。Stoddart先生、ノーベル賞おめでとうございます。」と語っています。

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